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2次試験対策 更新日 2026.07.28 文・コンパス管理人

中小企業診断士 事例1の解き方|48→66点に伸ばした組織・人事の因果テンプレ

中小企業診断士 事例1の解き方|48→66点に伸ばした組織・人事の因果テンプレ

結論:事例Iは知識量ではなく「因果の型」で点が動く

中小企業診断士2次試験の事例I(事例1・組織/人事)で点が止まる原因の大半は、組織論の知識不足ではありません。与件文にある事実と、設問が求めている結論を、途中の因果でつないでいないことです。私は事例Iを48点→58点→66点と3年かけて伸ばしましたが、その間に新しい知識を仕入れた記憶はほとんどありません。変えたのは書く順番と、80分の使い方だけです。

先に答えを書きます。事例Iでやることは3つです。①設問文だけを見て「何を答える設問か」を5分で確定させる②与件文から使う事実を先に選び、知識は事実を説明するための言葉としてだけ使う③解答の一文を「与件事実→中間効果→経営課題への対応」の順に固定する。この3つを手順として固定した年に、私の事例Iは58点から66点に上がりました。

逆に48点だった1年目は、「組織構造の知識を書けば点が入る」と考えていました。機能別組織の長所を並べ、事業部制の定義を書き、見た目はそれらしい答案です。しかし採点されるのは知識の正しさではなく、その企業がなぜその組織にしたのかという説明です。ここを取り違えている限り、何年やっても40点台から動きません。

検索では「事例1」と表記されることが多いですが、試験上の正式な表記は「事例I」です。この記事では以降、事例Iで統一します。

私の事例Iの得点推移(得点開示の実データ)

運営者の2次試験得点開示(3年目・合計244点で合格)
合格年の得点開示。事例I 66点は3年間で唯一きれいに伸びた事例(48→58→66)
出典: 運営者提供(氏名・受験番号等はマスキング済み)

まず、私自身の数字を出します。2次筆記は3回受験し、3年目に合格しました。以下はすべて得点開示で確認した実データです。

受験年 事例I 事例II 事例III 事例IV 総点 結果
1年目 48 61 68 36 213 不合格
2年目 58 55 44 69 226 不合格
3年目 66 51 68 59 244 合格

4事例のうち、きれいに右肩上がりだったのは事例Iだけです。事例IVは36→69→59と乱高下し、事例IIIは68→44→68と落ちて戻り、事例IIにいたっては61→55→51と3年連続で下がり続けました。合格した年でさえ事例IIは51点です。

244点は「足切り回避」で成立したのではない

この表の読み方を間違えると、勉強の方針ごと間違えます。よくある誤読は「40点未満さえ作らなければ受かる」というものですが、私の2年目がその反例です。2年目は58/55/44/69で、40点未満はひとつもありません。それでも226点で不合格でした。足切り回避は必要条件であって、合格の十分条件ではありません。

合格年の244点の内訳は66/51/68/5960点を超えたのが事例Iと事例IIIの2つで、この2つが50点台の事例II(51点)と事例IV(59点)を引き上げています。つまり必要なのは全事例で60点を取ることではなく、稼げる2事例を60点台に乗せ、残りを50点台で止めることです。

226点から244点への+18点の中身も見ておきます。

事例 2年目 3年目 中身
事例I 58 66 +8 手順を固定して積み上げた分
事例II 55 51 -4 最後まで伸ばせなかった
事例III 44 68 +24 前年に崩れた分を元に戻した
事例IV 69 59 -10 前年の高得点は再現しなかった
合計 226 244 +18

合否を分けた+18点の中心は、事例IIIを44点から68点に戻した+24点です。事例Iの+8点はそこに乗せた上積みでした。ここから言えるのは、1事例でも大きく崩れると、他事例の上積みでは取り返しにくいということです。事例Iの手順を固める目的は、崩れない状態を作ったうえで、60点台に乗せて「稼ぐ側の2事例」に入れることにあります。

そしてもうひとつ。4事例のなかで、手順を変えた効果が最も素直に得点へ出たのが事例Iでした。事例Iから手をつけるべき理由がここにあります。

事例Iで問われているのは「なぜその組織にしたのか」

事例Iの設問は、表現を変えながらほぼ同じことを聞いてきます。ある企業が、ある時点で、ある組織上・人事上の判断をした。その理由や効果、あるいはこれから取るべき打ち手を答えよ、です。ここで求められているのは組織論の定義ではなく、その企業の事情に紐づいた因果の説明です。

