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2次試験対策 更新日 2026.07.28 文・コンパス管理人

中小企業診断士2次試験の全体像|足切り回避だけでは受かりません(3年分の得点開示)

中小企業診断士2次試験の全体像|足切り回避だけでは受かりません(3年分の得点開示)

結論:足切りを作らないだけでは受かりません

中小企業診断士2次試験の合格基準は2つです。総点400点満点の60%以上(240点以上)、かつ1事例も40点未満がないこと。ここから「40点未満さえ作らなければいい」と読みたくなりますが、それは誤りです。私は40点未満がゼロの年に、226点で不合格になっています

私は2次筆記を3回受験し、3回とも得点開示を請求しました。1年目213点で不合格、2年目226点で不合格、3年目244点で合格です。2年目の内訳は事例I 58点/事例II 55点/事例III 44点/事例IV 69点1事例も40点未満がないのに、14点足りませんでした。足切り回避は必要条件であって、合格条件ではありません。

合格年(3年目)の内訳は事例I 66点/事例II 51点/事例III 68点/事例IV 59点です。ここにあるのは60点を超えた2事例(事例I・事例III)が、50点台の2事例(事例II・事例IV)を支えている構造でした。240点は「全事例で60点」でも「足切りゼロ」でもなく、稼ぐ2事例と、沈ませない2事例の役割分担で作られます。

この記事では、模範解答が公表されない試験で何を推定するしかないのかを整理し、私の3年分の実データを年ごとの差分まで分解したうえで、80分の手順と週次の学習配分まで落とします。心構えの話は書きません。

2次試験の全体像を数字で押さえる(令和8年度)

戦略を立てる前に、制度の数字を正確に把握します。ここが曖昧なまま勉強法を選ぶと、努力の向け先を間違えます。

項目 内容
筆記試験日 令和8年10月25日
出題 事例I(組織・人事)/事例II(マーケティング・流通)/事例III(生産・技術)/事例IV(財務・会計)
時間と配点 1事例あたり80分・100点満点
満点 400点
合格基準 総点240点以上、かつ全事例が40点以上
口述試験 令和8年度から廃止。筆記合格がそのまま最終合格
受験手数料 2次15,100円(令和8年度から改定。1次は17,200円)
模範解答 公表されない(配点の内訳も非公表)
受験機会 1次合格の効力が2年間あるため、2次は2回受けられる

令和8年度から口述試験が廃止されたのは大きな変更です。従来も口述はほぼ全員が通過する関門でしたが、12月の口述対策に確保していた時間と精神的負荷が丸ごと消えたことになります。裏を返せば、10月25日の筆記が正真正銘の一発勝負になりました。この廃止は、日本中小企業診断士協会連合会が公表した「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」で当サイトが直接確認しています(https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html)。同じ改正で受験手数料も改定されています。日程の詳細は試験日の記事にまとめています。

1次合格の効力は2年間です。私は1次合格年とその翌年の2回とも2次に落ち、3年目は1次から受け直しました。この「2回で決めないと1次に戻される」構造が、後述する得点設計の重みをさらに押し上げます。なお電卓は、2次の事例IVでは使用できますが、1次試験には持ち込めません

模範解答が公表されない試験で、何が採点されているのか

運営者の2次試験得点開示(3年目・合計244点で合格)
合格年の得点開示。事例IIは51点、事例IVは59点と60点を割ったまま合格している
出典: 運営者提供(氏名・受験番号等はマスキング済み)

2次試験の最大の特徴は、模範解答も配点も採点基準も公表されないことです。受験生が手にできる客観情報は、試験問題(与件文と設問文)開示請求で得られる事例別の得点の2つだけです。ここから先は推定するしかありません。

3回の受験と3年分の開示得点から私が置いている仮説は、答案は3層で評価されており、この3層は対等ではなく上から順に効くというものです。次の表はすべて私の推定で、公表資料の裏づけはありません。そのつもりで読んでください。

層(推定) 採点されていると考えている内容 外したときの影響(推定)
層1 設問要求 何を聞かれ、何を答えたか(強みか課題か、施策か理由か、誰に対してか) ここを外すと以下が全部効かなくなると考えています
層2 与件根拠 事例企業の事実を答案に持ち込んでいるか。一般論で埋めていないか 部分点は残るが、得点が伸び切らないと考えています
層3 知識ラベル 診断士の用語に翻訳されているか(差別化、多能工化、標準化など) 影響は小さい。ただし字数効率が落ちて書き切れなくなります

