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書籍・教材 更新日 2026.07.26 文・コンパス管理人

TAC『事例IVの解き方』レビュー|解法手順を体で覚える問題集

事例IVが36点から69点まで伸びた2年目、最も影響が大きかった教材はTACの「事例IVの解き方」でした。単に問題数をこなす問題集ではなく、現役講師がどういう順番で手を動かし、どこで見切りをつけているかという思考の過程そのものを開示している点が、他の教材と違う部分です。

TAC『中小企業診断士 第2次試験 事例IVの解き方 第2版』の販売ページ
TAC『事例IVの解き方 第2版』の販売ページ。会員価格2,574円(10%OFF)、解答用紙のダウンロードサービス付き出典: TAC出版オンラインストア(2026年7月26日取得)

この問題集の構成

TACの「事例IVの解き方」は、経営分析、CVP分析、意思決定会計、キャッシュフロー計算といったテーマごとに、基礎問題・応用問題・過去問という3段階で問題が配置されているトレーニング問題集です。最新版は2026年4月11日発売の第3版で、税込2,860円(本体2,600円)、272ページのB5判、ISBN9784300121825という仕様です。前版にあたる第2版は2024年4月10日に発売されており、同価格帯で刊行されていました。

基礎問題でまず単元の計算手順そのものを身につけ、応用問題で条件が複雑になったパターンに対応する練習をし、最後に過去問で本試験レベルの問題文の長さと制限時間の中で手順を再現する、という段階を追った構成になっています。

「現役講師の解き方」というタイトルの意味

この問題集の特徴は、単に解答と解説が載っているだけでなく、各問題に対して「どこから手をつけるか」「どの情報を最初に読むか」「どこで計算を打ち切って部分点狙いに切り替えるか」といった、解答に至るまでの思考プロセスが明示されている点です。1年目に事例IVで足切りになった原因を振り返ると、計算の知識自体が欠けていたというより、限られた時間の中でどの設問から手をつけ、どこで見切りをつけるべきかという判断基準を持っていなかったことが大きな要因でした。

この問題集を通じて学んだ「解くべき問題と捨てる問題を見極める」という発想は、2次試験が受験者間の相対評価であるという前提と結びついています。多くの受験生が正解できない難問に時間を使いすぎて、本来なら確実に取れる標準的な設問への時間が削られてしまうと、そこで差がついてしまいます。この問題集は、その時間配分の判断基準を、具体的な問題を通じて繰り返し体に覚え込ませる作りになっています。

意思決定会計の場合分けで実感した効果

意思決定会計の単元では、設備投資を行うかどうか、複数案のうちどれを選ぶか、といった場合分けが問題文の条件によって枝分かれしていきます。1年目はこの場合分けの一部を見落としたまま計算を進めてしまい、前提条件を1つ読み違えただけで後続の計算がすべてずれるという失点の仕方をしていました。この問題集では、基礎問題の段階で場合分けのパターン自体を明示的に整理し、応用問題でその場合分けの判断基準を条件が複雑になった状態で再現する練習をする構成になっているため、場合分けを丸ごと見落とすという1年目特有の失点パターンを繰り返さずに済むようになりました。

基礎問題の解説には、どの条件を見たらどの場合分けに進むべきかという判断のポイントが明示されており、この部分を繰り返し確認したことが得点の安定につながっています。

実際にどう使ったか

2年目はテーマごとに基礎問題から順番に解き進め、応用問題で計算過程を崩さず対応できるようになってから、その単元の過去問に進むという順番を徹底しました。特に意思決定会計の単元は場合分けが複雑になりやすく、基礎問題の段階で場合分けの型を体に染み込ませておかないと、応用問題や過去問で条件が複雑になった途端に対応できなくなります。基礎問題を後回しにしていきなり過去問に取り組んでいた1年目との一番の違いは、この段階を踏む順番そのものでした。