私が48点から抜け出せた最初のきっかけは、「解答は必ず与件文の固有事情から書き出す」と決めたことでした。書き出しが「機能別組織は」で始まる答案と、「主力製品の受注が特定顧客に集中し」で始まる答案では、同じ結論に着地しても評価が変わります。前者はどの企業にも当てはまる文章で、後者はこの企業にしか当てはまらない文章だからです。

設問の要求語は、次の5タイプに分類できます。タイプごとに書く順番が違うので、設問解釈の段階でどれなのかを決め切ります。

設問タイプ 要求語の例 解答の骨子(この順に書く) 末尾
理由型 理由は何か/なぜか 与件事実 → 中間効果 → 経営課題への対応 〜ため。
要因型 要因を述べよ/背景は 外部環境の変化 → 企業の対応 → 結果 〜が要因。
助言型 助言せよ/どのような施策 施策(誰に何を) → 中間効果 → 経営課題の解決 〜を図る。
留意点型 留意点を述べよ 想定されるリスク → 具体的な手当て → 狙う状態 〜に留意する。
変化・比較型 どのように変わったか/違いは 変更前の状態 → 変更後の状態 → その差が生んだ効果 〜へ変化した。

この表を暗記する必要はありません。設問解釈の5分でこの表のどれに当たるかを余白に書き込む、それだけです。私は問題用紙の設問の横に「理」「助」「留」と一文字で書いていました。タイプを決めずに書き始めると、理由を聞かれているのに施策を答える事故が起きます。私の再現答案を並べ直したとき、最も多く見つかったのがこの取り違えでした。

解答の一文はこの型に固定する(字数配分つき)

事例Iの解答は、設問1つあたり100字前後が中心です。この100字を、感覚ではなく字数で割り振ります。私が3年目に固定したのは次の配分です。

解答の部品 100字の場合 書く内容 失敗例
①与件事実 30〜35字 企業固有の事情(顧客構成、技術、人員構成、承継など) 一般論から書き出す
②中間効果 25〜30字 ①によって社内で何が起きたか(連携、育成、意思決定の速度など) ここを飛ばして結論に跳ぶ
③経営課題への対応 25〜30字 売上・収益・存続・承継など経営レベルの狙い 効果止まりで終わる
④接続・末尾 10〜15字 「〜により」「〜ため。」など因果を示す語 名詞の羅列で切れる

私が直して最も点が動いたのは②の中間効果でした。40点台のころの答案には、①と③しかありません。「顧客が集中していたので、売上を安定させるため」では、間が抜けています。「専任部署を置いたことで技術情報が組織内に蓄積され、提案力が高まり、新規顧客の開拓につながった」のように、社内で何が起きたかを一段挟むと、同じ字数でも説明として成立します。

もうひとつ、私が徹底したのは「末尾を必ず設問の要求語に対応させる」ことです。理由を聞かれたら「〜ため。」、助言なら「〜を図る。」で締める。名詞止めで終わる答案は、因果が採点者に伝わりません。字数が足りないときに削るのは修飾語であって、末尾ではありません。

中間効果の作り方:思いつきに頼らない4手順

「中間効果を入れましょう」で終わる解説は役に立ちません。実際に手が止まるのは、与件のどの記述から中間効果を導けばいいのか、思いつかないときにどうするのかです。ここは機械的な手順にしておきます。

  1. 選んだ与件事実に対して「その結果、社内の誰の、何が変わったか」を口に出す。主語は必ず社内の人・部署・情報のいずれかにします。市場や顧客が主語になったら、それは中間効果ではなく③の経営課題側です。
  2. 後述する11フレームを、人事側5つ(採用・賃金・能力開発・評価・モチベーション)→組織側6つ(権限委譲・部門化・階層・意思疎通・ネットワーク・組織文化)の順に当てる。変化を説明できるものが1つ見つかった時点で止めます。2つ以上入れると字数が足りません。
  3. 「〜により〜が向上し」の形で15〜25字に固定する。長さを先に決めると、修飾語で膨らむのを防げます。
  4. それでも出てこないときは、裏返す。「その施策がなかった場合、社内で何が起きないか」を考え、否定形で出てきた答えを肯定形に直します。「専任部署がなければ技術情報が個人に留まる」→「技術情報が組織に蓄積される」。

