中小企業診断士の合格率は、1次試験と2次試験を単純にかけ合わせると数%台まで落ち込みます。令和7年度(2025年度)の1次試験合格率は23.7%で、過去5年の中でもっとも低い水準でした。2次筆記試験の合格率は17.6%です。この数字だけを見ると難関資格に見える一方、「1年で必ず合格しなければならない試験ではない」という点を理解しておくと、この試験の本当の難しさがどこにあるのかが見えてきます。私自身、1次試験を2回、2次試験を3回受けて3年かかって合格しており、その実体験を踏まえて数字を読み解きます。

令和7年度の合格率は過去5年で最低水準
一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会の発表によると、令和7年度1次試験の合格者数は4,344人、受験者数は18,360人で、合格率は23.7%でした。前年の令和6年度は27.5%だったため、1年で3.8ポイント下がっています。科目別に見ると、中小企業経営・中小企業政策の合格率が30.7%ともっとも高く、財務・会計は8.4%ともっとも低くなっており、同じ年度の試験でも科目によって難易度に大きな差があることがわかります。財務・会計がなぜこれほど低くなりやすいのかは財務・会計の勉強法|苦手な人ほど毎日計算する理由で詳しく解説しています。
2次筆記試験は、受験者7,044人に対して合格者1,240人、合格率17.6%でした。前年の令和6年度は18.7%だったため、こちらもわずかに低下しています。なお、令和8年度の試験からは2次口述試験が廃止され、筆記試験の合格がそのまま最終合格となる制度に変わっています。これは筆記合格者のほぼ全員が口述試験にも合格する運用が長年続き、実質的な選抜機能が限定的だったことを踏まえた見直しで、令和七年経済産業省令第五十一号として2025年6月に公布、2026年4月に施行されました。
単純にかけ合わせると最終合格率は4%前後
1次試験の合格率23.7%と2次筆記試験の合格率17.6%を単純にかけ合わせると、1年でストレートに最終合格まで到達する確率は4%程度という計算になります。ただしこの数字は「1年で全科目に合格し、かつ同じ年に2次試験も突破する」という前提での機械的な計算にすぎません。実際には1次試験合格の効力が2年間(合格年度と翌年度)続くため、1次合格した年に2次で不合格でも、翌年は1次を受け直さずに2次だけに専念できます。
私自身、1年目に1次に合格したあと、2年目は1次を受けずに2次試験に専念しており、この制度のおかげで複数年かけて合格を目指す設計になっていると実感しました。
他の難関国家資格と並べてみる
難易度の感覚を掴むために、令和7年度(2025年度)に実施された他の国家資格の合格率と並べてみます。
| 資格 | 令和7年度(2025年度)合格率 | 受験者数 | 合格者数 |
|---|---|---|---|
| 社会保険労務士 | 5.5% | 43,421人 | 2,376人 |
| 中小企業診断士(1次×2次の単純計算) | 約4.2% | ―― | ―― |
| 行政書士 | 14.54% | 50,163人 | 7,292人 |
| 中小企業診断士(1次試験) | 23.7% | 18,360人 | 4,344人 |
| 中小企業診断士(2次筆記試験) | 17.6% | 7,044人 | 1,240人 |
単年度の数字だけを比べると、社会保険労務士の一発合格率の低さが目立ちます。ただし中小企業診断士は1次と2次で試験の性質がまったく異なり、しかも複数年計画を前提にした科目合格制度が用意されている点で、他の資格と単純比較しにくい構造を持っています。数字の低さそのものより、「1次の知識試験」と「2次の記述試験」という異なる能力を、別々の年に育てながら積み上げていく必要がある点にこの試験特有の難しさがあります。
令和8年度からの口述試験廃止は難易度をどう変えるか
令和8年度の試験からは、2次口述試験が廃止され、2次筆記試験の合格がそのまま最終合格となりました。従来は筆記試験合格者に対して口述試験(面接形式)が実施されていましたが、筆記合格者のほぼ全員が口述試験にも合格する運用が長年続いており、実質的な選抜機能が限定的だったことが廃止の理由とされています。この変更によって受験者にとっての心理的な負担は軽減される一方、選抜の重心は完全に筆記試験へ移ったことになります。
従来のように「筆記さえ通れば口述はほぼ通過できる」という安心材料がなくなったわけではなく、もともと口述試験が事実上の関門になっていなかった以上、実質的な難易度そのものが大きく変わるわけではないというのが実態に近い理解だと考えています。むしろ受験料が2次試験で17,800円から15,100円に引き下げられ、1次・2次の総額は32,300円で据え置かれるなど、受験者の負担軽減という側面が大きい制度変更です。
本当の難しさは「1年で終わらない設計」にある
私が3年間受験してもっとも痛感したのは、1次試験の知識を維持したまま2次試験の記述力を伸ばすタイミングを合わせることの難しさです。1年目は1次合格の勢いのまま2次に臨み、知識を思い出す勉強のクセが抜けずに213点で不合格。2年目はTAC通学で2次の演習量を増やしましたが、事例IVを伸ばした分だけ事例IIIが落ち込み226点で不合格。3年目にようやく1次からの再受験と2次対策のバランスが取れ、244点で合格しています。
単年度の合格率の数字だけでは見えてこない、科目間・年度間のバランス調整の難しさこそが、この試験の本質的な難易度だと考えています。
7科目それぞれの特徴と攻略の優先順位は中小企業診断士の試験科目一覧|7科目の特徴と攻略の優先順位、複数年計画を前提にした科目合格制度の使い方は科目合格制度の使い方|2年計画で受かるための科目選びで解説しています。1次試験の日程や合格基準の詳細は中小企業診断士1次試験の完全ガイド|日程・合格基準・科目合格制度にまとめました。
科目別の合格率の差が「総合力」を要求する試験にしている
令和7年度の科目別合格率を見ると、中小企業経営・政策の30.7%と財務・会計の8.4%の間には22ポイント以上の差があります。この差は、7科目という広い範囲の試験でありながら、科目ごとに求められる能力の種類がまったく異なることの表れです。暗記が得意な人は暗記科目で高得点を取りやすく、計算が得意な人は財務・会計で稼ぎやすい一方、どちらか一方の能力だけでは総点60%という基準に届きません。
企業経営理論のように読解力を問う科目も含めると、この試験で問われているのは単一の能力ではなく、暗記・計算・読解という異なる能力を同時に一定水準以上まで引き上げる総合力だといえます。この総合力を要求される構造こそが、単年度の合格率の数字以上にこの試験を難しくしている要因だと考えています。
合格率の低さに惑わされず、複数年計画で考える
合格率だけを見ると足がすくむかもしれませんが、この試験は1年で決着をつけるものではなく、科目合格制度と1次合格の効力によって、数年かけて実力を積み上げていくことが制度上前提とされています。学習時間をどう年単位で配分してきたかは中小企業診断士の勉強時間は1000時間?合格者3年間の実際の使い方、3年間で使った教材と戦略の全体像は中小企業診断士の勉強法|3年かけて合格した診断士の学習戦略で具体的に紹介しています。
独学と通信講座・予備校のどちらで進めるか迷っている場合は独学完全ガイドと通信講座・予備校おすすめ比較、条件から講座を絞り込みたい場合は講座診断チャートをご覧ください。合格実績の見方は合格実績の透明性比較で解説しています。
※試験情報は2026年7月時点の日本中小企業診断士協会連合会公表資料にもとづきます。