中小企業診断士は独立する人が多数派の資格です。公式調査では58.9%が「独立している」と回答しています(日本中小企業診断士協会連合会/回答1,847名)。
ただし「だから独立しやすい」と読むのは危険です。この記事では、独立後の年数分布・売上・仕事の入口・そして独立をやめた人の理由まで、データで分解します。
独立している人は58.9%。ただし内訳を見る
| 状況 | 割合 |
|---|---|
| 独立している(1年以内) | 8.3% |
| 独立している(2〜5年経過) | 19.6% |
| 独立している(5〜10年経過) | 13.3% |
| 独立している(10年以上経過) | 17.7% |
| 独立していない(2年以内に独立したい) | 7.5% |
| 独立していない(5年以内に独立したい) | 8.6% |
| 独立していない(10年以内に独立したい) | 7.6% |
| 独立していない(予定はない) | 15.8% |
読み取れることが2つあります。
1つは5年以上続いている人が31.0%、10年以上が17.7%を占めること。一度軌道に乗れば長く続く仕事だということです。
もう1つは独立していない人のうち、6割が独立意向を持っていること(2年以内7.5%+5年以内8.6%+10年以内7.6%=23.7%に対し、予定なしは15.8%)。この資格を取る人は、そもそも独立志向が強いという前提があります。
独立しない人の理由は、ほぼ「お金」
ここが最も参考になるデータです。独立予定なしと答えた人の理由を見てください。
| 理由 | 割合 |
|---|---|
| 現在の仕事の内容や職場環境に満足している | 20.7% |
| 現在に比べ、収入が低下すると見込まれる | 18.8% |
| 収入が安定しない | 18.5% |
| 受注機会の確保が難しいと思う | 17.9% |
| 現在のところ、自分の能力不足を感じている | 17.0% |
「収入低下」「収入不安定」「受注機会」を合わせると55.2%。能力不足(17.0%)よりも、圧倒的に収入の不確実性が独立を止めています。
逆に言えば、受注の見込みさえ立てば独立する人が多いということです。だから独立準備で最優先すべきは、スキルアップではなく受注チャネルの確保になります。
独立後の売上は「きれいな3分割」
診断士業務が年100日以上の564名の年間売上分布です。
| 年間売上 | 割合 |
|---|---|
| 500万円以下 | 31.5% |
| 501〜1,000万円 | 36.2%(最頻は501〜800万円の20.2%) |
| 1,001万円以上 | 31.4% |
「1,000万円プレイヤーが3割いる」のも、「500万円以下が3割いる」のも、同じ調査の事実です。しかもこれは売上であって手取りではありません。ここから経費・社会保険・税金が引かれます。
年収の構造は年収は本当に高い?で詳しく分解しています。

仕事はどこから来るか(独立の成否を分ける核心)
| 依頼を受けたきっかけ(1位に挙げた割合) | 割合 |
|---|---|
| 中小企業支援機関・商工団体からの紹介 | 20.1% |
| 県協会からの紹介 | 15.9% |
| 相談窓口 | 9.5% |
| 他の診断士・診断士団体からの紹介 | 8.7% |
| ユーザー企業からの直接依頼(Web・SNS等) | 8.5% |
| 現在や過去の支援企業からの紹介 | 8.2% |
| 金融機関からの紹介 | 6.7% |
上位はすべて「紹介」です。自分で広告を打って集客する世界ではありません。公的機関・県協会・同業者という人的ネットワークが受注チャネルそのものになっています。
だからこそ、独立前にやるべきことは営業スキルの習得ではなく、専門家登録とネットワークへの参加です。実際、約8割の診断士が何らかの公的機関に専門家・相談員として登録しています(商工会・商工会議所37.1%、都道府県24.9%)。
独立の現実的な順番
データから読み取れる、生き残る順番はこうです。
- 公的機関の専門家登録で土台をつくる。単価は1日4万円前後と低いが、営業しなくても仕事が来る
- そこで出会った企業・紹介から、民間の直接契約へ広げる(単価は1日10万円超と約3倍)
- 顧問契約という継続収入を積む(民間中心層の顧問先は平均6.2社・月額平均15.1万円)
