結論:ストレート合格率は約4.2%。ただしこの数字の使い方には注意が必要です
中小企業診断士試験の合格率は、指定試験機関である日本中小企業診断士協会連合会が平成13年度から令和7年度まで25年分を公表しています。最新の令和7年度は1次23.7%、2次17.6%でした。
この2つを掛けると約4.2%。これがいわゆる「ストレート合格率」として引用される数字です。ただしこの掛け算は、実際の受験者の動きを正しく表していません。1次と2次では受験者の性質がまったく違うからです。この記事では公表データそのものを並べたうえで、掛け算では見えない構造を分解します。
先に、この記事でいちばん重要な発見を書いておきます。2次試験の合格率は、直近8年間ずっと17.6%〜18.9%という極端に狭いレンジに収まっています。一方、1次試験は15.7%〜51.3%と3倍以上に振れます。この非対称性が、対策の組み立て方を根本から変えます。
令和7年度の実数:まず全部の数字を並べる
合格率だけを見ていると誤読します。申込者・受験者・合格者を全部並べます。
| 項目 | 第1次試験 | 第2次試験 |
|---|---|---|
| 申込者数 | 26,211人 | 7,355人 |
| 受験者数①(1科目でも受験) | 21,678人 | 7,070人 |
| 受験者数②(欠席科目なし) | 18,360人 | 7,044人 |
| 筆記合格者(口述試験を受験する資格を得た者) | — | 1,241人 |
| 試験合格者数 | 4,344人 | 1,240人 |
| 公表される合格率 | 23.7% | 17.6% |
| 科目合格者数 | 13,146人 | — |
ここで一番目を引くのは1次の「申込26,211人」と「全科目受験18,360人」の差、7,851人です。申し込んだ人の30.0%が、全科目を受け切っていません。欠席したか、途中で帰ったか、あるいは初めから一部科目だけを狙って申し込んだかのいずれかです。
対して2次は、申込7,355人に対して全科目受験7,044人。差はわずか311人、4.2%です。2次まで来た人はほぼ全員が最後まで受け切ります。
つまり1次は「受験を諦める人が3割いる試験」、2次は「全員が撃ち合う試験」です。同じ「合格率」という言葉でも、母集団の意味がまったく違います。
25年分の推移:1次は暴れ、2次は動かない

出典: 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移」
公表されている全期間のうち、直近8年度を並べます。
| 年度 | 1次 受験者② | 1次 合格者 | 1次 合格率 | 2次 受験者② | 2次 合格者 | 2次 合格率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成30年度 | 13,773 | 3,236 | 23.5% | 4,812 | 905 | 18.8% |
| 令和元年度 | 14,691 | 4,444 | 30.2% | 5,954 | 1,088 | 18.3% |
| 令和2年度 | 11,785 | 5,005 | 42.5% | 6,388 | 1,174 | 18.4% |
| 令和3年度 | 16,057 | 5,839 | 36.4% | 8,757 | 1,600 | 18.3% |
| 令和4年度 | 17,345 | 5,019 | 28.9% | 8,712 | 1,625 | 18.7% |
| 令和5年度 | 18,755 | 5,560 | 29.6% | 8,241 | 1,555 | 18.9% |
| 令和6年度 | 18,209 | 5,007 | 27.5% | 8,119 | 1,516 | 18.7% |
| 令和7年度 | 18,360 | 4,344 | 23.7% | 7,044 | 1,240 | 17.6% |
数字の動き方が、1次と2次でまったく違うことがわかります。
1次の合格率は23.5%から42.5%まで、19ポイントの幅で動いています。令和2年度の42.5%は突出しており、その反動のように令和3年度以降は下がり続けて、令和7年度は23.7%と直近8年で最低です。25年全体で見ると、最低は平成16年度の15.7%、最高は平成13年度の51.3%。3倍以上の開きがあります。
対して2次は8年間すべてが17.6%〜18.9%の中に収まっています。幅にして1.3ポイント。25年全体に広げても、最低が平成14年度の10.0%、最高が平成24年度の25.0%で、直近に近づくほどレンジは狭くなっています。
