※当サイトにはプロモーション(PR)が含まれる場合があります。
2次試験対策 更新日 2026.07.28 文・コンパス管理人

中小企業診断士2次試験の与件文の読み方|80分中12分で構造化する4色マーカーの手順

中小企業診断士2次試験の与件文の読み方|80分中12分で構造化する4色マーカーの手順

結論:与件文は「読む」のではなく、12分で構造化する

2次試験の与件文は、じっくり読もうとした時点で負けます。80分のうち与件文まわりに割いてよいのは設問解釈を含めて最初の20分まで、そのうち与件そのものを目で追う時間は12分です。残りの60分は骨子作成と記述で消えます。読解フェーズの目的は「内容を理解すること」ではなく、あとから30秒以内に必要な段落へ戻れる状態を紙の上に作ることだと定義し直してください。

そのために推奨する道具立てはマーカー4色+シャーペン1本です。青=強み(内部プラス)、赤=弱み(内部マイナス)、緑=外部環境(機会・脅威)、黄=社長の意向と経営方針。シャーペンは時制を表す言葉に○、逆接の接続詞に△、数値に□を打つ役に回します。色の意味を事例ごとに変えないことが最大の要点で、色数を増やすほど「何色で引くか」の判断で手が止まります。

先に不都合な事実を書きます。与件の読み方を整えても、それだけで点は伸びません。私の2次の得点開示では、事例IIが61点→55点→51点と3年連続で下がり続け、合格した年でさえ51点でした。読み方の型が効くのは設問解釈のずれによる40点台の大崩れを防ぐ場面であって、上限を押し上げる装置ではありません。この記事はその前提で、明日から手が動く粒度まで手順を落とします。

この記事の主張の範囲:読解が防げる事故と防げない事故

先に線を引いておきます。2次筆記の合格基準は総点240点以上、かつ1事例も40点未満がないことです。この「40点未満」を読解の型で防げるかというと、事例I〜IIIと事例IVで話が完全に別です。

事故の型 実際に私に起きたこと 読解の型で防げるか
計算力不足による事例IVの崩壊 1年目 事例IV 36点(唯一の40点未満) 防げない。計算演習の量の問題
設問解釈のずれによる事例I〜IIIの大崩れ 2年目 事例III 44点(→3年目68点) ここが読解の守備範囲
得点源が伸びない(50点台で頭打ち) 事例II 61→55→51 防げない。設問対応の精度の問題

つまりこの記事が扱うのは表の2行目だけです。私の3年間で唯一の足切り水準は1年目の事例IV 36点で、これは与件の読み方では1点も救えません。事例IVの立て直しは 事例IV対策の全体像 の担当範囲です。一方、2年目の事例III 44点は足切りこそ免れましたが、1年目68点・3年目68点の科目が1年だけ44点に落ちたという形で、明らかに読解と設問解釈の事故でした。読み方の型の価値は、この24点分の振れ幅を消すことにあります。

まず80分の設計図を決める。読解12分・対応付け8分

運営者の2次試験得点開示(3年目・合計244点で合格)
この読み方に固定した年の得点開示。合計244点で合格。事例IIIは44点から68点へ戻した
出典: 運営者提供(氏名・受験番号等はマスキング済み)

読み方の話をする前に、読解に使ってよい時間の上限を先に決めます。上限が決まっていないから「もう一度読み直す」が発生し、記述時間が溶けます。私が最終的に固定した配分は次の表のとおりです。事例I・II・IIIで共通に使い、事例IVだけ別設計にしました。

経過時間 所要 フェーズ やること 終わった時点で紙の上にあるもの
0〜2分 2分 準備 与件に段落番号を振る/設問数・制限字数を余白に書く 段落番号(丸数字)と設問一覧
2〜8分 6分 設問解釈 設問だけを読む。与件はまだ開かない 設問ごとの「型」「レイヤー」と制約条件の下線
8〜20分 12分 与件読解 4色マーカーで印をつけながら一度だけ通読 色分けされた与件と3行の年表
20〜28分 8分 対応付け 与件の余白に設問番号を書き込む 段落と設問の対応マップ
28〜45分 17分 骨子作成 設問ごとに使う要素を並べ、字数を割り振る 各設問の骨子(キーワードの並び)
45〜78分 33分 記述 骨子どおりに書く。書きながら考えない 全設問の解答
78〜80分 2分 見直し 設問要求と主語の不一致、誤字、マス目の埋まり