中間効果に使う語は、そう多くありません。手が止まる人ほど語彙を持っていないので、この一覧を先に頭へ入れておきます。

変わる対象 中間効果の言い回し つながりやすい経営課題
情報・技術 技術・ノウハウが組織に蓄積される、情報共有が進む 提案力向上、品質安定、承継
人の連携 部門間連携が強まる、セクショナリズムが解消する 短納期対応、新製品開発
意思決定 意思決定が迅速化する、経営者の負荷が下がる 環境変化への対応、承継準備
能力 多能工化が進む、後継者が育つ、若手が戦力化する 人手不足対応、事業継続
意欲・定着 モラールが高まる、定着率が上がる 採用難への対応、技能承継

この表の左側と右側を、与件の事実でつなぐのが事例Iの答案です。右側だけ書くと一般論、左側だけ書くと効果止まりになります。

組織・人事の定番フレームは11個で足りる

事例Iの知識は、受験界で古くから使われている語呂「幸の日も毛深い猫」でほぼ足ります。前半5つが人事施策、後半6つが組織構造・組織運営の切り口です。細部の割り当てには流派がありますが、中身はどれもほぼ同じなので、自分の教材の版に合わせて構いません。

区分 切り口 答案で使う言葉 典型的な使いどころ
人事(さ) 採用 中途採用、新卒採用、専門人材、多様な人材 事業の高度化・多角化に伴う人材確保
人事(ち) 賃金・報酬 成果主義、年功、インセンティブ、公平性 定着率、貢献の可視化
人事(の) 能力開発 OJT、Off-JT、ジョブローテーション、多能工化 後継者育成、技能承継
人事(ひ) 評価 目標管理、評価基準の明確化、納得性 組織変更後の運用、モラール維持
人事(も) モチベーション 内発的動機づけ、権限委譲、達成感、帰属意識 離職防止、若手の戦力化
組織(け) 権限委譲 意思決定の迅速化、経営者の負荷軽減、育成効果 社長への集中、承継準備
組織(ぶ) 部門化 機能別、事業部制、マトリックス、専門化 組織再編の理由・留意点
組織(か) 階層 フラット化、管理スパン、中間管理職 情報伝達の遅れ、現場対応力
組織(い) 意思疎通 会議体、情報共有、部門間連携 セクショナリズム、連携不全
組織(ね) ネットワーク 外部連携、アウトソーシング、産学連携 経営資源の制約を補う打ち手
組織(こ) 組織文化 価値観の共有、風土、成功体験の固定化 変革が進まない理由、老舗の停滞

ここでやってはいけないのは、この表の言葉をそのまま解答に貼ることです。フレームは答えではなく、与件文のどこを見るかを決める索引として使います。私は骨子作成のときだけこの11個を頭の中で順に当て、与件文に対応する記述があるものだけを残していました。対応する記述がない切り口は、どれだけ知識として正しくても書きません。

設問の言葉から切り口を引く対応表

設問解釈の段階で切り口の当たりをつけるときは、勘ではなく設問文と与件冒頭に出てくる言葉から機械的に引きます。次の対応表を使えば、与件を読み込む前でも根拠のある仮置きができます。

設問・与件に出る言葉 まず当てる切り口 次に当てる切り口
後継者/承継/代替わり/社長の高齢化 権限委譲 能力開発
合併/買収/統合/組織再編 部門化 組織文化
離職/定着/若手/採用難 評価 モチベーション
新事業/多角化/新市場/新製品 採用 部門化
熟練/技能/職人/属人化 能力開発 意思疎通
縦割り/連携不足/情報が伝わらない 意思疎通 階層
外注/協業/大学・支援機関 ネットワーク 部門化
人事制度/処遇/賃金体系の見直し 賃金・報酬 評価

仮置きは1設問につき2つまで。そして仮置きは確定ではありません。与件を読んだあとの対応づけの時間で、該当する記述がなければ迷わず捨てます。この表の役割は正解を先取りすることではなく、与件を読むときに目を止める場所を決めておくことです。

事例Iの80分:分単位の使い方

2次筆記は各事例80分・100点満点です。私が3年目に固定した配分は次のとおりで、骨子作成に20分を確保するのが最大の特徴です。書きながら考えるのをやめた年に、点が上がりました。

