2次試験に合格しても、それだけでは中小企業診断士になれません。「実務補習または実務従事が合計15日以上」という要件を満たして、初めて登録申請ができます。
その15日を最短で埋める手段が実務補習です。ただし15日コースで約18万円という費用がかかり、しかも平日を含む日程で組まれるため、働きながら受ける人にとっては軽い話ではありません。
実務補習とは何か(公式の定義)
実務補習は、国の登録実務補習機関である日本中小企業診断士協会連合会が、「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則」に基づいて実施するものです。
公式ページには次のように明記されています。
中小企業診断士第2次試験合格後3年以内に「実務補習を受講した日数」または「実務に従事した日数」の合計が15日以上あることにより中小企業診断士としての登録の申請を行うことができます。
ポイントは「または」です。15日すべてを実務補習で埋める必要はなく、実務従事と合算できます(実務従事については実務従事でポイントを積む方法)。

コースと費用
| コース | 日数 | 費用の目安 | 登録に必要な回数 |
|---|---|---|---|
| 15日間コース | 15日 | 約18万円 | 1回で要件を満たせる |
| 8日間コース | 8日 | 約10万円前後 | 2回受講、または実務従事7日と組み合わせ |
15日=1社5日間×3社という構成です。5日間で1社の経営診断を1本仕上げ、それを3回繰り返します。
※費用・コース構成は年度によって変わります。申込前に必ず公式の実施案内(PDF)で最新の金額をご確認ください。
実施時期は年2回。ここを外すと1年待ちになる
実務補習の実施時期は2月〜3月と7月〜9月が中心です。令和8年度は7月・8月・9月実施のほか、10月・11月実施(千葉地区)も案内されています。
2次の合格発表は1月頃。つまり合格直後の2月〜3月の枠が、最短で登録にたどり着けるタイミングです。ここを逃すと次は夏になります。
しかも人気地区はすぐ埋まり、キャンセル待ちが出ます。実際、令和8年度も「夏期実施実務補習キャンセル待ちについて」という案内が出ています。申込開始日を必ず押さえてください。
実務補習の中身
1班あたり5〜6名の受講者で構成され、指導員(ベテラン診断士)のもとで実際の企業を1社診断します。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 事前準備 | 実施の4〜5日前に指導員からメールで企業概要と事前作業の指示が届く |
| 1日目 | 企業訪問・経営者へのヒアリング。班内で担当パート(戦略/財務/マーケ/人事など)を分担 |
| 2〜4日目 | 各自で分析・執筆。班で集まって全体の整合を取る。ここが実質的に自宅作業になる |
| 5日目 | 報告書を完成させ、経営者へプレゼン |
注意すべきは「5日間」が拘束日数そのものではない点です。指定された5日以外にも、自宅での分析・執筆にかなりの時間を取られます。報告書は班全体で数十ページになることも珍しくありません。
申込にはユーザー登録が必要
インターネットで申し込む場合、事前のユーザー登録が必要です。ここでメールアドレスの条件に注意してください。公式に次の指定があります。
- 指導員から添付ファイル付きのメールが届くため、添付を受信できるアドレスであること
- 勤務先のメールアドレスおよび携帯電話のメールアドレスは不可
会社のアドレスで登録しようとして弾かれる人がいます。個人のGmail等を用意しておいてください。
「働きながらはきつい」と言われる理由
実務補習が敬遠されがちなのは、費用よりも日程の問題です。
- 日程は土日を中心に組まれるが、平日も含まれる
- 指定日以外の自宅作業が発生する(実質的な拘束はもっと長い)
- 班活動なので自分の都合だけでスケジュールを動かせない
そのため、平日に有給を確保できるかどうかが最初の関門になります。ここが難しい人は、実務従事で日数を積むという選択肢を検討することになります。
【実例】私は実務補習を受けませんでした
フェアに書いておきます。私自身は実務補習を1日も受けておらず、15日すべてを実務従事で積んで登録しました。受験期に知り合った先輩診断士(法人の社長)2名のもとで実務従事をさせてもらった形です。