私自身は、層3(知識)を増やす勉強に時間を使い、層1(設問要求)の精度を上げる練習をほとんどしていませんでした。しかし「強みを答えよ」に対して課題を書けば、与件の引用がどれだけ正確でも点は積み上がりません。

私の2年目の事例IIIは44点でした。前年は68点、翌年も68点です。主因は設問解釈のずれだったと考えていますが、当時の答案を再現していない以上、私にも原因は特定できません。設問との相性、時間切れ、採点のばらつきも切り分けられません。言えるのは、同じ知識量でも1年で24点動いたという観測事実だけです。

私の3年分の得点開示(全データ公開)

ここからが本題です。すべて開示請求で得た実データで、推定値は1つもありません。

総点 事例I 事例II 事例III 事例IV 結果
1年目 213点 48 61 68 36 不合格
2年目 226点 58 55 44 69 不合格
3年目 244点 66 51 68 59 合格

この表から読み取れることを、都合の悪いものも含めて5つ書きます。

1つ目。2年目は40点未満がゼロなのに不合格です。58/55/44/69で226点。最低点は44点なので足切りにはかかっていません。それでも14点足りない。「足切りさえ回避すれば受かる」という説明は、私の2年目が反証になっています

2つ目。事例IVは36→69→59と乱高下しました。1年目の36点は完全な足切りです。2年目に計算問題集を回して69点まで上げましたが、その年は不合格です。そして合格した年の事例IVは59点。「事例IVを鍛えて合格した」という単線のストーリーは、私の数字には当てはまりません。事例IVは上げても、翌年に落ちます。

3つ目。事例IIIは68→44→68。知識量が1年で消えて翌年戻ることは考えにくいので、事例I〜IIIの得点は年ごとに20点以上振れうると見ています。この振れ幅の存在が、後述する目標点の置き方を決めます。

4つ目。事例Iだけが48→58→66と、唯一きれいな右肩上がりでした。3年分の私の数字の中で、投下時間に対していちばん素直に動いたのが事例Iです。

5つ目。事例IIは61→55→51と3年連続で下がりました。合格した年でさえ51点です。私は3年間、事例IIを上向かせられませんでした。それでも244点で合格しています4事例すべてを伸ばさないと受からない、という前提が間違っているのです。

年ごとの差分を分解すると、合否の正体が見えます

総点だけを見ていると「じわじわ伸びた」ように見えますが、内訳の増減はまったく別の動き方をしています。

差分 事例I 事例II 事例III 事例IV 総点
1年目→2年目 +10 −6 −24 +33 +13(213→226)
2年目→3年目 +8 −4 +24 −10 +18(226→244)

2年目は事例IVで33点稼いだのに、事例IIIで24点失って相殺されました。差し引き13点しか増えていません。そして合格した3年目は、事例IIIを44点から68点に戻した+24点が伸びの中心で、事例IVはむしろ10点落ちています。

つまり私の合否を分けたのは、新しく得意科目を作ったことではなく、前年に崩した事例を元の水準に戻したことでした。合格年の244点は、60点超が事例I・事例IIIの2つあり、それが50点台の事例II・事例IVを支えている形です。突出した1科目で押し切ったわけでも、4事例が横並びだったわけでもありません。

240点の作り方は、大きく3系統に整理できます

240点に届く得点の組合せは無数にあります。そのうえで、合格答案の形は一点突破/平準/凸凹許容の3系統に整理できます。次の表の数字は、私の実データ2行を除いてすべて説明のための代表例です。

事例I 事例II 事例III 事例IV 総点 判定
一点突破型(代表例) 50 50 50 90 240 合格。ただし事例IVで90点は再現性が乏しい
完全平準型(代表例) 60 60 60 60 240 合格。1事例でも読み違えると即崩れる
凸凹許容型(私の合格年・実データ) 66 51 68 59 244 合格。60点超2つが50点台2つを支えている
高得点だが足切り(代表例) 75 70 60 35 240 不合格。総点は足りているのに1事例で落ちる
私の2年目(実データ) 58 55 44 69 226 不合格。40点未満はゼロでも14点足りない
私の1年目(実データ) 48 61 68 36 213 不合格(事例IVで足切り)