経過時間 枠の長さ 作業 具体的にやること
0〜1分 1分 準備 受験番号記入。与件文の各段落に丸数字を振る
1〜6分 5分 設問解釈 設問だけを読み、タイプ・時制・制約・字数を余白に記入
6〜14分 8分 与件1回目 通読しながら4色マーク。この時点で解答は考えない
14〜22分 8分 対応づけ 各段落の横に設問番号を書き込む
22〜42分 20分 骨子作成 全設問の骨子を矢印つきで問題用紙に書く
42〜75分 33分 清書 解答用紙へ。骨子は原則いじらない
75〜80分 5分 見直し 誤字・字数・空欄ゼロ・末尾の語尾を確認

枠の合計は1+5+8+8+20+33+5=80分です。

1問あたりの時間は、設問数で割って決める

事例Iの設問数は年によって変わります。「1問◯分」を固定すると、設問が1問増えた年に必ず破綻します。そこで、枠の開始・終了時刻だけを固定し、1問あたりは「枠の長さ÷設問数」でその場で割る運用にしていました。実際の数字は次のとおりです。

設問数 骨子(20分)1問あたり 清書(33分)1問あたり 清書の目安時刻
3問 6分30秒 11分 53分・64分・75分で1問完了
4問 5分 8分 50分・58分・66分・74分で1問完了
5問 4分 6分30秒 48分30秒・55分・61分30秒・68分・74分30秒で1問完了

試験開始直後、設問数を数えた時点でこの「1問完了時刻」を問題用紙の端に書き出します。時計を見るたびに残り時間を計算し直すのは、それだけで負荷です。先に締切を書いておけば、あとは締切を見るだけで済みます

この配分の肝は「42分の壁」です。42分を過ぎたら、骨子が未完成でも清書を開始します。事例Iで最悪の失点は、最後の設問が空欄になることです。骨子が甘い答案は50点台で止まりますが、空欄は0点です。残り数分で最終設問を書き殴る展開は、40点台の答案で最も起きやすいパターンでもあります。

もうひとつのルールは、清書中に骨子を書き換えないこと。書きながら「やっぱりこっちの切り口かも」と迷うと、1設問で3分以上ロスします。迷いは22〜42分の枠で終わらせ、42分以降は作業に徹する。演習で最も崩れやすいのがここなので、運用ルールとして固定しました。模試の使い方はTAC模試の記事にまとめています。

設問解釈の5分でやる7項目チェック

事例Iの得点は、この5分でほぼ決まります。与件文を読む前に、次の7項目を設問ごとに紙に書き出します。頭の中でやらず、必ず書きます。

  1. 設問タイプ(理由/要因/助言/留意点/変化)を一文字で書く
  2. 時制(過去の話か、現在か、これからか)に丸をつける
  3. 主語(会社か、経営者か、従業員か、特定部門か)を確認する
  4. 制約条件(「〜以外で」「〜の観点から」など)を四角で囲む
  5. 字数を書き、上の字数配分に割る
  6. 想定される切り口を、先ほどの対応表から2つだけ仮置きする(当てはまる言葉がなければ空欄のまま次へ進み、対応づけの14〜22分で決める)
  7. 設問間の役割分担(どの設問がどの時期・どの論点を担当するか)を矢印で結ぶ

7番目が効きます。事例Iは設問4〜5問で企業の歴史を時系列に切り分けていることが多く、設問間で内容が重複した答案はほぼ点が伸びません。複数の設問に同じ切り口を書いてしまうのは、事例Iで起きやすい失点です。切り口の重複は骨子段階で必ず消します

与件文のマーキングは4色だけ

色を増やすほど手が止まります。私は最終的に4色に絞りました。色分けのルールを固定すると、対応づけの8分が半分になります

  • 青=強み・経営資源(技術、熟練、顧客基盤、立地、ブランド)
  • 赤=弱み・問題点(高齢化、属人化、離職、部門間の断絶、社長への集中)
  • 緑=外部環境の変化(市場縮小、規制、取引先の再編、需要の変化)
  • 黄=経営者の意思(〜したいと考えている、〜を目指している)

