「ふぞろいな合格答案」は毎年新しいエピソードが刊行されるシリーズで、書店に並ぶ最新版だけを見ると、これまでに何冊出ているのか、自分はどの版から買えばいいのかが分かりにくい教材です。3年間の2次試験対策を通じてこのシリーズを使い続けた経験から、版の選び方と、買う必要がある版・買わなくてもよい版を整理します。

ふぞろいはシリーズ物であり、単発の参考書ではない
ふぞろいな合格答案は同友館から刊行されている書籍で、毎年その年に実施された2次試験の再現答案を集めて分析する形式を取っています。直近では2025年8月1日に刊行された「エピソード18」が令和6年度の2次試験を対象にしており、税込2,860円・288ページのB5判です。単一のキーワード集計にとどまらず、合格者6名前後の実際の答案の流れや、80分間の解答プロセス、学習者自身の体験談まで含めた構成になっています。
さらに、令和7年度の2次試験を対象にした「エピソード19」が2026年版として同友館から発売予定になっており、価格や仕様の確定情報は同友館オンラインの公式ページで確認することをおすすめします。
何冊分をそろえるべきか
1年目から3年目まで一貫してふぞろいを使い続けた実感として、直近1冊だけでは演習量が不足します。2次試験は出題傾向が年度によって振れ幅があり、直近1年分の再現答案だけを見ていると、その年にたまたま出た論点の書き方に引っ張られてしまう危険があります。実際に使っていたのは、その年の最新版に加えて、その1〜2年前のエピソードもあわせて過去問演習の対象年度として解き、答案を読み比べるという形でした。逆に、5年も6年も前のエピソードまで遡って全部そろえる必要性は感じませんでした。
出題形式や事例企業の傾向は年々少しずつ変化しており、あまり古い年度の答案分析に時間を割くよりは、直近2〜3年分を繰り返し読み比べる方が費用対効果は高いという実感です。同友館からは複数年分をまとめた「10年データブック」のような通年版も刊行されているため、演習量を一気に確保したい場合はそちらもあわせて検討する価値があります。
| 版 | 対象年度 | 刊行時期 | 税込価格の目安 | 買う優先度 |
|---|---|---|---|---|
| 最新エピソード(例:エピソード19) | 直近の2次試験 | 受験前年の夏 | 2,860円前後 | 必須 |
| 1つ前のエピソード(例:エピソード18) | 1年前の2次試験 | 既刊 | 2,860円前後 | 推奨 |
| 2〜3年前のエピソード | 2〜3年前の2次試験 | 既刊 | 2,860円前後 | 余裕があれば |
| 10年データブック等の通年版 | 複数年まとめ | 既刊 | 公式サイト参照 | 演習量を増やしたい人向け |
この表のとおり、最優先で買うべきは受験する年の直近の2次試験を対象にした最新版です。1年目の反省として、当時はふぞろいだけで知識の全体像も自分の弱点も見えないまま回数だけ重ねてしまっていたのですが、それでも最新版と1つ前の版の2冊を軸に据えていたこと自体は間違っていなかったと思います。むしろ足りなかったのは冊数ではなく使い方で、この点はふぞろいの使い方の記事で詳しく書いています。
シリーズには前身となる書籍がある
ふぞろいな合格答案という書名になる前、同友館からは「ふぞろいな答案分析」という書名でシリーズが刊行されていた時期があります。書名が変わっても、合格者・不合格者の再現答案を集めて分析するという企画の骨格は引き継がれており、古書店やオークションサイトで見かける「ふぞろいな答案分析」も同じ系譜の書籍です。これから受験する人がこうした旧シリーズまで遡って収集する必要性は薄く、実務的には現行の「ふぞろいな合格答案」のエピソード番号がついた版を追いかけていれば十分です。
書名や巻数の表記がシリーズの中で変わっているため、書店で検索する際にはエピソード番号と対象年度を確認してから購入することをおすすめします。
電子版か紙の書籍か
ふぞろいはB5判で300ページ近いボリュームがあり、過去問を解いた直後に該当ページを開いて自分の答案と照らし合わせる使い方をするため、紙の書籍で持っておくと付箋を貼ったり書き込んだりしながら使えて実用的です。価格は年度やエピソードによって変動するため、購入前に同友館オンラインまたは各書店サイトで最新の税込価格を確認してください。