所要の合計は 2+6+12+8+17+33+2=80分です。骨子と記述の配分は設問数で動くので、「骨子=17分÷設問数」「記述=33分÷設問数」という割り算で運用してください。設問4問なら骨子1問あたり約4分・記述約8分、設問5問なら骨子約3分・記述約6分半になります。設問数が事前に決め打ちできない以上、固定の分数ではなく割り算のルールで持つほうが破綻しません。

事例IVは与件が短いため、準備1分・設問解釈3分・読解4分の計8分で切り上げ、残り72分を計算に充てる別設計にします。

なぜ12分かというと、事例I〜IIIの与件はおおむねA4で2〜3ページ分あり、素で読むだけなら8分前後で読めるからです。そこにマーカーを引く動作分として1.5倍を見込むと12分になります。12分で読み切れないのは読むのが遅いからではなく、途中で戻って読み直しているからです。通読は1回。戻るのは20分以降の対応付けフェーズだけ、と決めてください。

0〜8分:与件より先に設問文を読む。ここで色は使わない

与件文を先に読むと、「なんとなく重要そうな箇所」を全部塗ってしまいます。重要かどうかを決めるのは設問であって与件ではありません。だから順番は必ず設問→与件です。ここでマーカーは一切使わず、シャーペンだけで処理します。手順は次の6つです。

  1. 与件に段落番号を振る。第1段落から順に丸数字。所要15秒。以降のメモはすべてこの番号で参照します。
  2. 設問数と制限字数を余白に一覧化する。所要45秒。字数の合計が分かると、記述33分をどう割り振るかが先に決まります。
  3. 設問ごとに「型」を1語で書く。強み/課題/理由/施策/助言/留意点のいずれか。「理由」を聞かれているのに施策を書く事故はここで潰します。型ごとの解答構文は次章の表に置きました。
  4. 設問の「レイヤー」を1語で書く。全社/部門/工程/個別顧客のどれを答える設問かを決めます。これが後述する「粒度」の正体です。
  5. 制約条件に下線を引く。「〜の観点から」「〜を踏まえて」「今後」「中小企業診断士として」といった限定句です。制約は加点ポイントではなく、外すと丸ごと落ちる関門だと考えてください。
  6. 設問の主語を丸で囲む。誰が何をするのかを確定させます。主語がA社なのか顧客なのかで、拾うべき与件の箇所が変わります。

2次筆記は模範解答・採点基準・配点の内訳が公表されません。したがって「この要素は配点が大きいはずだ」といった推測で骨子を組まず、制限字数と設問要求に対して素直に要素を並べてください。

「粒度を外す」とは何か:解答のレイヤーを設問に合わせる

私の再現答案を見直して最も痛かったのは、知識不足ではなく解答のレイヤーが設問とずれていたことでした。内容が正しくても、設問が工程レベルを聞いているのに全社レベルの話を書けば、評価されにくいと考えて運用していました。手順4で書く「レイヤー」は、これを機械的に防ぐためのラベルです。判定は次の2軸だけで行います。

見るところ ずれた場合に起きること
空間の軸(どこの話か) 設問の主語が「A社」か「A社の生産部門」か「特定の工程」か「特定の顧客層」か 全社論に逃げた抽象的な答案になり、与件の固有名詞が入らない
時間の軸(いつの話か) 「これまで」「現在」「今後」のどれか。「今後」なら過去の経緯は根拠止まり すでに失われた強みを現在の強みとして書く/助言設問で現状分析を書く

運用としては、骨子を書き終えた時点で「この骨子の主語は、設問の主語と同じ階層か」を1問ずつ声に出さずに確認するだけです。工程を聞かれているのに骨子の主語が「A社は」で始まっていたら、その時点で書き直します。所要は1問10秒程度で、記述に入る前なら安く直せます。

型ごとの解答構文を決めておく

手順3で型を1語書いても、型ごとに何を書くかが決まっていなければ事故は防げません。型と解答構文をセットで暗記し、骨子作成フェーズではそこに要素を流し込むだけにします。