とくに黄色の「経営者の意思」は、助言型設問の着地点になります。事例Iの助言は、診断士として正しい打ち手ではなく、この経営者が実行できて、かつ望んでいる方向の打ち手を書きます。社長が同族での承継を望んでいるのに外部招聘を勧めれば、内容が正しくても外します。

また、事例Iでは時間の経過を示す記述に必ず縦線を引きます。創業期、成長期、転換期、現在。設問の多くはこの時期のどれかに対応しているので、時期を取り違えると解答全体が的外れになります。読み違いは知識では防げず、手順でしか防げません

対応づけ8分の判断ルール

「各段落の横に設問番号を書く」だけでは、実際には手が止まります。止まるのは決まって次の3つの場面なので、あらかじめ裁き方を決めておきます。

  1. 1つの段落が複数の設問に使えるとき:両方の番号を書いたうえで、時制で優先設問を決めます。創業期の話なら過去を問う設問、現在の話ならこれからを問う設問が優先です。それでも決まらなければ、字数の多い設問に寄せます。
  2. どの設問にも紐づかない段落があるとき:無印のまま放置します。最後まで無印なら使いません。すべての段落を使い切ろうとすると、要求されていない内容で字数を消費します。
  3. 同じ番号が5段落以上ついたとき:その設問の解釈が広すぎます。設問文の要求語と制約条件に戻り、対象時期や対象部門で絞り直します。この時点で気づけば無傷ですが、骨子に入ってから気づくと戻る時間がありません。

逆に、どの段落も紐づかない設問が出たときは、与件の別の箇所を探すより先に、黄色でマークした経営者の意思から組み立てます。事例Iの設問には、与件に直接の答えがなく、経営者の方向性から演繹させるものが混ざります。

40点台で止まる答案に共通する5つの書き方

自分の答案を並べ直して整理すると、失点の形は5つに集約できました。いま40点台の人は、おそらくこのどれかです

やりがちな書き方 何が起きているか 直し方
「機能別組織により効率が向上するため」 与件の事実がなく、どの企業にも当てはまる一般論 冒頭30字を企業固有の事実に置き換える
「A社は〜を行い、〜も行った」 施策の羅列で因果がない 施策→効果→課題対応の順に並べ替える
「モラールが向上する」で終わる 中間効果止まりで経営課題に接続していない 末尾を「〜に対応するため」で締める
複数設問に同じ切り口 設問間の役割分担ができていない 骨子段階で重複した語を消す
制約条件を読み飛ばす 要求外の内容で字数を消費 設問解釈で制約を四角で囲む

このうち私の場合、直して最も点が動いたのは1行目でした。一般論で書いた答案は、模範解答と結論が同じでも手応えほど点が入りません。結論の一致ではなく、結論に至る説明が読まれていると考えたほうが、修正の方向を間違えずに済みます。

2次試験は模範解答も配点も公表されません。したがって「この設問は配点が大きい」といった判断はできません。ここに挙げたのは配点の推測ではなく、答案の形の問題です。

事例Iで使わないほうがよい言葉

答案の形を整えるうえで、使わないと決めておくだけで失点が減る表現があります。私は骨子の段階でこの4種類を弾いていました。

使わない表現 なぜ弾くか 置き換え
「シナジーが生まれる」 何と何が、どう作用したのかが書かれていない 「営業部門が持つ顧客情報を製造部門が共有し」など、主語と対象を具体化する
「体制を強化する」 強化の中身が空。11フレームのどれにも接続しない 「多能工化を進め」「評価基準を明確化し」など切り口の言葉に置き換える
「社員の意識を変える」 施策ではなく願望。実行手段がない 「目標管理制度を導入し、達成度を評価に反映して」など手段を書く
「〜が重要である」 設問の要求語に対応しない末尾。理由にも助言にもなっていない 「〜ため。」「〜を図る。」と要求語に対応させる

逆に、与件文に出てきた言葉はできるだけそのまま使います。自分の言葉に翻訳すると、その企業の事情だったものが一般論に薄まります。専門用語に言い換えたくなるのは、知識を見せたい気持ちの表れですが、事例Iで評価されるのは知識の披露ではなく事情の説明です。

過去問の回し方:事例Iは「骨子だけ10分」で回す

事例Iの演習で時間を食うのは清書です。2周目以降は解答用紙に書かず、骨子だけを10分で作る練習に切り替えます。私は3年目、事例Iの過去問を次のサイクルで回しました。