事例IVの全知識&全ノウハウとの使い分け

同時期に使っていた「事例IVの全知識&全ノウハウ」は、過去問をテーマ別に再編集して出題頻度と論点の全体像を俯瞰するための参考書で、この問題集とは役割が異なります。「事例IVの解き方」は手を動かして手順を体に覚え込ませる問題集、「事例IVの全知識&全ノウハウ」はどの論点を優先して押さえるべきかを俯瞰する参考書という位置づけで、両方を併用したことが2年目の得点の伸びにつながっています。詳しい比較は事例IVの全知識&全ノウハウレビューの記事にまとめています。

発売日 税込価格 ページ数
第3版(最新) 2026年4月11日 2,860円 272ページ
第2版 2024年4月10日 2,860円 非公開(第3版とほぼ同水準)

この表の通り、税込価格自体は版が変わってもほぼ据え置かれており、改訂の度に問題の入れ替えや直近の過去問の追加が行われているのが実態です。事例IVは出題される数値の前提や場合分けのパターンが年によって少しずつ変わるため、演習量を確保する目的だけであれば旧版を安く入手する選択肢もありますが、本試験の最新傾向を反映した解説を重視するなら最新の第3版を選ぶのが基本になります。

経営分析・CVP分析での使い方

経営分析の単元では、与件文からどの指標に着目すべきかを見抜く力が問われますが、この問題集では基礎問題の段階で収益性・効率性・安全性それぞれの代表的な指標の計算手順を一通り確認し、応用問題で与件文の記述と指標選定を結びつける練習をする流れになっています。CVP分析についても、損益分岐点の計算そのものは基礎問題で身につけた上で、応用問題や過去問では条件が複雑な設定の中で必要な数値だけを拾い出す練習を積むことができます。

基礎から応用、そして過去問という段階を飛ばさずに踏むことで、本試験特有の長い問題文に対しても、どこに着目すればよいかを迷わず判断できるようになっていきました。

付属の解答用紙・電卓の使い方まで含めた実戦性

この問題集のもう1つの特徴は、単に計算の解き方だけでなく、実際の試験でどのように電卓を叩き、どのような順番で計算過程を書き残すかという、答案作成の実務的な部分にも触れている点です。事例IVは電卓の操作ミス1つで数値が丸ごとずれてしまう科目でもあり、計算の考え方が合っていても、電卓の打ち間違いや検算を怠ったことで失点するケースが少なくありません。基礎問題の段階からこうした実務的な作業まで含めて練習しておくことで、本試験の緊張した状況でも普段どおりの手順を再現しやすくなります。

1年目はこうした実務的な部分への意識が薄く、計算の考え方は合っていても最終的な数値を間違えるという失点を重ねていました。

この問題集が向いている人・向いていない人

基礎問題の段階から丁寧にステップを踏みたい人や、時間配分や見切りの判断基準を身につけたい人にはこの問題集が向いています。反対に、経営分析やCVP分析の基本的な計算手順がすでに身についていて、あとは出題テーマの全体像を俯瞰したいだけという段階の人には、「事例IVの全知識&全ノウハウ」から入る方が効率的な場合もあります。自分がどちらの段階にいるかを見極める材料として、事例IV対策全体の組み立て方を事例IV対策の全体像の記事にまとめていますので、あわせて確認してください。2次試験対策全体の進め方は2次試験対策のページ、教材同士の比較は比較ページから確認できます。

基礎問題を軽視した1年目との違い

1年目は市販の問題集を単元別に使うという発想自体がなく、いきなり過去問という応用問題から手をつけていました。基礎的な計算手順が固まっていない状態で本試験レベルの複雑な問題文に向き合うと、部分的に合っている計算があっても、途中の場合分けを丸ごと落とすといった失点の仕方になりやすく、これが36点という結果につながっています。2年目にこの問題集で基礎問題からやり直したことで、応用問題や過去問に進んだときの理解のスピードそのものが変わりました。

基礎が固まっていない状態で応用問題に触れても得られるものは少なく、遠回りに見えても基礎問題から段階を踏むことが、結果的に最短距離だったというのが2年間を通じての実感です。

※価格・版数は2026年7月時点の調査値です。