設問の型 解答の構文 与件から拾う色 よくある事故
強み・特徴 「強みは①〜②〜。」列挙で言い切る 効果や施策まで書いて字数を失う
理由 「〜だから。理由は①〜②〜。」末尾を「から」「ため」で締める 青・赤・緑 施策を書いてしまう。設問要求と主語がずれる
課題・問題点 「課題は①〜②〜。」現状のマイナスを原因つきで 解決策を先に書き、課題が消える
施策 「①〜を行い②〜を行う。これにより〜を図る。」 青+緑+黄 効果を書かず、施策の羅列で終わる
助言 「〜すべき。理由は社長方針の〜と整合し、強みの〜を活かせるため。」 黄が最優先 社長の意向と逆方向の助言をする
留意点 「〜に留意する。理由は〜のため。」 赤・緑 留意点ではなく施策を書く

この表の効き目は末尾の処理にあります。理由を問われた設問の文末が「〜を行う。」で終わっていたら、内容以前に設問要求に答えていません。見直し2分でまず見るのはここです。

8〜20分:4色マーカーで「何を」「何色で」引くか

ここが本題です。色は4色に固定し、意味を1年間変えません。色ごとの担当を下表のとおりに決め打ちします。迷った瞬間に手を止めないための決め打ちであって、この配色そのものに正解があるわけではありません。ただし一度決めたら過去問演習でも本試験でも同じにすることだけは守ってください。

引く対象 引く長さの基準 引かないもの
強み(内部のプラス)。技術・設備・人材・顧客基盤・ブランド・立地 10〜25字。主語と述語が復元できる最小単位 業界共通で当たり前の話
弱み(内部のマイナス)。属人化・老朽化・高コスト・人手不足・情報未共有 10〜25字。原因を示す語まで含める 外部要因による売上減
外部環境。市場動向・顧客ニーズ・競合・地域資源・法規制 文単位(句点まで) A社自身の行動・意思決定
社長の意向・経営理念・今後の方針・こだわり 文単位(句点まで) 過去の経緯の説明部分
シャーペン 時制表現に○/逆接の接続詞に△/数値に□/脅威の行頭に「−」/判断保留に「?」 記号のみ

長さの基準は色ごとに違います。青と赤は「誰の何がどうなのか」が分かればよいので10〜25字で足ります。緑と黄は文全体で1つの意味をなすので句点まで引きます。青か赤を引いていて25字を大きく超えたら、それは実は緑(外部環境)の記述である可能性が高いので、色の選択そのものを疑ってください。逆に、緑や黄が10字程度で終わることはまずありません。

黄色を最重要行にしているのには理由があります。助言系の設問は、社長がやりたいと言っていない方向へ助言すると、内容が正しくても評価されにくい構造だからです。黄色で塗った箇所は答案の方向を決める制約条件であり、SWOTの4分類より優先度が高い。与件を読み終えた時点で黄色が2〜4箇所あるかを数える運用を推奨します。ゼロなら読み落としです。

塗りすぎを防ぐ3つの数値ルール

色分けが機能しなくなる最大の原因は塗りすぎです。8割が塗られたページは、白紙と情報量が同じになります。そこで数を上限で縛ります。

  • 1色あたり1ページ3〜5箇所まで。6箇所目を引きたくなったら、すでに引いた中で弱いものを1つ選び直す意識で止めます。
  • ペンの持ち替えは1段落につき最大2回。3回持ち替えたくなる段落は情報が入り組んでいるので、シャーペンで「※」を打って先へ進み、対応付けフェーズで戻ります
  • 塗らない段落を作らない。各段落に最低1つは何らかの印を残します。塗った箇所しか見なくなるのがマーカーの副作用で、無印の段落に根拠があると詰みます。

SWOTのどれに当たるかを、迷わず機械的に決める

色を選ぶ判断はSWOTの分類そのものです。ここで考え込むと12分に収まりません。判別は次の2つの質問だけで機械的に処理し、それでも決まらなければ3番目のルールに逃がします。

  1. 主語は社内か社外か。A社・従業員・自社設備なら内部(青か赤)。顧客・競合・市場・行政なら外部(緑)。
  2. 社長にとって都合がよいか悪いか。よければ青、悪ければ赤。外部はどちらでも緑で統一し、脅威だけシャーペンで行頭に「−」を書き足します。蛍光マーカーで波線を引いても塗りつぶしと区別がつかないので、機会と脅威の区別はマーカーではなく記号に逃がすのが現実的です。
  3. ペン先を紙に当てたまま一呼吸置いて決まらなければ、色を使わない。シャーペンで下線を引き、行末に「?」を打って先へ進みます。秒数を数える必要はありません。手が止まった感覚があれば即「?」、それだけです。