中古で買う際に注意したいこと
フリマアプリや古書店では、数年前のエピソードが定価より安く出回っていることがあります。演習量を確保する目的で古いエピソードを安く買うこと自体は合理的な判断ですが、注意したいのは、2次試験の出題形式や事例企業の業種傾向は年度によって少しずつ変化しているという点です。あまりに古い年度の答案分析にばかり時間を割いてしまうと、直近の出題傾向とのずれに気づかないまま学習を進めてしまう恐れがあります。
中古で古いエピソードをそろえる場合でも、直近1〜2年分については必ず最新版を新品で購入し、最新の出題傾向を軸に据えた上で、演習量を補う位置づけで古いエピソードを併用するという優先順位を崩さないようにしていました。
買ってすぐ役に立つ使い方ではない
ふぞろいを購入した直後にまず陥りがちなのが、通読して満足してしまうことです。合格答案の解説を読むこと自体は理解した気になりやすいのですが、実際に得点が動いたのは、自分で過去問を解いた直後にその年度・その設問のページを開き、自分の答案と合格答案を突き合わせる作業を挟んだときでした。買ってから最初の1〜2週間で全体をざっと眺めるところまでは構いませんが、そこから先は必ず自分の過去問演習とセットで開くという使い方に切り替えないと、ページ数の割に得点への還元が薄い教材になってしまいます。
この使い方の詳細な手順はふぞろいの使い方の記事で解説していますので、購入前後にあわせて確認しておくと、届いた当日から具体的な使い方に迷わずに済みます。
掲載されている解答をどう受け止めるか
ふぞろいに載っているキーワード集計や答案例は、合格者・不合格者の再現答案をもとにした分析であり、試験元が用意した完全な正答そのものではありません。同じ設問でも、大手予備校が公表する模範解答とふぞろいの分析結果とで、拾われているキーワードや評価の軸が異なっていることは珍しくありません。執筆しているのはその年に合格した受験生であり、何十年も試験を研究してきた専門家ではないという点も、使う上で頭に入れておいた方がよいと思います。
3年間使い続けて感じたのは、1つの版の記述を鵜呑みにするのではなく、複数のエピソード・複数の合格答案を横に並べて、共通して評価されている要素と、その版だけの解釈にとどまっている要素とを見分けながら使うと、教材への過信を避けられるということでした。
ふぞろいだけで2次試験は乗り切れるか
ふぞろいは事例I・II・IIIのような記述式の設問で、合格者がどのような要素を答案に盛り込んでいたかを把握するには非常に有効で、この教材の学習だけでも60点を超える水準まで到達することは十分可能だと感じています。一方で、事例IVのように計算過程そのものの知識が問われる科目については全体像が把握しにくく、答案の書き方を眺めるだけでは対応できません。
事例IVで36点の足切りを経験した実体験を踏まえた対策の組み立て方は事例IV対策の全体像の記事にまとめ、事例IVの知識を補うための書籍については事例IVの全知識&全ノウハウのレビュー記事とTAC「事例IVの解き方」のレビュー記事で比較しています。2次試験全体の対策方針は2次試験対策のページ、独学の可否については2次試験は独学で受かるかの記事を参考にしてください。
他の2次対策教材との組み合わせ
ふぞろいは答案の書き方の傾向を掴む教材であり、これ単独で2次試験の全範囲をカバーできるわけではありません。事例IVのように計算知識そのものが問われる科目では、事例IVの全知識&全ノウハウやTACの事例IVの解き方のような単元別の教材を組み合わせる必要があります。また、2次試験の全体像をまだ掴めていない段階では、まとめシート流ゼロから始める2次対策のような、試験のルールや解き方の基本を平易にまとめた入門書から入り、ある程度の土台ができてからふぞろいで合格答案の傾向を掴むという順番を踏む方が、遠回りに見えて結果的にスムーズです。
1年目にふぞろいと過去問だけで知識の全体像も自分の弱点も見えないまま回数を重ねてしまった反省は、この教材の組み合わせ方そのものにも表れています。
※価格・版数は2026年7月時点の調査値です。