- 単価の低い仕事を段階的に絞る
いきなり民間の顧問契約だけで独立しようとすると、ほぼ確実に受注が足りません。
顧問契約の実態は思われているより厳しい
| 公的業務が中心の層 | 民間業務が中心の層 | |
|---|---|---|
| 顧問契約をしている | 20.6% | 53.5% |
| 顧問契約はない | 79.4% | 46.3% |
| 顧問先の数(平均) | 2.4社 | 6.2社 |
| 顧問料の月額(平均) | 75.6千円 | 150.9千円 |
民間中心の層ですら、顧問契約を持っているのは約半数。公的中心の層では約8割が顧問契約なしです。「顧問先を数社持って安定」というモデルは、到達点であって出発点ではありません。
稼働日数から逆算する
公式調査によると、診断士業務の年間平均日数は120.8日です。内訳は経営支援業務81.8日が最多、次いで診断業務41.2日、調査研究31.9日、執筆21.8日、講演・教育訓練19.3日。
ここから逆算すると、独立後の収入イメージはこうなります。
- 公的業務中心(約4万円/日)× 120日 ≒ 年480万円
- 民間業務中心(約11万円/日)× 120日 ≒ 年1,320万円
売上分布が3分割になる理由がここにあります。稼働日数ではなく、単価の構成で年収が決まるのです。「公的の仕事だけで年1,000万円」は、日当4万円なら年250日稼働が必要という計算になり、現実的ではありません。
独立前に確認すべき5つのこと
- 専門家登録は済んでいるか(商工会議所・都道府県・よろず支援拠点)
- 県協会に入っているか(依頼のきっかけ2位が県協会からの紹介)
- 専門分野を1つ言えるか(1位は経営企画・戦略立案28.4%、次いで財務12.2%、販売・マーケ12.1%。裏を返せば財務・IT・生産管理・事業承継は競合が少ない)
- 初年度の生活費を確保できているか(独立1年以内は8.3%。立ち上がりに時間がかかる前提で)
- 副業で先に試したか(副業を認める会社は79.1%。いきなり辞めずに検証できる)
5つ目が特に重要です。会社に籍を置いたまま土日で稼働し、受注チャネルが機能するかを確かめてから独立する——この順番が最もリスクが低い(副業でいくら稼げるか)。
業界自身が課題と認識していること
最後に、診断士自身が業界の課題として挙げた1位を紹介します。
- 実行支援力・伴走支援力の強化:32.7%
- 資格の認知度・信頼性の向上:25.3%
- 顧客開拓力の強化:7.1%
「診断して報告書を出して終わり」では通用しないという危機感が、業界の1位に来ています。独立して生き残るなら、実行まで伴走できるかが分かれ目になります。
よくある質問
Q. 独立して何年で軌道に乗りますか?
A. データ上は独立1年以内が8.3%、2〜5年経過が19.6%と積み上がる構造です。立ち上がりに数年かかる前提で、生活費の確保を計画してください。
Q. 未経験で独立できますか?
A. 公的機関の専門家登録には実務経験年数を要件にしているケースが多いため、実質的に難しい場面があります。会員の中心が40〜50代(53.9%)なのも、実務経験の厚みが評価される構造を反映しています。
Q. 補助金支援だけで食べていけますか?
A. 実際に収入の柱にしている人は多いですが、制度の増減に左右されるのがリスクです。詳しくは合格後の仕事とは。
まとめ
- 58.9%が独立。5年以上続いている人が31.0%で、軌道に乗れば長い
- 独立しない理由は収入の不確実性が55.2%。能力不足(17.0%)ではない
- 売上は500万円以下31.5%/501〜1,000万円36.2%/1,001万円以上31.4%
- 仕事はすべて紹介経由。支援機関20.1%、県協会15.9%が上位
- 順番は公的で土台 → 民間へ展開 → 顧問契約を積む
- まず副業で検証してから独立するのが最もリスクが低い
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※数値の出典: 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果(令和8年5月公表/調査時点 令和7年11月/回答1,847名)。試算は同資料の公表値をもとにした当サイトの目安であり、収入を保証するものではありません。