4行目を見てください。総点240点ちょうどでも、1事例が35点なら不合格です。事例I・IIで145点を取っても、事例IVの35点がすべてを消します。一方で5行目は逆の失敗です。どこも壊していないのに、稼ぐ事例がなかった。この2つの失敗を同時に避ける形が、3行目です。

目標点の置き方(数字を1つに統一します)

ここで目標値を決めます。根拠は2つ、事例I〜IIIは年によって20点以上振れるという観測(私の事例III 68→44→68)と、合格には240点が要るという基準です。

振れ幅が20点あるなら、「55点狙い」は下振れした年に35点、つまり足切りになります。したがって狙う点は「下限+振れ幅」で決める必要があります。40点未満を絶対に避けるなら、下限を50点に置き、そこに振れ幅を足した65点前後を狙いに置くのが最低ラインです。

ただし4事例すべてで65点を狙う計画は、時間の面で破綻します。そこで私は次の形に統一しています。

区分 目標 根拠
稼ぐ2事例 合計135点(65〜68点×2) 私の合格年は事例I 66+事例III 68=134点
沈ませない2事例 合計115点(55〜60点×2) 私の合格年は事例II 51+事例IV 59=110点
総点目標 250点 135+115。240点に対して10点の余裕を持たせる
全事例の下限 50点(40点ではない) 40点を下限にすると、下振れした瞬間に足切り

この設計なら、沈ませる側の2事例が合計105点まで落ちても、稼ぐ側が135点あれば240点に届きます。以降の表・FAQ・まとめは、すべてこの数字(稼ぐ135/守る115/下限50/総点250)で統一しています。

事例ごとに「動きやすさ」が違う、という不都合な事実

4事例に同じ時間を配るのは非効率です。投下時間に対する得点の動き方が、事例ごとに違うからです。以下は私の3年分(n=3)の観測であって、一般法則ではありません。

事例 私の推移 私の観測 取るべき方針
事例IV 36→69→59 演習量を増やした年は33点上がり、直前期に触らなかった年は10点下がった 毎日触る。ただし60点前後を守る位置づけ。ここだけで合否は決まらない
事例I 48→58→66 3年で唯一、右肩上がりに動いた 稼ぐ側に置く。過去問反復で65点前後
事例III 68→44→68 1年で24点落ち、翌年に24点戻った 稼ぐ側に置きつつ、崩れ防止に全振り。50点は絶対に割らない
事例II 61→55→51 3年連続で下がり、最後まで戻せなかった 深追いしない。50点台で着地させる(合格年で51点)

注意してほしいのは、事例IVを69点まで上げた年に私は落ちていることです。事例IVは投下時間が最も素直に反映される一方、そこだけを厚くしても、他事例が崩れれば総点は伸びません。1年目→2年目がまさにその形でした。事例IVの積み上げ方は事例IV対策の全体像にまとめています。

足切りを作らない80分の手順(事例I〜III)

時間配分を「だいたい」で運用している限り、崩れる年はいつか来ます。以下は、私の得点推移から逆算して組んだ手順です。清書時間の割り振りは、設問数によって変わる可変ルールにしてあります。

経過時間 やること 禁止事項
0〜5分 設問文だけを先に読む。与件文は開かない。設問ごとに「何を答えるか(強み/課題/施策/理由)」「制約条件」「字数」を余白に書き出す。あわせて清書1問あたりの持ち時間=40分÷設問数を計算し、締切時刻を書く 与件文を先に読むこと
5〜20分 与件文を通読。段落ごとに番号を振り、設問番号を対応させて欄外にメモ この段階で解答を書き始めること
20〜35分 設問ごとに使う与件根拠を確定。骨子を10〜20字のメモで作る 骨子なしで下書きすること
35〜75分 解答用紙に清書(40分)。設問ごとの締切時刻を過ぎたら、未完成でも次へ進む 1問に固執すること
75〜80分 空欄と字数の最終確認。空欄があれば設問文の言葉をそのまま使って埋める 読み返して全面的に書き直すこと

