中小企業診断士の1次試験は7科目あり、それぞれ配点も出題傾向もまったく異なります。すべてを同じ勉強法で均等に対策しようとすると、時間がいくらあっても足りません。私が受験した年の模試の科目別得点は、経済学64点・財務会計68点・企業経営理論82点・運営管理70点・経営法務68点・経営情報システム72点・中小企業経営政策63点で合計487点でした。この点数の差は、科目ごとの性質の違いをそのまま反映しています。

7科目の配点と試験時間
1次試験は2日間にわたって実施され、各科目とも100点満点です。1日目は経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、2日目は経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策という構成になっています(試験時間は科目により60分または90分)。総点700点のうち60%以上、かつ1科目でも満点の40%を下回らないことが合格基準です。
| 科目 | 性質 | 令和7年度合格率 |
|---|---|---|
| 経済学・経済政策 | グラフ・理論の理解が中心 | ―― |
| 財務・会計 | 計算問題中心。継続演習が必須 | 8.4%(最低) |
| 企業経営理論 | 読解力中心。暗記だけでは伸びない | ―― |
| 運営管理 | 生産管理・店舗管理の実務知識 | ―― |
| 経営法務 | 法改正の影響を受けやすい暗記科目 | ―― |
| 経営情報システム | IT用語の暗記が中心 | ―― |
| 中小企業経営・中小企業政策 | 白書データと施策の暗記。直前対策が効きやすい | 30.7%(最高) |
この表からわかるとおり、令和7年度は中小企業経営・政策の合格率が30.7%ともっとも高く、財務・会計が8.4%ともっとも低くなっています。同じ試験の同じ年度でも、科目によって合格率に20ポイント以上の差が生じることは珍しくありません。これは各科目の性質の違いが、そのまま得点の安定しやすさの違いに直結していることを示しています。
暗記が効く科目と、演習でしか伸びない科目を分けて考える
中小企業経営・中小企業政策は、中小企業白書のデータや各種支援施策の名称・内容を問う出題が中心で、直前期に集中的に詰め込んでも間に合わせやすい科目です。経営情報システムや経営法務も同様に、用語や制度の知識が正確に頭に入っていれば得点できる比重が高く、学習の後半に時間を厚く配分しやすい科目群といえます。私が3年目に診断士ゼミナールで経営情報システム・経営法務・中小企業経営政策の3科目を重点的に固め直したのは、この暗記が効きやすいという性質を踏まえた判断でした。
一方で財務・会計は、経営分析やキャッシュフロー計算といった計算問題が中心で、直前の詰め込みが効きにくく、日々の演習を継続していないとすぐに勘が鈍ります。この科目の対策は財務・会計の勉強法|苦手な人ほど毎日計算する理由で詳しく解説しています。企業経営理論も同様に、用語の暗記より問題文の読解力が問われる科目で、対策の方向性は企業経営理論の勉強法|暗記より読解力が問われる科目にまとめました。
経済学・経済政策と運営管理は「中間型」の科目
経済学・経済政策は、ミクロ経済学とマクロ経済学のグラフ問題が出題の中心で、需要曲線や乗数効果といった理論を図で理解できているかが問われます。暗記だけでは対応できず、かといって企業経営理論のような長文読解とも性質が違い、グラフの動きを繰り返し手を動かして描き慣れることで得点が安定していく科目です。私自身、この科目は模試で64点と7科目の中では相対的に低く、グラフを描く練習量が他の科目より不足していたことが要因だったと感じています。
運営管理は生産管理と店舗・販売管理の2分野に分かれ、生産管理は工程管理や生産方式に関する実務的な知識、店舗・販売管理は棚割りや物流など小売業の実務知識が問われます。実務経験があるかどうかで得点しやすさが変わりやすい科目ですが、実務経験がなくても頻出論点を過去問で繰り返せば得点は積み上がります。経済学・運営管理はいずれも、暗記科目ほど直前の詰め込みだけでは間に合わず、かといって財務・会計ほど日々の継続を必須とするわけでもない、学習計画の中間に位置づける科目として扱っていました。
攻略の優先順位は「後回しにできる科目」から決める
7科目を並行して勉強する際、私は暗記中心の科目を後回しにできる科目と位置づけていました。経営情報システム・経営法務・中小企業経営政策は、直前の2〜3か月で仕上げても間に合う一方、財務・会計は学習の初期段階から継続的に触れておかないと本試験までに間に合いません。企業経営理論も、読解力という一朝一夕では身につかない能力が問われるため、早い段階から過去問演習を重ねておく必要があります。
経済学・経済政策と運営管理は、グラフの読み取りや実務知識の理解が必要な部分と暗記で対応できる部分が混在しており、中間的な位置づけで学習計画に組み込むのが現実的です。
優先順位を財務・会計と企業経営理論は早期から継続的に、経済学・経済政策と運営管理は中期から、経営情報システム・経営法務・中小企業経営政策は直前期に厚めに配分するという組み立て方が、限られた学習時間を7科目に振り分けるうえで無理のない考え方です。
模試の科目別得点は、自分の優先順位を決める材料になる
7科目の優先順位は、一般論だけで決めるより、自分自身の模試の科目別得点を材料にして微調整するべきです。私の場合、企業経営理論が82点と突出して高く、経済学・経済政策が64点ともっとも低い結果でした。この結果を見て、企業経営理論はこれ以上時間をかけなくても本試験で崩れにくいと判断し、直前期の時間を経済学・経済政策のグラフ演習と、財務・会計の計算演習に多めに配分しています。
一般的な科目の難易度傾向を知ったうえで、最終的な時間配分は自分の模試の結果を反映させて決める、という2段階の考え方が、限られた直前期の時間を無駄にしないコツです。
科目合格制度を使えば、優先順位はさらに柔軟になる
1次試験には科目合格制度があり、一部科目だけ合格点に達した場合、その科目は翌年・翌々年の試験で免除申請が可能です。この制度を前提にすると、1年ですべての科目を仕上げようとせず、複数年で科目ごとに合格を積み上げていく計画も選択肢に入ります。具体的な使い方は科目合格制度の使い方|2年計画で受かるための科目選びで解説しています。1次試験全体の日程や合格基準、免除制度の詳細は中小企業診断士1次試験の完全ガイド|日程・合格基準・科目合格制度にまとめました。
合格率や難易度の全体像については中小企業診断士の難易度と合格率|他資格との比較でわかる本当の難しさ、学習時間の年ごとの配分は中小企業診断士の勉強時間は1000時間?合格者3年間の実際の使い方、3年間の勉強法全体は中小企業診断士の勉強法|3年かけて合格した診断士の学習戦略で紹介しています。独学と通信講座・予備校の比較は独学完全ガイドと通信講座・予備校おすすめ比較をご覧ください。
7科目という範囲の広さは、見方を変えれば得意科目を作りやすい試験でもあります。すべての科目を平均点で揃えようとするより、自分の適性に合った科目で確実に稼ぐ科目を2〜3つ作り、残りの科目は足切りを回避する水準を守るという発想のほうが、限られた学習時間の中では現実的な戦略になります。
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※試験情報は2026年7月時点の日本中小企業診断士協会連合会公表資料にもとづきます。