そしてこれは押さえておいてほしい前提ですが、色分けという作業自体に配点はありません。強み・弱みを直接問う設問には当然配点がありますが、それは設問要求に沿って要素を選び、字数内に収めて書けたかへの配点であって、与件に正しく色を塗れたことへの配点ではありません。両者を混同すると、分類の正しさに時間を使いすぎます。

なお、両義的に読める記述が設問で問われることもあります。強みとも弱みとも取れる記述は、判断を保留して両方の可能性を残しておくほうが安全です。だから迷った記述を無理に色分けするより、「?」で確実に拾い上げるほうが安全です。

与件に出やすい記述の型 基本の判定 ひっくり返る条件 処理
長年勤めるベテランの高度な技能 青(強み) 高齢化・後継者不在とセットで書かれている 青+赤の二重引き
特定の大口取引先で売上の大半を占める 赤(弱み) 安定した受注基盤として書かれている 赤+緑、行頭に「−」(依存=脅威)
創業以来の手作業による一貫生産 青(強み) 生産性の低さの原因として登場 青。原因側の記述には赤
近隣に大型店が出店した 緑+行頭「−」(脅威) ほぼ反転しない 緑。記号で脅威と明示
地域の観光需要や補助制度の拡大 緑(機会) A社が活用できる資源を持たない場合 緑。活用可否は骨子段階で判断
社長の子が他社経験を経て入社 青(強み) 青+黄(施策の担い手になる)

表の2行目を最重要にしたのは、依存関係の記述が事例のどこかに出やすいからです。依存は「今は安定、将来は危険」という時間差の弱みで、現在の強みとして書くか将来の課題として書くかは設問側で決まります。読解段階で決着をつけず、赤と緑の両方を引いて保留するのが安全です。

時系列を掴む:余白に3行の年表を書く

2次試験の与件文は、ほぼ必ず時間軸で構成されています。創業からの経緯、転機、現在の状況、社長の今後の意向。この構造を掴めないと、すでに失われた過去の強みを現在の強みとして書くという致命的なミスが起きます。対策は簡単で、与件の右余白に3行の年表を書くだけです。

  • 1行目「創業〜」:もともと何で食べていた会社か。10字以内。
  • 2行目「転機」:何が起きて何が変わったか。15字以内。
  • 3行目「現在」:いま何が問題か。15字以内。

この3行を書くのに60秒かかりますが、読解12分の中に含めて構いません。年表を書くために、読みながら時制を示す言葉すべてに○を打っておきます。処理の対応は次のとおりです。

与件の表現の型 示しているもの 答案での扱い
「創業以来」「もともと」「当初は」 強みの由来・技術の源泉 強みの根拠として使える。ただし現在も維持されているか要確認
「かつては〜だったが」「以前は〜であった」 すでに失われた強み 現在の強みとして書かない。課題の背景として使う
「近年」「ここ数年」「昨今」 現在進行中の環境変化・課題 課題設問・脅威の根拠
「今後は」「社長は〜と考えている」 経営方針・目指す方向 助言設問の制約条件。黄色で塗る
「一方」「しかし」「ところが」 評価の反転点 △を打つ。直前と直後で色が変わることが多い

逆接の接続詞に△を打つ習慣は費用対効果が高い方法です。「しかし」の前後はプラスとマイナスの切り替わりなので、青と赤の境界がそこにあります。△の直後1文は必ず精読すると決めておくと、読み飛ばし事故がほぼ消えます。

段落構造:番号+2〜5字ラベルで地図を作る

段落番号を振っただけでは検索できません。各段落の左余白に2〜5字のラベルを書きます。長く書くと時間を食うので、使う語をあらかじめ10個ほどに固定しておくのがコツです。たとえば「概要」「沿革」「組織」「人材」「顧客」「製品」「生産」「販路」「課題」「今後」の10語で足ります。語彙を増やすほど、ラベルを選ぶ時間が増えて本末転倒になります。