  1. 1周目は80分フルで解き、必ず解答用紙に清書する(字数感覚を身体に入れる)
  2. 2周目以降は設問解釈5分+骨子10分の計15分で終える(1日3年分回せる)
  3. 骨子と模範解答の差分を、切り口の名前で記録する(「権限委譲を落とした」など)
  4. 落とした切り口を集計し、上位2つを次の演習前に読み返す

4番が重要です。落とす切り口には人ごとの偏りがあります。特定の切り口を毎回落とす一方、別の切り口は与件に根拠がなくても書いてしまう。こうした癖は、集計しない限り見えません。11フレームを縦に並べた紙を1枚作り、落とすたびに正の字を足していくだけで十分です。年数の考え方は過去問は何年分にまとめています。

採点にはふぞろいな合格答案を使いますが、事例Iで使うときは注意が必要です。ふぞろいはキーワードの一致で加点する方式なので、因果がつながっていない答案でも点が出ます。キーワード採点の点数が本試験の得点と一致しないことがあるのは、まさにこの因果の部分が採点に反映されないからです。対策として、ふぞろいで採点したあとに「①与件事実、②中間効果、③課題対応が全部あるか」を自分で3点チェックしていました。使い方の詳細はふぞろいの使い方を参照してください。

知識の穴埋めには全知識・全ノウハウを使いましたが、通読はしていません。骨子で落とした切り口の該当ページだけを読む使い方です。

不都合な事実:この手順は全事例には効かない

ここまで書いた手順は、私の事例Iを48→58→66と伸ばしました。ただし同じ手順を使いながら、事例IIは61→55→51と3年連続で下がり続けています。合格した年でさえ51点です。因果の型は事例Iで最も効き、事例IIでは私の場合ほとんど効きませんでした。手順が万能でないことは、先に書いておきます。

模試の成績についても正確に書きます。2年目、私はTACの模試で次の結果でした。

模試 判定 順位 上位率
2次実力チェック模試 A判定 1,043人中161位 上位約15%
2次公開模試 A判定 1,708人中52位 上位約3%

この年の本試験は226点で不合格です。公開模試で上位約3%に入っても落ちました。模試で測れるのは母集団内の相対順位であって、80分の運用が本番で崩れないかどうかは別問題です。実際、この年に崩れたのは事例IIIで、44点まで落ちています。

したがって、事例Iの手順を固めることは「事例Iを、稼ぐ側の2事例に入れるための投資」と位置づけるのが現実的です。私の244点も、全事例を60点台に乗せたのではなく、事例Iと事例IIIの60点超が、50点台の事例IIと事例IVを引き上げた構造でした。全体像は2次対策まとめ、独学で戦えるかは2次は独学で受かるかに整理しています。

直前2週間の事例I仕上げメニュー

令和8年度の2次筆記試験は10月25日です。令和8年度から2次口述試験は廃止され、筆記試験の合格がそのまま最終合格になります。これは一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会が公表した「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」に記載されており、当サイトで公式ページを直接確認しています(https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html)。同じ改正で受験手数料も改定され、1次17,200円、2次15,100円になりました。直前2週間で事例Iに使える時間は限られるので、やることを絞ります。

時期 やること 1日の時間
14〜11日前 直近3年分を80分フルで解き、清書まで行う 110分×3日
10〜6日前 骨子だけ15分演習。落とした切り口を集計する 45分/日
5〜3日前 集計上位2切り口だけを全知識で読み返し、骨子演習を継続 45分/日
2日前 80分1本を本番と同じ時間帯に解く 110分
前日 設問解釈7項目と1問完了時刻の作り方を読み返すのみ。新しい教材は開かない 20分

直前期に事例Iへ時間を割きすぎないでください。ただしその理由は「事例IVで点を伸ばせるから」ではありません。私の事例IVは36→69→59と乱高下しています。69点を取った2年目は226点で不合格、合格した3年目は59点でした。事例IVの高得点は再現しませんでしたし、合格年の事例IVは突出していません

一方で、1年目の36点のように40点未満を作ると、他の3事例が合計177点あっても不合格です。つまり直前期に事例IVをやる目的は、点を伸ばすことではなく足切りの目を消すことにあります。計算問題は手を止めた期間の分だけ精度が落ちるので、直前期は毎日少量を触り続けるのが現実的です。配分の考え方は事例IV対策の全体像を参照してください。日程は試験日にまとめています。

