結論:企業内診断士は37.4%。その58.8%は大企業勤務です

出典: 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」(令和8年5月公表・回答1,847名)
中小企業診断士のうち、独立せず会社に勤めている人を「企業内診断士」と呼びます。協会連合会のアンケート調査(令和8年5月公表・回答1,847名)では37.4%がこれに当たります。
そして、この層についての最も重要な数字がこれです。
| 企業内診断士の勤務先規模 | 回答数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 大企業 | 363名 | 58.8% |
| 中小企業 | 200名 | 32.4% |
| 小規模企業 | 39名 | 6.3% |
| その他・無回答 | 15名 | 2.4% |
企業内診断士の58.8%が大企業勤務です。中小企業を支援するための国家資格を、大企業の社員が過半を占めて保有している。この構造が、企業内診断士のあらゆる悩みの出発点になっています。
私は独立診断士として登録していますが、合格までの3年間は会社勤めをしながら学習しました。この記事では、公表データから企業内診断士という立場のメリットと制約を整理します。
職業区分の内訳:どんな会社にいるのか
調査では職業を13区分で聞いています。企業内診断士に分類されるのは次の区分です。
| 区分 | 回答数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 民間企業(金融機関を除く) | 504名 | 27.3% |
| 公的機関・団体等 | 80名 | 4.3% |
| 金融機関(地銀・信用金庫等) | 44名 | 2.4% |
| 公務員 | 39名 | 2.1% |
| 金融機関(都市銀行) | 12名 | 0.6% |
| 調査・研究機関 | 8名 | 0.4% |
| 金融機関(政府系) | 5名 | 0.3% |
| 資格は持っているが活動も勤務もしていない | 31名 | 1.7% |
圧倒的多数が民間企業(金融機関を除く)の27.3%です。金融機関の合計は3.3%、61名にすぎません。「診断士は金融機関に多い」というイメージがありますが、実数では一般事業会社が主流です。
企業内診断士の最大のメリット:副業容認79.1%という変化
この調査で最も動いた数字がこれです。勤務先で副業が認められているかを聞いた結果です。
| 副業の可否 | 回答数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 全面的に認められている | 118名 | 19.1% |
| 一部認められている(許可制等) | 370名 | 60.0% |
| 認められていない | 113名 | 18.3% |
| その他・無回答 | 16名 | 2.6% |
全面容認と一部容認の合計が79.1%。前回調査(2021年報告)では47.0%でしたから、5年ほどで32ポイントの上昇です。これは企業内診断士の環境が構造的に変わったことを意味します。
かつて企業内診断士は「資格は持っているが使えない」という立場でした。いまは約8割が、制度上は診断士業務を副業として行える環境にいます。副業でいくら稼げるかで単価データから試算していますが、この79.1%という前提条件の変化は大きい。
ただし注意点があります。60.0%は「一部認められている(許可制等)」です。全面容認は19.1%にとどまります。実際に動く前に、就業規則と申請手続きの確認が必須です。
企業内診断士の制約:更新要件で詰まる
一方、企業内であることの制約もデータに出ています。資格更新には5年間で実務30日という要件があります。その取得方法の調査結果です。
| 実務ポイントの取得方法(複数回答) | 回答数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 本業(コンサルティング業務等)で取得可能 | 1,152名 | 62.4% |
| 休日等を活用してコンサルティング業務へ参加 | 335名 | 18.1% |
| 県協会が主催する診断実務従事へ参加 | 194名 | 10.5% |
| 県協会の研究会が主催するグループ診断へ参加 | 164名 | 8.9% |
| 所属企業内での診断活動への従事 | 156名 | 8.4% |
| 取引先中小企業へのコンサルティング活動 | 146名 | 7.9% |
本業で取得できる62.4%は、独立診断士と支援機関勤務者が中心でしょう。一般事業会社の企業内診断士にとって、更新の30日は休日を使って積むものになります。