清書枠の割り算は開始5分以内に済ませます。4問なら1問10分(締切は45分・55分・65分・75分)、5問なら1問8分(締切は43分・51分・59分・67分・75分)。小問まで含めて6問になる年は1問6分半です。「1問10分」を固定ルールにすると、5問の年に最後の設問が白紙になります。白紙は最も避けたい失点なので、ここは必ず可変にしてください。

最重要は最初の5分です。設問文を先に読むと、与件文を読む目的が「情報収集」から「該当箇所の回収」に変わります。私の2年目の事例IIIは44点、3年目は68点でした。この順番を固定したことが効いたと考えています。

事例IVの80分(順番を先に決める)

経過時間 やること
0〜5分 全問に目を通し、解く順序を問題用紙に番号で書く。あわせて計算枠35分÷計算大問数で1大問の上限を出す(3大問なら11分、2大問なら17分)
5〜25分 経営分析(第1問)。20分で指標と記述を書き切り、迷った指標は決め打ちして戻らない
25〜35分 計算結果に依存しない記述だけを先に処理(経営分析の課題記述、手法・制度の一般論を問うもの)
35〜70分 計算問題(35分)。大問ごとの上限時刻を過ぎたら、途中式だけ残して次へ
70〜80分 空欄処理。単位・小数点・符号の確認。捨てた問題にも仮の数値を入れる

25〜35分に回せるのは「計算結果に依存しない記述」だけです。事例IVの記述は直前の計算結果を前提に理由や留意点を問うものが多く、それらは該当計算とセットで扱わないと書けません。判別は設問文の参照語で行います。「上記の計算結果をふまえ」「(1)で求めた」などの語があれば計算とセット、なければ先出し可、という切り分けです。

経営分析は「満点前提の領域」ではありません。指標選択は毎年割れますし、採点基準も非公表です。ここは取りこぼしが最も痛い領域なので、20分で必ず書き切って戻らないという打ち切りルールとして扱ってください。私自身、1年目の事例IVは36点でした。

その1年目の36点から、翌年は30日完成 事例IV計算問題集TAC事例IVの解き方を回して69点になりました。上がった要因は解法知識より「この問題は捨てる」と時間内に判断できるようになったことだと考えています。ただし繰り返しますが、その69点の年も総点226点で不合格です。

事例IIで50点を割らないための4行骨子

私は事例IIを3年間伸ばせませんでした(61→55→51)。伸ばせなかった以上、ここで書けるのは「上げる方法」ではなく「下振れさせない型」だけです。合格年の51点は、下振れを止めた結果だと理解しています。

手順は単純で、全設問について骨子メモを必ず4行で書くことです。

  1. 誰に(既存顧客か新規か、年齢層か地域か、B社の取引先か)
  2. 何を(商品・サービス・情報のどれを提供するのか)
  3. どのように(チャネル、手段、協業先、コミュニケーション方法)
  4. 効果(関係性強化、客単価向上、来店頻度向上などの帰結)

この4行を書くのにかかるのは1設問あたり2分前後、5問でも10分です。骨子段階(20〜35分)の中で完結します。運用ルールは2つだけです。

ルール1:4行のうち1つでも与件に根拠を当てられない設問は、深追いせず書き出しを設問文のコピーに切り替える。「〜の施策を助言せよ」なら「施策は、」から始め、根拠が当たっている要素だけで文章を閉じます。埋まらない要素を推測で埋めると、与件から離れた一般論になって伸びません。

ルール2:「誰に」が全設問で同じになっていたら書き直す。設問ごとにターゲットを分けさせるのが事例IIの典型的な構造なので、全問同じターゲットになっている答案は、どこかで設問要求を取り違えている可能性が高いと考えています。

この2つのチェックに要する時間は、骨子作成の中で5〜10分です。事例IIに配る時間はここまでで、あとは稼ぐ2事例に回します

この型は「事例IIで60点を超えるための型」ではありません。4行のうち書ける要素だけを確実に埋め、白紙と的外れを消すための型です。私の事例IIは61→55→51と下がり続けましたが、40点台には一度も落ちていません。稼げなかった代わりに、崩れもしなかった。合格年の51点は、この位置づけで十分に機能しています。4事例のうち1つは、こういう扱いでよいというのが3年分の結論です。