この差が意味すること:2次は実質的な相対評価です
公式には、2次筆記の合格基準は「総点数の60%以上かつ1科目でも40%未満がないこと」という絶対基準です。しかし絶対基準の試験で、合格率が8年連続で18%前後に張り付くという現象は、統計的には起こりにくいことです。
受験者の実力が年によって変動すれば、絶対基準なら合格率も変動するはずです。実際、1次はそうなっています。2次だけが動かないのは、採点の側で結果的に一定の水準に収束させる調整が働いていると考えるのが自然です。模範解答も採点基準も公表されない試験である以上、これは推測にとどまりますが、対策の組み立てには決定的な意味を持ちます。
つまり2次は「60点分の正解を積む試験」ではなく「上位18%に入る試験」として扱うべきだということです。私自身の得点開示がこの見方を裏づけています。
| 受験年 | 事例I | 事例II | 事例III | 事例IV | 合計 | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 48 | 61 | 68 | 36 | 213点 | 不合格 |
| 2年目 | 58 | 55 | 44 | 69 | 226点 | 不合格 |
| 3年目 | 66 | 51 | 68 | 59 | 244点 | 合格 |
合格した3年目でも、事例IIは51点、事例IVは59点と60点を割っています。4事例すべてで60点を取って合格したわけではありません。総点で240点を超えたから受かっただけです。「各科目60点」を目標にすると、本来不要な負荷を自分にかけることになります。詳しくは2次試験の全体像で3年分を分解しています。
科目合格者13,146人という数字が示す変化
もうひとつ、見落とされがちな数字があります。1次の科目合格者数です。
| 年度 | 科目合格者数 | 1次合格者数 | 科目合格者÷1次合格者 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 9,278人 | 5,839人 | 1.59倍 |
| 令和4年度 | 9,485人 | 5,019人 | 1.89倍 |
| 令和5年度 | 10,214人 | 5,560人 | 1.84倍 |
| 令和6年度 | 11,210人 | 5,007人 | 2.24倍 |
| 令和7年度 | 13,146人 | 4,344人 | 3.03倍 |
科目合格者は5年間で1.42倍に増え、令和7年度は1次合格者の3倍を超えました。制度上、科目合格は翌年度・翌々年度の2年間だけ有効です。この数字は「1年で7科目そろえるのではなく、2〜3年かけて積み上げる」という受け方をする人が明確に増えていることを示しています。
合格率が下がっているのに科目合格者が増えているという組み合わせは、試験が難化したというより、受験者側の戦略が分散したと読むほうが実態に近いはずです。7科目を一度に仕上げるのは、働きながらであれば相当な負荷です。勉強時間の相場で試算したとおり1次だけで800時間規模になります。
合格率を自分の確率だと思ってはいけない
ここが実務的にいちばん大事な点です。公表される合格率は、あなたが受かる確率ではありません。理由は3つあります。
第一に、母集団に「本気でない受験者」が含まれています。1次の申込者の30%は全科目を受け切っていません。記念受験や、途中で学習を断念した人が分母に入った状態の数字が23.7%です。最後まで仕上げた人だけを分母にすれば、体感の合格率はもっと高くなります。
第二に、2次の母集団は逆に強い。2次を受けられるのは1次合格者だけで、しかも欠席がほぼゼロです。1次を突破した実力のある人だけが集まった中での17.6%であり、1次の23.7%と2次の17.6%は、同じ「約2割」でもまるで難易度が違います。
第三に、複数回受験者が分母にも分子にも入っています。2次は同じ人が最大2回(1次合格の有効期間内)受けられ、1次から受け直せば何度でも挑戦できます。「1回の受験で受かる確率」と「いずれ受かる確率」はまったく別の数字です。私は2次を3回受けて合格しています。
年度ごとの合格率に振り回されないための考え方
受験生から見ると、合格率の推移は「今年は当たり年か外れ年か」という関心につながりがちです。しかし受験年度を選べる人はほとんどいません。実務上、この数字の使い道は次の3つに限られます。
| 使い道 | 具体的にどう使うか |
|---|---|
| 学習期間の設計 | ストレート4.2%=ほとんどの人が複数年かかる。最初から2〜3年計画で家庭・職場の合意を取る |