事例I〜IIIの与件は、細部は違ってもおおまかな並びに定石があります第1段落は企業概要(業種・資本金・従業員数・売上規模)で、ここは分析対象というより前提条件なので色を塗らずシャーペンで□だけにします。最終段落は社長の今後の意向であることが多く、ここはほぼ確実に黄色です。この2つを先に処理しておくと、中盤の読解に集中できます。

中盤の段落は事例によって主題が変わります。事例Iなら組織・人事の変遷、事例IIなら顧客と競合、事例IIIなら生産工程と受注の流れが中心です。ラベルを振り終えたら、同じラベルが3段落以上続いていないかを確認してください。続いている場合はそこが出題の中心です。

20〜28分:設問と与件の対応付けで読解を検算する

色分けは手段であって目的ではありません。最後に必ず「設問と与件の対応付け」で検算します。やり方は単純で、与件の各段落の左余白に、その段落を使う設問の番号を書き込むだけです。複数にまたがるなら「①/③」と書きます。所要8分。

ここで読み落としと設問解釈のずれが数字で検出できます。判定基準は次のとおりです。

対応付けの結果 意味するもの その場での対処
どの設問にも紐づかない段落が2つ以上 設問解釈がずれている可能性が高い 設問文に戻り、制約条件とレイヤーの読み違いを疑う。2分だけ使う
1つの設問に5段落以上が紐づく 設問の切り分けができていない 設問の主語と時制で分け直す
黄色の箇所がどの設問にも使われない 助言設問の方向を外している 助言系の設問の骨子を作り直す
すべての段落がちょうど1〜2設問に紐づく 読解は成功している そのまま骨子作成へ進む

紐づかない段落が2つ以上あるときに立ち止まれるかどうかが、40点台と60点台の分かれ目になります。28分の時点で戻る判断をしても、記述時間は33分残ります。書き始めてから気づくより圧倒的に安いのです。逆に言えば、この検算を飛ばして書き始めると、途中で気づいても引き返せません。事例IIIが1年だけ44点に沈み、翌年68点に戻ったという私の得点推移は、知識ではなくこの工程の有無で説明がつく振れ幅です。

私の得点開示から言えること

読み方の話を締める前に、実データを出します。以下はすべて私の得点開示請求による数字です。読み方の型を整えた3年目でも、全事例が伸びたわけではありません

総点 事例I 事例II 事例III 事例IV 結果
1年目 213点 48 61 68 36 不合格
2年目 226点 58 55 44 69 不合格
3年目 244点 66 51 68 59 合格

読み取れることを4つ書きます。

第一に、事例IIIは68→44→68と乱高下しました。44点の年に知識が減ったわけではありません。設問解釈のずれだけでこれだけ落ちます。そして2年目から3年目にかけての総点の伸びは226→244の18点ですが、その中身は事例IIIの+24点が中心です。読解の型を整えることの効果は、ここに一点集中して現れました。

第二に、事例Iだけが48→58→66ときれいに右肩上がりでした。組織・人事は与件と設問の対応が比較的取りやすく、読み方の型が効きやすい事例だと感じています。

第三に、事例IIは61→55→51と3年連続で下がり続けました。合格した年でさえ51点です。3年目は読み方の型を固めたうえで臨みましたが、それでも51点にとどまりました。型の有無にかかわらず、一貫して伸ばせなかった科目です。事例IIは与件の情報量が多く、誰に何をどう売るかの組み合わせが多数成立するため、色分けで要素を拾えても選択の精度が上がらない。読み方を整えれば全事例が伸びる、という話は私のデータでは成立しませんでした。

第四に、事例IVは36→69→59と乱高下しています。69点を取った2年目は不合格、59点だった3年目が合格です。事例IVを立て直したから受かった、という単純な話ではありません。

「足切りを作らなければ受かる」は成立しない

ここが、この記事でいちばん誤解されやすい部分です。2年目の私は40点未満がひとつもありません(58/55/44/69)。それでも226点で不合格でした。合格基準は「1事例も40点未満がないこと」かつ「総点240点以上」なので、足切り回避は必要条件にすぎず、それだけでは1点も足りません。