40点未満が生まれる3つの原因と、潰し方

足切りは事故ではなく、次の3つのどれかで起きると考えています。順に潰します。

原因1:空欄・大幅な字数不足

配点は非公表ですが、設問数から機械的に割ると1設問あたり概ね20点前後になります(100点÷5問)。つまり白紙の設問が1つあると、最大でその分を失う可能性があるということです。事例I〜IIIで20点を落とすと、残りで60点近く積まないと足切りラインに近づきます。

対策は単純で、残り5分で空欄があれば、設問文の言葉を主語に据えて機械的に埋めることです。「〜の理由を述べよ」なら「理由は、」から書き始めます。内容が薄くても、書けば0点にはなりません

原因2:設問要求の取り違え

これが一番怖い原因です。本人は書けたと思っているのに点が入らないからです。対策は開始5分の設問分析で、各設問に「何を」「誰について」「いつの話か」の3つを丸で囲むこと。特に「今後の」なのか「これまでの」なのか、時制の指定を見落とすと答案の方向が丸ごとずれます

原因3:事例IVの大問まるごと崩壊

1つの大問が連鎖して落ちると、設問数からの機械的な推定で20〜25点相当が一気に飛びます。対策は大問ごとの打ち切り時刻を開始5分で決めておくことと、設問ごとに独立して解ける部分を先に処理すること。前問の答えを使う小問でも、自分が出した数値を仮置きして最後まで書けば、途中式に部分点が残る可能性があります

設問解釈だけを切り出す訓練(週1回・30分)

原因2を潰すための練習です。過去問を80分かけて解く必要はありません。設問文だけを使います

  1. 過去問1年分の設問文だけを印刷する(与件文は使わない)。
  2. 各設問について、解答の書き出しの型を10字以内で決める。「強みは、」「課題は、」「理由は、」「施策は、」のいずれかを必ず書く。
  3. 制約条件に線を引く。「今後の」「創業以来の」「A社長の視点で」などの限定語を全部拾う。
  4. その設問が過去(分析)を聞いているのか、未来(提言)を聞いているのかを、設問番号の横にPかFで書く。
  5. ふぞろいな合格答案の再現答案を複数本見て、書き出しの要求語(強み/課題/理由/施策)が自分の判定と割れているものが1つでもあるかを確認する。

手順5の目的は「一致率の確認」ではありません。割れの検出です。合格答案どうしでも書き出しの表現はばらつくので、一致率を測っても判定できません。見るべきは「合格者の間でも要求の読み方が割れている設問がどれか」だけです。

割れが見つかった設問は、その旨をメモに残し、与件文のどの記述で読み方が決まるのかを1つだけ確認します。多くの場合、決め手は設問文の限定語か、与件の該当段落にある社長の発言です。ここまでやって1設問あたり3分、1年分で30分に収まります。

PかFかの判定だけで、答案の方向が半分決まります。過去を聞かれているのに施策を書く、未来を聞かれているのに分析で終わる。この2つが取り違えの典型です。

「切り口ノート」とは何を書くノートか

この後の週次配分で「切り口ノートの更新」に時間を割り当てるので、実物の粒度を先に定義しておきます。A4一枚に、事例別で使う語を並べただけのものです。

事例 ノートに並べる語(例)
事例I 採用/配置/評価/報酬/育成/組織構造(機能別・事業部制)/権限委譲/モラール
事例II 誰に/何を/どのように/効果/既存顧客/新規顧客/関係性強化/客単価/来店頻度
事例III 生産計画/生産統制/標準化/マニュアル化/多能工化/段取り替え/情報共有(DB化)
事例IV 収益性・効率性・安全性の指標/CVP/NPV/キャッシュフロー/セグメント別損益

更新ルールは1つだけです。演習中に思い出せなかった語を、終わったあとに1行追加する。書き足す以外のことはしません。試験当日の休憩中に見るのも、この1枚です。

自己採点は4項目のチェックリストで行う

ふぞろいな合格答案で採点するとき、キーワードの一致率だけを数えても、設問要求の取り違えは検出できません。一致率は層2・層3の指標であって、層1の指標ではないからです。そこで、答案ごとに次の4項目を◯×で記録します。

