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講座比較 更新日 2026.07.27 文・コンパス管理人

中小企業診断士のダブルライセンス|実際の保有資格1位はFPだった

中小企業診断士のダブルライセンス|実際の保有資格1位はFPだった

「中小企業診断士と相性がいい資格は?」という記事は無数にあります。ただ、そのほとんどが「相性が良さそうだから」という書き手の推測で書かれています。

この記事は違うアプローチを取ります。実際に診断士が持っている資格を、公式調査の実数で並べる——それだけです。

結果は、ネット上の「おすすめダブルライセンス」記事とかなり食い違います。定番とされる社労士は6.1%、税理士に至っては1.3%しかいません。1位は、意外な資格でした。

診断士が実際に持っている資格ランキング

日本中小企業診断士協会連合会が2026年5月に公表した調査(回答1,847名・複数回答)の結果です。

順位 保有資格 割合
なし 23.7%
その他(キャリアコンサルタント・日商簿記など) 22.0%
1位 ファイナンシャルプランナー(FP) 20.5%
2位 情報処理技術者 16.0%
3位 宅地建物取引士 11.0%
4位 MBA(経営学修士) 10.3%
5位 販売士 8.4%
6位 ITコーディネータ 7.6%
7位 行政書士 6.4%
8位 社会保険労務士 6.1%
9位 技術士(補) 3.8%
10位 税理士 1.3%
公認会計士(補) 0.5%
弁理士 0.4%
弁護士 0.3%
司法書士 0.2%
不動産鑑定士(補) 0.1%
中小企業診断士が保有する他資格の割合(協会連合会アンケート調査)
診断士1,847名の保有資格(複数回答)。「なし」23.7%が最多グループ、次いでファイナンシャルプランナー20.5%、情報処理技術者16.0%。社労士は6.1%、税理士は1.3%にとどまる出典: 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」(令和8年5月)(2026年7月26日取得)

この表から読み取れる3つの事実

1. 「ダブルライセンスが当たり前」ではない

最初に押さえるべきは、「なし」が23.7%で最多グループだという点です。約4人に1人は診断士だけを持っています。

診断士は他資格と組み合わせないと使えない資格、ではありません。ダブルライセンスの記事を読んで「もう1つ取らないと」と焦る必要はない、というのが最初の結論です。

2. 上位は「取りやすい資格」が占めている

1位のFP(20.5%)と2位の情報処理技術者(16.0%)、3位の宅建士(11.0%)に共通するのは、診断士より学習負荷が軽く、実務でも接点があることです。

一方、難関とされる士業ほど保有率は下がります。社労士6.1%、税理士1.3%、公認会計士0.5%、弁護士0.3%。「難関資格を2つ持つ人」は例外的な存在で、ランキングの主流ではありません。

これは考えてみれば当然です。診断士だけで1,000時間前後かかる試験です。そこにもう1つ800〜1,000時間を積む人が多数派になるはずがありません。

3. 「相性がいい」と言われる資格ほど、実際には持たれていない

ここが最も重要な発見です。

資格 ネット上の評判 実際の保有率
社労士 「診断士と最も相性がいい」とよく言われる 6.1%
税理士 「顧問契約と親和性が高い」とされる 1.3%
行政書士 「補助金・許認可で組み合わせやすい」 6.4%
FP 比較記事での言及は少なめ 20.5%(1位)
情報処理技術者 比較記事での言及は少なめ 16.0%(2位)

「相性がいい」と語られる度合いと、実際に持たれている度合いが逆転しています。

理由は単純だと考えています。ダブルライセンス記事の多くは、資格予備校が別の講座に誘導するために書かれているからです。社労士講座を売りたい会社は「社労士と診断士は相性がいい」と書きます。FP講座は単価が低いので、あまり熱心に薦められません。

しかし実際に診断士が取っているのはFPと情報処理技術者です。この差は、記事を読むときの補正材料として持っておく価値があります。

なぜFPと情報処理技術者が上位なのか

FP(20.5%):前職の延長線上にある

診断士の勤務先を見ると、金融機関に勤める人が一定数います(地銀・信用金庫等2.4%、都市銀行0.6%、政府系0.3%)。加えて、企業内診断士の58.8%が大企業勤務です。

金融機関ではFPが推奨資格になっていることが多く、診断士を取る前からFPを持っている——という順番が想像できます。「診断士のためにFPを取った」のではなく、「FPを持っている人が診断士を取った」という因果です。

