事例IVで36点の足切りを経験した1年目、原因は経営分析や意思決定会計といった単元の知識そのものが体系立っていなかったことでした。2年目に使い始めた「事例IVの全知識&全ノウハウ」は、この「知識の全体像が見えない」という問題を解消するために組み立てられた参考書で、計算そのものが苦手というより、何をどの順番で押さえればいいのか分からない受験生に向いている一冊です。

この本が解決する問題
事例IVの過去問を年度別にただ解いていくと、その年度にたまたま出題された論点しか目に入らず、経営分析・CVP分析・意思決定会計・キャッシュフローといった単元全体を俯瞰する機会がありません。「事例IVの全知識&全ノウハウ」は、過去の本試験問題を年度別ではなく主要テーマ別に組み替えて収録しているのが最大の特徴で、同友館の最新版である2026年改訂版は2026年5月1日に発売され、税込3,630円(本体3,300円)、432ページのB5判です。
著者は岩間隆寿氏、霜田亮氏、香川大輔氏、関山春記氏、川口紀裕氏の共著という体制で、前年の2025年改訂版は税込3,520円で刊行されていました。テーマ別に再編集されているため、経営分析なら経営分析、意思決定会計なら意思決定会計とまとめて解くことで、その単元で問われるパターンの幅と出題頻度が把握でき、優先して押さえるべき論点の見当がつけやすくなります。
年度別に過去問を解いていく縦解きに対して、この本のように単元をまたいで同じテーマの問題だけをまとめて解く進め方は横解きと呼ばれており、独学で2次試験に臨むなら必須と言えるほど、自分の足りない知識をこの横解きで補える点が、この本の最大の強みだと感じています。
TAC「事例IVの解き方」との役割の違い
2年目はこの本とTACの「事例IVの解き方」を並行して使いましたが、両者は似ているようで役割が異なります。「事例IVの全知識&全ノウハウ」は過去問そのものをテーマ別に再編集した参考書であり、本試験レベルの問題に触れながら出題テーマの全体像と頻度をつかむための本です。一方でTACの「事例IVの解き方」は基礎問題・応用問題・過去問を単元ごとに段階的に配置したトレーニング問題集で、解き方の手順を体に染み込ませることに主眼があります。
知識の全体像を俯瞰する本と、手順を反復して体に覚えさせる問題集という役割分担で使うと、両方の効果が重なりやすくなります。TAC「事例IVの解き方」の詳しいレビューはこちらの記事にまとめています。
| 比較項目 | 事例IVの全知識&全ノウハウ | TAC 事例IVの解き方 |
|---|---|---|
| 出版社 | 同友館 | TAC出版 |
| 最新版 | 2026年改訂版(2026年5月1日) | 第3版(2026年4月11日) |
| 税込価格の目安 | 3,630円 | 2,860円 |
| ページ数 | 432ページ | 272ページ |
| 収録内容の並び | 過去問をテーマ別に再編集 | 基礎→応用→過去問の段階構成 |
| 向いている使い方 | 出題テーマの全体像と頻度を俯瞰する | 解法の手順を反復して体に覚えさせる |
価格差は約770円ありますが、ページ数もほぼ1.6倍の開きがあり、単純にどちらか一冊で済ませるというより、知識の全体像を把握する段階と、手順を反復する段階とで使い分ける前提の教材だと捉えるとこの価格差にも納得感があります。実際に2年目はこの2冊を併用したことで、事例IVの得点が36点から69点まで伸びています。
432ページというボリュームの中身
この本のページ数が432ページに及ぶ理由は、収録している過去問の範囲が広いことに加え、1つの論点に対して複数年度分の出題パターンを並べて解説している構成にあります。たとえば意思決定会計であれば、設備投資の意思決定、事業撤退の意思決定、価格設定の意思決定というように、似た計算構造を持つ複数の出題パターンが並べて配置されており、1つの解き方を学んだら別の年度の似た問題で応用が利くかどうかをその場で確認できます。
経営分析の章では指標選定の考え方が繰り返し解説されており、どの与件文の記述からどの指標を選ぶべきかという判断基準を、単発の解説ではなく複数の事例を通じて体系的に学べるようになっています。
計算が苦手な人ほど、この本の使い方に注意が必要