項目 確認すること
(1)要求語 書き出しの語が、設問の要求(強み/課題/理由/施策/助言)と一致しているか
(2)時制 過去の分析を問われているのに提言で終えていないか、その逆になっていないか
(3)主体 設問が指定する主体(A社/A社長/従業員/取引先)と答案の主語が一致しているか
(4)制約 「〇〇を除く」「〇〇の観点で」などの限定語を1つでも無視していないか

運用は簡単です。×が1つでも出た設問だけを書き直します。4項目すべて◯なのに点が伸びない設問は、層2(与件根拠)か層3(用語)の問題なので、そちらはふぞろいの使い方で扱うキーワード照合に回します。直す順番を間違えないことが重要で、×がある状態でキーワードを増やしても得点にはつながりません。

直前3か月の週次配分

この表は1次が免除で、2次に専念できる年の配分です。私の3年目は1次から受け直しているため、この配分そのものではありません。1次併走年の案は次の表に分けています。

週14時間(平日1.5時間×5+土日3.25時間×2)を前提にします。学習量の一般的な相場は勉強時間の相場にまとめています。

対象 週の時間 やること
事例IV 5時間(毎日45分) 計算問題集を1日1テーマ。間違えた問題は翌日に必ず再演習
事例I 3時間 過去問1事例+復習。80分を計って解く(稼ぐ側)
事例III 3時間 過去問1事例+復習。設問解釈だけを切り出した訓練を週1回(稼ぐ側)
事例II 2時間 過去問1事例。4行骨子の型だけを反復し、深追いしない
横断 1時間 切り口ノートを更新(書けなかった語を1行追加)

1次から受け直す年は、8月の1次まで2次に大きな時間を割けません。その場合の配分案が次です。1次終了後の10週で組み直す前提にします。

時期 2次に配る時間 やること
〜7月(1次期) 週2時間 事例IVの計算のみ。1次の財務・会計と重なるので効率がよい
8月1次直後〜9月中旬(5週) 週14時間 事例I・IIIの過去問を各週1事例+設問解釈訓練。この5週で読み方を固定する
9月下旬〜10月(5週) 週14時間 4事例を80分通しで各週1事例ずつ。時間配分の検証に用途を絞る

過去問は年数を増やすより、同じ年度を3回転させるほうが効きます。1回目は時間を計って解き、2回目は設問解釈だけ、3回目は骨子だけ作って清書は省く。3回目にかかる時間は20分程度です。何年分やるかの考え方は過去問は何年分を参照してください。切り口の整理には全知識・全ノウハウ、事例IVの論点網羅には事例IVの全知識&全ノウハウを使いました。

模試の判定は当てにならない、という実データ

もう1つ、都合の悪い事実を出します。2年目の私の模試成績はこうです。

模試 判定 順位 上位率
2次実力チェック模試 A判定 161位/1,043人 上位約15%
2次公開模試 A判定 52位/1,708人 上位約3%
同年の本試験 226点で不合格

2つの模試の上位率は15%と3%で大きく違います。まとめて「公開模試で上位約3%だった」と書けるものではありません。そして公開模試で上位約3%に入った年に、本試験は226点で落ちています

模試は採点基準が採点者側で定義されている点で本試験と違います。基準が定義された試験で上位に入る能力と、基準が見えない試験で240点を作る能力は別物だと考えています。模試の使い方は順位を見ることではなく、80分の時間配分が守れたかを検証することに限定してください。詳しくはTAC模試にまとめています。

試験当日の運用(事例間の休憩の使い方)

2次筆記は1日で4事例を連続処理する持久戦です。事例Iで消耗すると事例IVの計算精度が落ちます。当日の行動もあらかじめ手順にしておきます。

タイミング やること やらないこと
前日 事例IVの経営分析だけを軽く解いて手を戻す。切り口ノートを1周する 新しい問題に手を出すこと
開始前 時計を机に置き、区切り時刻を4つメモに書く(+5分、+20分、+35分、+75分) 参考書を読み込むこと
各事例の休憩 終わった事例の答案を振り返らない。糖分を入れて、次の事例の切り口ノートを1枚見る 周囲の答案談義を聞くこと
事例IIIの後 事例IVの前に電卓を叩いて指を動かす。単位(百万円・千円)を口に出して確認 疲労を理由に休みすぎること
事例IV中 60分経過時点で空欄の数を数える。2問以上空いていたら難問を捨てて埋めにいく 完答にこだわること