では合格年の244点はどういう構造だったか。内訳は66/51/68/59で、60点を超えた事例が2つ(事例I 66点・事例III 68点)あり、50点台の2つ(事例II 51点・事例IV 59点)を支えています。全事例を平均的に60点前後で揃えたのではなく、取れる事例で60点台を確保し、伸びない事例の50点台を許容した形です。合格答案の作り方としては、苦手事例を60点に引き上げることより、得意事例を確実に60点台で着地させることのほうが現実的でした。

読み方の型の位置づけも、これで正確に言えます。読解の型は、60点台を70点台に押し上げる装置ではありません。60点台を取れるはずの事例が44点に落ちる事故を潰し、その事例を確実に60点台へ戻すための工程管理です。

模試の判定と本試験は別物だった

ついでに、もうひとつ実データを出します。2年目、私は2次の模試で次の成績を取っています。

模試 判定 順位 上位率
2次実力チェック模試 A判定 161位/1,043人 上位約15%
2次公開模試 A判定 52位/1,708人 上位約3%

この2つはどちらもA判定ですが、母集団も順位も違うので「公開模試で上位約3%だった」とひとまとめには言えません。そしてこの年の本試験は226点で不合格です。模試でA判定が出ていても、本番で事例IIIが44点に沈めばそれまでで、読解の工程管理を飛ばした代償はここに出ました。模試の位置づけについては TAC模試の判定はどこまで当てになるか に別途整理しています。

4週間で読み方を固める練習メニュー

型は演習でしか定着しません。過去問を使い、4週間で仕上げる手順を示します。使う教材は過去問とふぞろいな合格答案で足ります。何年分を回すかは 過去問は何年分やるべきか を参照してください。

やること 1事例あたりの時間 到達点
1週目 時間を計らず、色ルールだけ守って3事例 制限なし(目安60分) 4色の担当を迷わず言える
2週目 読解を12分でタイマー打ち切り。3事例 12分+復習20分 12分で通読を1回で終えられる
3週目 28分で止め、対応付けまでで採点。6事例 28分+復習20分 紐づかない段落が0〜1になる
4週目 80分通しで4事例。記述まで書き切る 80分+復習40分 時間切れが起きない

3週目の「28分で止める」練習が一番効きます。記述まで書かないので1日2事例回せて、読解の試行回数が3倍になります。

復習は「根拠段落の復元」を先にやる

復習でキーワードの一致だけを見ると、読解の精度は上がりません。見るべきは合格答案がどの段落を根拠にしていたかです。ただし『ふぞろい』には根拠段落の番号は載っていないので、自分で復元する工程が要ります。手順は次の4つです。

  1. 『ふぞろい』の合格答案を1つ選び、使われているキーワードを設問ごとに書き出す
  2. そのキーワードを与件から1つずつ探し、出現した段落番号を答案の余白に書き込む。同じ語が複数段落にあるなら全部書きます。
  3. できあがった「設問→段落番号」のリストと、自分が本番で作った対応付けマップを並べて突き合わせる
  4. ずれた段落について、「読み落とし」か「設問解釈のずれ」かを1行で判定して記録する

4の判定が復習の本体です。読み落としなら色ルールの運用(塗りすぎ・無印段落)を見直し、設問解釈のずれなら制約条件とレイヤーの読み方を見直す。同じ「間違い」でも打つ手がまったく違うので、ここを分けずに復習しても改善しません。『ふぞろい』そのものの使い方は ふぞろいの使い方 に整理しています。

同じ事例を2回目に解くと、記憶で色が引けてしまい練習になりません。初見の事例を必ず4事例以上、直前期用に残しておいてください

読解のチェックリスト(12項目)

本試験直前に読み返す用です。過去問演習のたびに自己採点してください。10項目以上を安定して満たせれば、読解が原因の事故はほぼ起きません

  • 設問を読み終えるまで与件を開いていない
  • 与件に段落番号を振った
  • 設問ごとに「型」と「レイヤー」を1語で書いた
  • 制約条件に下線を引いた
  • 与件の通読は1回で終わった
  • 4色の意味を一度も変えなかった
  • 1色あたり1ページ5箇所以内に収まっている
  • 無印の段落がない
  • 黄色(社長の意向)が2箇所以上ある
  • 時制を示す言葉に○を打った
  • 3行の年表を書いた
  • どの設問にも紐づかない段落が1つ以下

