結論:情報処理技術者は保有率16.0%で2位。しかも科目免除が使える唯一の実利ルートです
中小企業診断士とITストラテジストの組み合わせは、ダブルライセンスの中でも特殊な位置にあります。診断士試験の科目免除が正面から使えるからです。
まず保有実態を見ます。協会連合会のアンケート調査(令和8年5月公表・回答1,847名)の結果です。
| 順位 | 保有資格 | 回答数 | 保有率 |
|---|---|---|---|
| — | なし | 437名 | 23.7% |
| 1位 | ファイナンシャルプランナー | 379名 | 20.5% |
| 2位 | 情報処理技術者 | 295名 | 16.0% |
| 3位 | 宅地建物取引士 | 203名 | 11.0% |
| 4位 | MBA | 190名 | 10.3% |
| 5位 | ITコーディネータ | 140名 | 7.6% |
| — | 行政書士 | 119名 | 6.4% |
| — | 社会保険労務士 | 113名 | 6.1% |
| — | 税理士 | 24名 | 1.3% |
情報処理技術者が16.0%で2位。ITコーディネータ7.6%を足せば、IT系資格の保有者は相当な厚みがあります。士業系の行政書士6.4%・社労士6.1%・税理士1.3%と比べると、その差は明確です。
私はIT系の資格を持っていません。この記事は制度と公表データの整理であり、ITストラテジスト試験の受験体験ではない点を先に断っておきます。
実利①:経営情報システムが免除になる

出典: 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度中小企業診断士第1次試験案内」
診断士1次試験の科目免除で、情報処理技術者試験の合格者は「経営情報システム」が免除されます。令和8年度試験案内に明記された対象区分は次のとおりです。
| 免除科目 | 対象となる情報処理技術者試験の区分 |
|---|---|
| 経営情報システム | ITストラテジスト、システムアーキテクト、応用情報技術者、システムアナリスト、アプリケーションエンジニア、システム監査、プロジェクトマネージャ、ソフトウェア開発、第1種、情報処理システム監査、特種 |
| 経営情報システム | 技術士(情報工学部門登録者に限る)、情報工学部門に係る技術士となる資格を有する者 |
ここで最も誤解が多い点を書きます。基本情報技術者は対象に含まれていません。応用情報技術者からが対象です。ITパスポートも当然対象外です。
ただし「免除すべきか」は別問題です
免除できることと、免除すべきことは違います。科目免除で書いたとおり、免除された科目は合否判定の対象外になるため、残った科目で60%を取る必要が生じます。
私の3年目の模試を見てください。
| 科目 | 得点 | 60点との差 |
|---|---|---|
| 企業経営理論 | 82点 | +22 |
| 経営情報システム | 72点 | +12 |
| 運営管理 | 70点 | +10 |
| 財務・会計 | 68点 | +8 |
| 経営法務 | 68点 | +8 |
| 経済学・経済政策 | 64点 | +4 |
| 中小企業経営・政策 | 63点 | +3 |
| 合計 | 487点 | 合格ライン420点に対し+67 |
経営情報システムは、私にとって12点の貯金を生む科目でした。IT実務経験者なら、この科目は40時間程度で70〜80点が見込めます。それを免除するのは、稼げる科目を自分から捨てる行為です。
| 状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| ITストラテジスト等を保有し、学習時間に余裕がある | 受験する | 40時間で70〜80点。総得点の貯金になる |
| 高度区分を保有し、財務・会計が壊滅的に苦手 | 免除も可 | 浮く時間を財務に全投入したほうが総合点は伸びる |
| 2年目以降で、他6科目のうち3科目以上が仕上がっていない | 免除する | 可処分時間を残り科目に集中させる |
| 資格取得から年数が経ち、知識が古い | 状況次第 | クラウド・生成AI等の新論点は追加学習が必要 |
実利②:試験範囲が実際に重なる
免除制度が存在するのは、出題範囲が実質的に重複しているからです。
| 領域 | 診断士「経営情報システム」 | ITストラテジスト |
|---|---|---|
| 経営戦略とITの連携 | 情報化戦略、IT投資評価 | 試験の中核 |