特に3行目です。私の合格年は、2番目に受けた事例IIが51点でした。まだ2事例残っている段階でこの出来です。それでもその後に事例III 68点、事例IV 59点を確保して244点に届いています。途中の1事例が沈んでも、残りで取り返せる構造の試験です。だから休憩中にやるべきことは、答案の反省ではなく次の事例の切り口ノートを1枚見ることだけです。

よくある疑問

独学で受かりますか

受かります。ただし答案を他人の目で見てもらう手段がゼロだと、設問要求の取り違えに自分で気づけません。私は1年目が独学+スタディング、2年目はTAC名古屋に通学して2次に専念し、それでも不合格でした。3年目は1次から受け直し、暗記3科目(経営情報システム・経営法務・中小企業経営政策)に診断士ゼミナールを併用しています。通学したから受かるわけでも、独学だから落ちるわけでもありません。判断材料は2次は独学で受かるかに整理しています。講座の比較は講座比較をご覧ください。

2次だけの勉強に絞るべきですか

1次合格の効力が残っている年は絞って構いません。私も2年目は2次専念でした。ただし2回落ちると1次からやり直しになります。私は実際に1次から受け直しました。「2次だけに絞る」は、落ちたときのコストが高い選択だと理解したうえで選んでください。

目標点は何点に置くべきですか

稼ぐ2事例で合計135点、沈ませない2事例で合計115点、全事例の下限は50点。合計250点です。「4事例すべて60点」は、1事例崩れた瞬間に終わる計画です。崩れる事例が1つあることを前提にした計画にしてください。私の合格年は稼ぐ側(事例I 66+事例III 68)で134点、守る側(事例II 51+事例IV 59)で110点の244点でした。守る側が105点まで落ちても、稼ぐ側が135点あれば240点に届きます

1次から受け直す年、1次にどれくらい時間が要りますか

科目数が7つある以上、片手間では通りません。私が3年目に受けた1次模試は経済64/財務68/企業経営理論82/運営管理70/経営法務68/経営情報システム72/中小63の合計487点でした。ここまで戻すのに、7月までは1次に軸足を置いています。その間、2次に配れたのは事例IVの計算だけです。1次と2次を同じ比率で並走させる計画は、私の経験では成立しません。1次期は事例IVの計算に絞り、2次の読み方の訓練は1次終了後の10週に寄せるのが現実的です。総勉強時間は3年間で約1,800時間でした。

どの事例を「稼ぐ側」にすべきですか

直近3年分の過去問を80分で解き、ふぞろいの採点で相対的に高かった2事例を稼ぐ側に置いてください。得意・不得意の実感ではなく、点数で決めます。私の場合は事例Iと事例IIIでしたが、これは人によって変わります。事例IVを稼ぐ側に置くのは1つの選択肢ですが、私はそれで失敗しています(69点を取った年に226点で不合格)。

まとめ:明日やること3つ

  1. 直近の過去問を1事例、80分計って解く。ただし最初の5分は設問文だけを読み、清書40分÷設問数の締切時刻を書き出す。与件文は開かない。
  2. 事例IVの計算問題集を1テーマ、45分やる。今日から毎日続ける。ただし事例IVは「守る側」で、60点前後が目標です。
  3. 過去問の得点から、稼ぐ2事例と守る2事例を決めて紙に書く。守る側に使っていた時間を、稼ぐ側へ移す。

2次試験は、正解に近づく試験ではなく、240点分の構造を組む試験です。模範解答が公表されない以上、正解への距離は測れません。測れるのは「どの2事例で稼ぎ、どの2事例を50点で止めるか」だけです。40点未満がゼロでも226点で落ちた年と、事例IIが51点でも244点で受かった年。この2つの差が、その答えです。

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出典: 得点・模試順位はすべて筆者本人の開示請求および成績表の記載による実データ。答案の3層構造、配点の推定(1設問20点前後)は筆者の推定であり、公表資料の裏づけはない。令和8年度からの口述試験廃止および受験手数料改定は、日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」(https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html)で確認。