計算そのものに苦手意識がある受験生ほど、この本を最初から通しで読もうとして挫折しがちです。432ページというボリュームは、全単元を網羅している裏返しでもあり、経営分析が苦手なら経営分析の章だけ、意思決定会計でつまずいているならその章だけというように、自分の弱点単元に絞って使う方が挫折しにくくなります。1年目に事例IVで足切りになった経験を踏まえると、苦手意識がある状態でいきなり全範囲を網羅しようとするより、まず1つの単元で「型」が身についた感覚をつかんでから次の単元に進む方が、結果的に定着が早くなります。事例IV対策全体をどう組み立てたかは事例IV対策の全体像の記事で年度別の得点推移とあわせて解説しています。
実際の学習サイクルにどう組み込んだか
2年目は、1週間のうち数日を事例IVに充てる中で、まずこの本で1つのテーマの出題パターンを一通り眺めて全体像をつかみ、その上でTACの事例IVの解き方の該当テーマを解いて手順を反復する、という順番で組み合わせていました。全体像を先に把握してから手順の反復に入ることで、今解いている問題が出題テーマ全体のどの位置づけにあるのかを意識しながら演習でき、単に問題数をこなすだけの学習にはならなかったと感じています。
逆の順番、つまり手順の反復から入って後から全体像を確認するというやり方も試しましたが、個人的には全体像を先につかむ順番の方が、演習中に「この論点は頻出だから丁寧に」「これは出題頻度が低いから深追いしない」という判断がしやすく、時間配分の感覚も養いやすいという実感がありました。
どのタイミングで買うべきか
改訂版は年に一度のペースで刊行されており、直近の本試験の傾向を反映した最新版を使うのが基本です。2026年改訂版は2026年5月1日発売で、過去問の収録範囲や解説がアップデートされているため、受験前年や当年に取り組む場合は最新の改訂版を選ぶことをおすすめします。旧版を中古で安く済ませたいという考え方もありますが、事例IVは出題形式や重視される論点が年によって微妙に変化するため、最新の過去問が反映されているかどうかは学習効率に直結します。
購入前には同友館オンラインまたは各書店サイトで最新の改訂版と価格を確認してください。事例IVの他の教材との比較は比較ページ、2次試験対策全体の進め方は2次試験対策のページを参考にしてください。
1年目にこの本を使わなかった影響
1年目はこの本を使わず、ふぞろいと過去問だけで2次試験全体に挑んでいました。事例IVで36点の足切りになった原因を後から振り返ると、経営分析でどの指標を選ぶべきかという判断基準や、意思決定会計の場合分けのパターンといった、単元ごとの「型」を体系立てて学ぶ機会がないまま過去問という応用問題に取り組んでしまっていたことに尽きます。
この本のようにテーマ別に過去問を並べ替えて出題頻度と論点の全体像を示してくれる教材を使わなかったことで、1年間の学習が場当たり的になり、結果として知識の抜けがどこにあるのかも把握できないまま試験本番を迎えることになりました。2年目にこの本を導入したことで、ようやく事例IVという科目の全体像を俯瞰でき、優先して押さえるべき単元の見当がつくようになっています。
解説が分かりにくい箇所はYouTubeやAIで補う
網羅性の高さと引き換えに、一部の単元では解説の記述だけを読んでも計算の途中経過がすぐには追えない箇所があります。特に意思決定会計のように場合分けが複雑な論点は、紙面の解説だけでは行間を埋めきれないことがあり、そこで止まってしまうと横解きのテンポが崩れます。そういう箇所は、この本の解説だけで無理に理解しようとせず、YouTubeで同じ論点を扱っている講義動画を探したり、AIに計算過程を一段階ずつ確認させたりして補うようにしていました。
1冊で完結させようとせず、分からない箇所だけ他の手段で埋め合わせるという割り切りが、結果的に学習を止めずに済む方法でした。
この本だけでは身につかない試験戦略
知識の全体像を横解きで押さえられても、本番の80分でどの問題を解き、どの問題を捨てるかという時間配分の判断は、この本を読んでいるだけでは身につきません。事例IVは経営分析やCVP分析のような取り切るべき設問と、複雑な場合分けが絡んで深追いすると時間を失う設問とが混在しており、この見極めは解説を読んで理解する種類の知識ではなく、実際に時間を計って解く経験と、その経験を言語化してくれる講師の存在があって初めて磨かれる感覚です。
事例IVの全知識&全ノウハウのような書籍だけで知識を仕上げても、独学のみでこの試験戦略まで習得して合格レベルに達するにはハードルが高く、この点は予備校の講座や模試で別途補う必要があると感じています。この時間配分の考え方をどう身につけたかは事例IV対策の全体像の記事で詳しく書いています。
※価格・版数は2026年7月時点の調査値です。