情報処理技術者(16.0%):科目免除と実務の両取り

こちらには明確な制度上の理由があります。情報処理技術者試験の一部区分の合格者は、1次試験の「経営情報システム」が免除されます。

さらに実務面でも、診断士の専門分野の第4位が「情報化・IT化」8.3%。DX支援の需要を考えれば、IT系のバックグラウンドは強い差別化要因になります。

結局、どれを取るべきか

データを踏まえた、当サイトとしての整理です。

状況 推奨 理由
まだ診断士に受かっていない 他資格は考えない 診断士だけで1,000時間。分散させるほど合格が遠のく
すでにFP・簿記・情報処理を持っている それを活かす 新しく取るより、既存の資格と診断士の掛け算を言語化するほうが早い
IT・情報系の実務経験がある 情報処理技術者 1次の経営情報システムが免除になり、DX支援で差別化できる
人事・労務の実務経験がある 社労士 保有率は6.1%と低いが、だからこそ希少性がある
補助金・許認可支援をやりたい 行政書士 診断士に独占業務はないが、行政書士には書類作成の独占業務がある
経営を体系的に学び直したい MBA 保有率10.3%。ただし費用は診断士と桁が違う

最優先は「診断士に受かること」

強調しておきたいのは1行目です。診断士に合格していない段階で、次の資格を検討するのは害しかありません。

私自身、合格まで3年かかりました。1年目は独学+スタディングで1次に合格しながら、2次は213点で不合格。2年目は通学して226点で不合格。1つの試験に集中してすら3年かかっています。

診断士試験は、1次7科目・2次4事例というそれ自体が範囲の広い試験です。ここに別の資格を並行させる余裕は、少なくとも私にはありませんでした。

そもそも診断士に「独占業務」はない

ダブルライセンスを考えるうえで避けて通れない論点です。診断士には、その資格がなければできない業務がありません。

だから「独占業務を持つ資格と組み合わせて補完する」という発想が生まれます。行政書士(書類作成)、社労士(労働社会保険手続)、税理士(税務代理)——どれも診断士にはない権限です。

ただし、データを見る限りその組み合わせを実行している人は少数派です。実際に多くの診断士が使っているのは、資格の組み合わせではなく公的機関のネットワークでした。約8割が商工会議所・都道府県などに専門家登録しており、仕事の依頼のきっかけ1位も「中小企業支援機関・商工団体からの紹介」20.1%です。

診断士として稼ぐために次に投資すべきは、2つ目の資格ではなく専門家登録かもしれない——これがデータから導ける、あまり語られない結論です(詳しくは合格後の仕事とは)。

個別の比較記事

それぞれの資格との比較は、試験制度・難易度・取得順序まで踏み込んで個別に書いています。

よくある質問

Q. ダブルライセンスがないと稼げませんか?

A. そんなことはありません。診断士以外の資格が「なし」の人が23.7%で最多グループです。年収を左右しているのは資格の数ではなく、公的業務と民間業務の比率でした(民間の直接受注は単価が約3倍。詳しくは年収の記事)。

Q. 診断士と同時に別の資格を勉強するのはアリですか?

A. おすすめしません。診断士だけで1,000時間前後、複数年かかる人が大半です。ただしすでに情報処理技術者を持っている場合は1次の経営情報システムが免除になるなど、既存資格を活かす方向は有効です。

Q. 一番コスパのいい組み合わせは?

A. データ上は「すでに持っている資格 × 診断士」です。新規に取得コストを払うより、既存の専門性と診断士を掛け合わせて説明できるようにするほうが、投下時間あたりの効果は高くなります。専門分野の1位が経営企画・戦略立案28.4%に集中していることは、裏を返せば財務・IT・生産管理・事業承継といった領域が手薄だということでもあります。

まとめ

  • 他資格「なし」が23.7%で最多グループ。ダブルライセンスは前提ではない
  • 実際の保有率1位はFP 20.5%、2位が情報処理技術者16.0%
  • 定番とされる社労士は6.1%、税理士は1.3%。語られる頻度と実態が逆転している
  • 情報処理技術者は1次の経営情報システムが免除になる制度上のメリットがある
  • 合格前に他資格を検討するのは害。まず診断士1本に集中する
  • 次の投資先は2つ目の資格より公的機関への専門家登録かもしれない

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※保有資格の割合は、一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果(令和8年5月公表/調査時点 令和7年11月/回答1,847名・複数回答)より。合計が100%を超えるのは複数回答のためです。