| 1次の科目戦略 | 科目合格が2年有効。7科目一括が厳しければ、初年度に4科目・翌年3科目という設計を正面から選ぶ |
| 2次の目標設定 | 絶対60点ではなく上位18%。総点240点を超える組み合わせを探す |
| 年度の当たり外れ判断 | 使えない。1次の変動は事後にしかわからず、2次はそもそも動かない |
養成課程という別ルートの存在
合格率の話をするとき、必ず触れておくべき事実があります。2次試験を受けずに診断士になる人が、実は4人に1人います。
協会連合会のアンケート調査(令和8年5月公表・回答1,847名)で「資格を取得した方法」を聞いた結果は次のとおりです。
| 取得方法 | 回答数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 1次・2次試験+実務補習 | 812名 | 44.0% |
| 1次試験+養成課程 | 450名 | 24.4% |
| 1次・2次試験+実務補習+実務従事 | 198名 | 10.7% |
| 1次・2次試験+実務従事 | 131名 | 7.1% |
| その他 | 22名 | 1.2% |
| 無回答 | 234名 | 12.7% |
養成課程経由が24.4%。無回答12.7%を除いた実質では28%近くになります。2次の17.6%という数字に絶望する前に、このルートの存在は知っておくべきです。ただし費用と時間の負担は大きく、誰にでも勧められるものではありません。詳細は養成課程の全機関一覧と費用で整理しています。
3年かかった実例として、正直に書いておくこと
私は1次を2回、2次を3回受けて令和7年4月に登録しました。総学習時間は約1,800時間です。ストレート合格率4.2%の外側にいた人間の実感として、3つ書いておきます。
1年目に落ちたとき、合格率のせいにしませんでした。事例IVが36点で足切り水準です。これは試験の難易度ではなく、私が計算問題を捨てていた結果です。合格率という外部要因を持ち出す前に、自分の得点開示のどこが崩れたかを見るほうが早い。落ちる人の共通点にまとめたとおり、崩れる場所は毎年違います。
2年目の226点が、いちばん危険な位置でした。240点まであと14点。足切り科目はゼロ。「あと少し」に見えるこの位置は、実は何を直せばいいかが最も見えにくい状態です。合格率18%という数字は、この「あと少し」の人が毎年大量に滞留していることを意味しています。
3年目は1次から受け直しました。1次合格の効力が切れたためです。7科目を再受験する年に模試で487点(7科目合計)を取り、本試験も通過して、2次で244点。複数年受験を前提にするなら、1次の効力が切れる年をあらかじめカレンダーに書いておくべきです。ここを見落とすと、2次対策の途中で1次7科目が復活します。
まとめ:数字は母集団とセットで読む
最後に要点を整理します。
| よくある理解 | データが示す実際 |
|---|---|
| 合格率は約4%だから難関 | 4.2%は1次×2次の単純積。母集団の30%は全科目を受けていない |
| 2次のほうが合格率が高い年もある | 直近8年度は17.6〜18.9%でほぼ固定。1次だけが15.7〜51.3%と暴れる |
| 2次は各科目60点を取る試験 | 実質は上位18%。私も合格年に2事例が60点未満 |
| 試験が年々難化している | 科目合格者は5年で1.42倍。受験戦略の分散という側面が大きい |
| 2次に受からないと診断士になれない | 登録者の24.4%は養成課程経由 |
合格率は、学習期間を何年で設計するかを決めるためにだけ使ってください。「4.2%」を毎日眺めても1点も上がりません。上がるのは、自分の得点開示のどこが40点台なのかを特定したときだけです。
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出典:一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移」(平成13年度〜令和7年度)、および同「中小企業診断士活動状況アンケート調査」(令和8年5月公表・回答1,847名)。合格率は1次・2次とも受験者数②(欠席した科目がひとつもない実人員)を分母とする公表値です。2次の「試験合格者数」は口述試験を経た最終合格者で、筆記合格者(口述試験を受験する資格を得た者)とは1〜7名程度の差があります。令和8年度からは口述試験が廃止されるため、この区別はなくなります。得点開示・模試成績は運営者本人の実データです。