そのうえで、実務補習にしかない価値は確実にあると考えています。それは日数を埋めることではなく、次の3つです。
- 協会の指導員(先生)と仲良くなれる
- 受講者どうしで仲間意識が芽生える——同期のような関係ができる
- 診断実務の「型」が指導つきで学べる
協会の調査でも、仕事の依頼を受けたきっかけは「中小企業支援機関・商工団体からの紹介」20.1%、「県協会からの紹介」15.9%が上位です。人脈が受注に直結する世界なので、この3つは軽くありません。
それでも私が選ばなかったのは、診断士の仕事は千差万別で、型にはまった仕事が求められるものではないと考えているからです。型を習う優先度が、私にとっては約18万円に見合わなかった——それだけの理由です。
逆に、実務従事をやらせてもらえる知り合いがいないなら実務補習一択です。そこは選択の余地がありません。詳しくは実務従事でポイントを積む方法に書きました。
実務補習と実務従事、どちらを選ぶか
| 実務補習 | 実務従事 | |
|---|---|---|
| 費用 | 15日で約18万円 | 無料〜数万円(案件による) |
| 日程の自由度 | 低い(決められた日程) | 高い(自分で調整) |
| 案件の確保 | 不要(用意される) | 自分で探す必要がある |
| 指導 | ベテラン診断士がつく | 基本的につかない |
| 人脈 | 班のメンバー・指導員とつながる | 案件次第 |
お金を払って「案件・指導・人脈」を買うのが実務補習、手間をかけてお金を節約するのが実務従事——という整理になります。
実際、協会の調査では資格更新の実務従事ポイントについて75.1%が「阻害要因はない(問題なく取得できる)」と答えている一方、阻害要因がある人の理由は「実務従事の機会そのものがない」53.7%、「会社の業務が忙しく時間が取れない」45.3%が上位です。案件を自分で見つけられるかどうかが、実務従事を選べるかの分かれ目になります。
第3の選択肢:外部の有料実務従事プログラム
「実務補習か、知人のツテか」の二択で考えている人が多いのですが、もう一つ現実的な選択肢があります。民間事業者が主催する実務従事プログラムです。
| 実務補習(協会) | 外部プログラムの例 | |
|---|---|---|
| 15日分の費用 | 約180,000円 | 88,000円 |
| 平日の拘束 | あり | なし(土日4日+各自の課題11日分) |
| オンライン参加 | 不可 | 可 |
| 指導 | 協会公認の指導員 | 主催事業者の講師 |
費用はおよそ半額、しかも平日を1日も使わずに15日分を積めます。平日に有給を取れないことが実務補習の最大の壁である以上、ここは真剣に比較する価値があります。
一方で、協会の指導員とのつながりや、協会主催という安心感は実務補習にしかありません。詳しい比較は実務従事でポイントを積む方法にまとめています。
よくある質問
Q. 15日をすべて実務補習で受ける必要がありますか?
A. いいえ。実務補習と実務従事の合計で15日あれば構いません。「8日間コース+実務従事7日」といった組み合わせも可能です。
Q. 期限はいつまでですか?
A. 2次試験合格後3年以内です。3年を過ぎると、登録するには2次試験から受け直しになります。
Q. 平日に休めない場合はどうすればいいですか?
A. 実務従事に切り替えるのが現実的です。県協会が主催する診断実務従事や、知り合いの企業への支援を通じてポイントを積む方法があります(実務従事でポイントを積む方法)。
Q. 費用は経費になりますか?
A. 個別の税務判断になるため、当サイトでは断定を避けます。勤務先の資格取得支援制度が使えるケースもあるので、まず社内制度を確認することをおすすめします。
まとめ
- 登録には実務補習+実務従事で合計15日が必要。期限は2次合格後3年以内
- 実務補習は15日コースで約18万円。5日間×3社の構成
- 実施は2〜3月と7〜9月。合格直後の2〜3月枠が最短ルートで、キャンセル待ちも出る
- 申込時のメールは勤務先・携帯アドレス不可
- 指定日以外の自宅作業がかなりある。平日の有給確保が最初の関門
関連記事: 合格後の登録までの流れ/実務従事でポイントを積む方法/中小企業診断士の仕事とは/試験日と1年の流れ
※制度・日程は2026年7月時点で日本中小企業診断士協会連合会が公表している内容にもとづきます。費用は年度・コースにより変わるため、申込前に公式の実施案内でご確認ください。