実際、「阻害要因がある」と答えた人は22.0%(406名)おり、その理由の1位は「実務従事の機会そのものがない」53.7%、3位が「勤務先の仕事内容が実務従事と関連しない」36.5%です。大企業で中小企業支援と無縁の部署にいる人ほど、この問題に当たります。
企業内診断士が資格を活かす4つの現実的な道
データを踏まえると、選択肢は概ね次に整理できます。
| 道 | 内容 | 向く人 |
|---|---|---|
| 社内で使う | 経営企画・事業開発・経営管理への異動を狙う。所属企業内の診断活動は更新要件にも算入できる(8.4%が該当) | 異動の可能性がある人 |
| 副業として受ける | 79.1%が制度上は可能。休日にコンサル業務へ参加する人が18.1%いる | 就業規則をクリアできる人 |
| 県協会の活動で積む | 研究会・グループ診断・窓口相談・実務従事事業。更新要件を制度的に解決できる | 機会がない人全般 |
| 独立の準備期間と位置づける | 独立していない人の約6割に独立意向がある。在職中に実績と人脈を作る | 将来の独立を考える人 |
特に3つ目は強調しておきます。更新の最大の障害は「機会がない」53.7%であり、これは県協会に入会することで制度的に解消できます。会費は必要ですが、企業内診断士にとっては「更新できる状態を買う」費用と考えるのが実際的です。
企業内診断士は「独立できなかった人」ではありません
独立していない理由の調査結果を見ると、消極的な理由ばかりではないことがわかります。対象は独立していない728名で、複数回答です。ただし無回答が437名(60.0%)と多く、以下の比率は728名を分母とした値である点に注意してください。
| 独立しない理由 | 回答数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 現在の仕事の内容や職場環境に満足しているから | 151名 | 20.7% |
| 現在に比べ、収入が低下すると見込まれるから | 137名 | 18.8% |
| 収入が安定しないから | 135名 | 18.5% |
| 受注機会の確保が難しいと思うから | 130名 | 17.9% |
| 自分の能力不足を感じているから | 124名 | 17.0% |
| 資格の取得が目的であったから | 16名 | 2.2% |
| 診断士という職業に魅力を感じていないから | 9名 | 1.2% |
1位は「今の仕事に満足している」20.7%です。そして「診断士という職業に魅力を感じない」はわずか1.2%、9名。企業内診断士の大半は、この仕事を否定して残っているわけではありません。
2位以下に並ぶ収入低下18.8%・収入不安定18.5%・受注機会17.9%は、独立の現実的なリスク評価です。独立のリアルで書いたとおり、年間売上500万円以下が31.5%という分布を見れば、大企業勤務からの独立が慎重になるのは合理的です。
大企業勤務という立場の、意外な強み
最後に、あまり語られない点を書きます。企業内診断士の58.8%が大企業に勤めているという事実は、中小企業支援の現場では希少価値になり得ます。
中小企業が抱える課題の多くは、大企業では標準装備になっている仕組みの欠落です。原価管理、与信管理、人事評価制度、販売チャネルの複線化、情報システムの整備。大企業で当たり前にやっていることの実務知識は、そのまま支援の中身になります。
これは私自身が実務従事で痛感した点でもあります。実務従事で中小企業の現場に入ったとき、役に立ったのは試験知識よりも、前職で日常的に扱っていた業務プロセスの感覚でした。企業内診断士は「支援できない立場」ではなく「支援の材料を毎日仕入れている立場」です。
まとめ
| 論点 | データ |
|---|---|
| 比率 | 企業内診断士は37.4%(プロコン診断士は58.9%) |
| 勤務先 | 大企業58.8%、中小企業32.4%、小規模企業6.3% |
| 副業 | 79.1%が容認。ただし60.0%は許可制等の一部容認 |
| 更新の壁 | 22.0%が阻害要因あり。1位は「機会がない」53.7% |
| 残る理由 | 1位は「今の仕事に満足」20.7%。職業への否定は1.2%のみ |
| 対策 | 県協会の実務従事事業で機会を制度的に確保する |
企業内診断士でいることは、この資格の正当な使い方のひとつです。ただし放置すると5年後の更新で詰まります。登録した日に、実務30日をどこで積むかだけは決めておいてください。
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出典:一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」(令和8年5月公表・回答1,847名。会社勤務者に関する設問の回答者数計は617名、独立理由の設問は728名)。