よくある質問

事例Iの知識はどこまで覚えれば足りますか

先の11フレームと、各切り口で使う言葉が3〜4語ずつ出てくれば足ります。1次の企業経営理論のテキストを読み直す必要はありません。私が3年目に事例I向けへ新しく足した知識は、ほとんどありません。覚える時間があるなら骨子演習を1本増やすほうが点になります

解答は結論から書くべきですか

設問タイプによります。理由型は与件事実から書き出したほうが自然につながります。助言型は「〜を行う。」と施策から入り、効果を後ろに置くほうが読みやすくなります。どちらでもよいのは、途中の中間効果が入っている場合だけです。

字数が足りなくなります

骨子段階で切り口を絞れていない証拠です。100字なら切り口は2つまで、120字でも3つまで。4つ入れると1つあたり25字になり、因果が書けません。切り口を増やすより、2つを因果でつなぐほうが得点します

設問数が多い年は、この時間配分では回りませんか

枠の開始・終了時刻は固定したまま、1問あたりの時間を「枠の長さ÷設問数」で割り直します。5問なら骨子は1問4分、清書は1問6分30秒です。試験開始直後に各問の完了時刻を書き出しておけば、残り時間の計算に頭を使わずに済みます。1問◯分を固定する運用は、設問数が変わった年に必ず破綻します

1次の企業経営理論の知識は、そのまま使えますか

用語の意味を知っている前提としては使えますが、1次で問われる理論の正確さと、2次で求められる説明はほぼ別物です。1次は理論の定義と適用範囲を問い、2次はその企業がなぜその判断をしたかを問います。私は1次を2回受験して2回とも合格していますが、1次の知識量が事例Iの点に直結した実感はありません。伸びたのは書く順番を固定してからです。

事例Iの演習は週に何本必要ですか

本数より、骨子と模範解答の差分を記録した回数が効きます。80分フルの演習は週1〜2本で十分で、残りは設問解釈5分+骨子10分の短時間演習に回したほうが、同じ時間で扱える年度数が3倍近くになります。清書は字数感覚を作るための作業なので、感覚ができたら頻度を落として構いません

事例Iだけ点が伸びません。講座を取るべきですか

骨子と模範解答の差分を10回分記録して、それでも切り口の抜けが直らないなら添削を検討する価値があります。ただし添削を受けても、80分の配分が崩れている人は本番で同じ落とし方をします。先に時間配分を固定してください。講座の比較は講座比較にまとめています。

模範解答が公表されないのに、何を正解とすればいいですか

2次試験は模範解答も配点も公表されません。私は「①与件事実がある」「②中間効果がある」「③経営課題に接続している」「④設問タイプに末尾が対応している」の4点をすべて満たすことを自分の基準にしていました。他人の答案と一致しているかではなく、この4点を満たしているかで判定します

40点未満さえ作らなければ合格できますか

できません。合格基準は総点240点以上、かつ1事例も40点未満がないことの両方です。私の2年目は58/55/44/69で40点未満がゼロでしたが、226点で不合格でした。足切り回避は必要条件にすぎず、240点に届かせるには60点台に乗る事例が必要です。

明日から実行する5ステップ

  1. 今日:設問解釈7項目と80分配分(枠の時刻と、設問数別の1問あたり時間)をA5カード1枚に書き写す
  2. 1日目:直近年度の事例Iを80分フルで解き、清書まで行う
  3. 2日目:自分の答案を①与件事実②中間効果③課題対応の3点でチェックし、欠けている部品を数える
  4. 3〜7日目:骨子15分演習を1日2年分。落とした切り口をノートに正の字で集計する
  5. 8日目:集計上位2つの切り口だけを読み返し、もう一度80分フルで解く

この1週間で、答案から「一般論の書き出し」と「効果止まりの結論」が消えます。48点から58点へ上げる過程で私が優先して直したのは、この2つでした。66点に届いたのは、そのあとに設問間の切り分けと、42分で必ず清書へ移る運用を固めてからです。

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出典: 試験日程・合格基準・令和8年度からの口述試験廃止および受験手数料改定は、一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」(https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html)による。得点はすべて運営者本人の得点開示の実データ、模試の順位・判定はTAC発表の成績表による。