よくある質問

マーカーは何を買えばいいですか

ペン先が細めで裏写りしない蛍光マーカーなら製品は問いません。実務的に効くのはノック式を選ぶことです。キャップ式だと持ち替えのたびに開閉が発生し、開けたまま置けば80分のあいだにペン先が乾いてかすれます。ノック式なら片手で色を切り替えられ、乾燥の心配もありません。あわせて4本の並び順を毎回同じにすると、色を探す動作が減ります。試験会場の机は広くないので、演習の段階から本番と同じ配置で練習してください。

色を使わずシャーペンだけではだめですか

だめではありません。実際、下線の本数と記号だけで処理する方法も成立します。ただしシャーペン一本の場合は、下線・波線・二重線・囲みの4種類を色の代わりに割り当て、意味を固定してください。色より視認性が落ちるぶん、段落ラベルと3行年表の精度を上げる必要があります。独学での進め方は 2次は独学で受かるか に整理しています。

事例IVでも同じ読み方をしますか

しません。事例IVは与件が短く、読解より設問文と財務諸表の突き合わせが本体です。色分けは黄色(社長の意向・投資方針)と赤(財務上の弱み)の2色だけに絞り、残り時間は計算に回します。経営分析の指標選択に与件の記述が効くので、読解4分のうち2分は経営分析用の根拠探しに使うと決めておくと迷いません。私の事例IVは36→69→59と乱高下しており、これは読み方ではなく計算演習の量で決まった部分です。

令和8年度の2次試験で変わる点はありますか

筆記は令和8年10月25日、事例I〜IVの4事例、各80分・100点満点で合計400点という枠組みは従来どおりです。大きな変更は2次口述試験が廃止され、筆記試験の合格がそのまま最終合格になる点です。これは日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」(https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html)で公表されており、当サイトで直接確認しています。同じ改正で受験手数料も改定され、1次17,200円、2次15,100円になりました。読み方の準備そのものに影響はありませんが、筆記一発で最終合格が決まるぶん、筆記で大崩れを起こさない読解の重要性は上がります。日程は 試験日程 にまとめています。

模範解答が公表されないのに、読み方の正解は分かるのですか

模範解答も採点基準も公表されないので、「正しい読み方」を出題側が答え合わせしてくれることはありません。だからこそ、判定は自分で作れる指標に置き換える必要があります。この記事で示した「紐づかない段落が2つ以上あるか」「黄色が2箇所以上あるか」「12分で通読を終えたか」は、いずれも採点結果を待たずにその場で自己判定できる指標です。合否が出るまで検証できない基準ではなく、演習中に測れる基準を持つことが、独学で読解を鍛えるうえでは実質的な条件になります。

明日の1事例でやること(まとめ)

長く書きましたが、明日の演習で変えるのは3点だけです。第一に、設問解釈に6分を確保して与件を後回しにする。そのとき設問ごとに「型」と「レイヤー」を1語ずつ書きます。第二に、青・赤・緑・黄の担当を決めて12分で通読を1回だけ行う。迷ったら色を使わず「?」で逃がします。第三に、28分の時点で段落と設問の対応を書き出し、紐づかない段落が2つ以上あれば設問文に戻る。この3つだけで、読解が原因の失点はかなり減ります。

そのうえで、期待値は正確に持ってください。読み方は、大崩れを防いで本来取れる点に戻す技術であって、上限を押し上げる技術ではありません。私の事例IIが3年連続で下がり、合格年でも51点だったことがその証拠です。一方で、事例IIIを44点から68点へ戻せたのはこの工程管理の効果でした。合格年244点の中身は66/51/68/59で、60点台の2事例が50点台の2事例を支える構造です。読解の型が固まったら、次は「60点台を狙える事例をどれにするか」と事例IVの計算精度に時間を移してください。

関連記事: 2次試験対策の全体像事例IV対策の全体像ふぞろいの使い方全知識・全ノウハウ勉強時間の相場TAC模試の判定はどこまで当てになるか診断士講座の比較

出典: 日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html(口述試験の廃止・受験手数料の改定)。試験科目・実施日・合格基準は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士第2次試験案内」による。得点および模試の順位は筆者本人の得点開示請求・成績表による実データ。時間配分および色分けの基準は筆者が受験期に運用した方法であり、公式に定められたものではありません。