| システム開発 | 開発手法、プロジェクト管理 | 重なる |
| 情報セキュリティ | 脅威と対策、関連法規 | 重なる |
| ハードウェア・ネットワーク | 基礎知識を問う | 前提知識として扱う |
| 統計解析 | 出題あり | ほぼなし |
逆方向の相性も良好です。ITストラテジストは「経営戦略に基づいてIT戦略を立案する」立場を問う試験で、診断士の1次で学ぶ経営戦略・組織論の知識がそのまま論述の土台になります。企業経営理論で扱う競争戦略やドメインの考え方は、IT戦略の記述でも使えます。
取得順序:どちらを先にすべきか
| 現在の立場 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| SE・情報システム部門などIT実務者 | IT系が先 | 実務の延長で取りやすい。診断士の経営情報システムが得点源になる |
| すでに応用情報以上を保有 | 診断士へ | 免除を使うか貯金にするかを選べる有利な位置 |
| 非IT職で、IT分野が苦手 | 診断士が先 | 経営情報システムは暗記8割・80時間で60点に届く。無理にIT資格を挟む必要はない |
| ITコンサルとして独立したい | 両方 | 技術の裏づけと経営の言語の両方が要る |
3行目を強調しておきます。非IT職の人が、診断士のためにITストラテジストを取る必要はありません。診断士の経営情報システムは暗記8割の科目で、IT未経験でも80〜90時間で60点に届きます。ITストラテジストは応用情報を経由する必要があり、投資対効果が合いません。
実務での組み合わせ:どこで効くか
中小企業支援の現場で、IT系のダブルライセンスが効く場面は限定的ですが明確です。
| 場面 | 効き方 |
|---|---|
| IT導入補助金・DX関連の支援 | 公募要領の要件を技術面から読み解ける。診断士の仕事で書いたとおり補助金支援は主要な収入源 |
| 基幹システム刷新の相談 | ベンダーの提案を経営側の立場で評価できる |
| 公的機関の専門家登録 | IT分野の専門家枠で登録できる可能性がある |
| 企業内での配置 | 情報システム部門と経営企画の橋渡し役として説明しやすい |
ただし注意点があります。診断士には独占業務がありません。ITストラテジストにも業務独占はなく、どちらも名称・称号としての性格が強い資格です。税理士との比較で分解したとおり、独占業務のある士業とは収益モデルが根本的に違います。2つ持っていても、仕事が自動的に来る構造にはなりません。
ITコーディネータという選択肢
保有率5位のITコーディネータ(7.6%・140名)にも触れておきます。この資格は「経営とITの橋渡し」を明示的に掲げた民間資格で、診断士との親和性が高い。
情報処理技術者試験のような国家試験ではなく、研修受講とケース研修が中心の設計です。診断士の経営情報システムの免除対象にはなりませんが、実務のネットワークという点では別の価値があります。
まとめ
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 保有実態 | 情報処理技術者16.0%で2位。IT系は診断士と相性が良い |
| 制度上の実利 | ITストラテジスト等の合格者は経営情報システムが免除される |
| 対象外 | 基本情報技術者は対象外。応用情報技術者から |
| 免除すべきか | IT実務者なら受験推奨。40時間で70〜80点の貯金になる |
| 取得順序 | IT実務者はIT系が先。非IT職は診断士だけで十分 |
| 限界 | どちらも独占業務なし。2つ持っても仕事は自動では来ない |
この組み合わせの本当の価値は、資格の数ではなく「技術の実装可能性を踏まえて経営を語れること」にあります。中小企業のDX相談で、実現できない提案をしない——それだけで十分な差別化です。
関連記事: ダブルライセンスの実態/科目免除/経営情報システムの勉強法/税理士との比較/FPとの組み合わせ/MBAとの違い/診断士の仕事/企業内診断士
出典:一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」(令和8年5月公表・回答1,847名)、同「令和8年度中小企業診断士第1次試験案内」(他資格等保有による科目免除対象者)。運営者はIT系資格を保有していないため、本記事は制度と公表データの整理であり、情報処理技術者試験の受験体験は含みません。