中小企業診断士の1次試験は、2日間で7科目・のべ9時間近くを戦う長丁場です。1年かけて知識を積み上げても、当日の運用ミスひとつで足切りにかかることがあります。
私は1次試験を2回受験しました。2回とも合格しましたが、1回目は完全にペース配分を誤って1日目の最終科目で頭が働かなくなりました。この記事では、そのときに痛感したことと、公式の試験案内で確認できる事実を合わせて、当日までにやるべきこと・やってはいけないことをまとめます。
【最重要】令和8年度から3つの変更がある
まず制度の話から。令和7年6月25日付で試験に関する規則が改正され、令和8年度の試験から適用されます。知らずに古い情報のまま準備すると足をすくわれます。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| 1次の受験手数料が値上げ | 14,500円 → 17,200円 |
| 2次の受験手数料は値下げ | 17,800円 → 15,100円(1次+2次の総額32,300円は据え置き) |
| 2次試験の口述試験が廃止 | 令和8年度より。2次筆記試験の合格がそのまま最終合格になる |
加えて、令和7年度から受験申込はインターネットの「Web申込システム」のみになりました。印刷された試験案内の配布はなく、従来の払込取扱票による申し込みは受け付けられません。受験手数料に加えてオンライン決済の事務手数料590円がかかります。

出典: 日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」(2026年7月26日確認)
当日の時間割を体で覚えておく
持ち物より先に、時間割を把握しておくことが重要です。特に1日目の重さは、初受験の人が想像しているより厳しいと思ってください。
| 日程 | 時間 | 科目 |
|---|---|---|
| 1日目 | 9:50〜10:50(60分) | 経済学・経済政策 |
| 11:30〜12:30(60分) | 財務・会計 | |
| 13:30〜15:00(90分) | 企業経営理論 | |
| 15:40〜17:10(90分) | 運営管理 | |
| 2日目 | 9:50〜10:50(60分) | 経営法務 |
| 11:30〜12:30(60分) | 経営情報システム | |
| 13:30〜15:00(90分) | 中小企業経営・中小企業政策 |

1日目は朝9:50から夕方17:10まで、4科目で計5時間。しかも最後に90分の運営管理が控えています。ここで集中力が切れる人が本当に多い。私も1回目は運営管理で意識が飛びかけました。
試験地区は札幌・仙台・東京・名古屋・金沢・大阪・広島・松山・福岡・那覇の10地区です。遠方の方は前泊も検討してください。
持ち物チェックリスト
絶対に必要なもの
| 持ち物 | 補足 |
|---|---|
| 受験票 | Web申込システムから取得。印刷を忘れる人がいるので前日夜までに手元に用意しておく |
| HBの黒鉛筆またはシャープペンシル | 3〜4本。芯が折れて焦る時間がもったいない。マークが濃く塗れる太芯(0.9mm等)が塗りやすい |
| 消しゴム | 2個。1個は必ず落とします。落とすと拾うまで数十秒失います |
| 腕時計 | 会場に時計がないことがある。通信機能・計算機能のないシンプルなものに限る。スマートウォッチは不可 |
1次試験に電卓は持ち込めません
これが最も多い勘違いです。中小企業診断士の1次試験では電卓の使用が認められていません。財務・会計も経済学も、すべて手計算です。
一方で2次試験の事例IVでは電卓を使えます(機能制限あり)。「診断士試験=電卓可」と覚えていると1次で困るので、1次は不可、2次は可とセットで覚えてください。
だからこそ、1次の財務・会計は「電卓なしで解ける計算力」を前提に演習する必要があります。普段の学習で電卓を使って解いていると、本番で桁を落とします(対策は財務・会計の勉強法)。
あると本当に助かるもの
- 羽織れる上着:8月上旬なのに会場の冷房が効きすぎていることがあります。寒さで90分持っていかれるのは最悪です
- 昼食と飲み物:会場周辺の店は同じ受験生で混みます。買いに出る時間を計算に入れないのが安全です
- ブドウ糖・チョコなどの軽い糖分:科目間の10〜40分の休憩で摂る
- 常備薬・目薬・ハンカチ
- 現金と交通系IC:帰りの電車が止まることもあります
- 耳栓:試験中の使用可否は会場の指示に従う必要がありますが、休憩時間に集中を戻すために有効です
- 直前確認用の教材は1〜2冊まで:7科目分を持ち込んでも読めません。まとめシートのような要点集や、自分の間違いノートに絞る
前日までにやっておくこと
1. 会場までの経路を「日曜のダイヤ」で調べる
試験は土日に実施されます。平日ダイヤで所要時間を計算していると本数が違って遅れます。バス利用の場合は特に要注意です。
2. 起床時刻を1週間前から本番に合わせる
1科目目は9:50開始です。逆算すると、多くの人は7時前後の起床になります。前日だけ早く寝ようとしても眠れません。1週間前から寝起きのリズムを本番に寄せておくのが現実的です。
3. 2日目の科目は「1日目の夜」に回せる設計にしておく
ここは戦略の話です。経営情報システムと中小企業経営・政策は暗記の比重が大きい科目で、直前の詰め込みが効きます。
私は2日目の朝と1日目の夜に、中小企業経営・政策の白書データを見直す時間を確保する前提で学習計画を組んでいました。1日目が終わった時点で燃え尽きない配分にしておくことが大事です。
4. 持ち物は前夜のうちに鞄へ入れる
当日の朝に探し物をすると、それだけで冷静さを失います。受験票・筆記用具・時計・上着は前夜に鞄へ。
当日、やってはいけないこと
ここからは知識ではなく「当日の振る舞い」で点を落とさないための話です。私自身がやってしまったこと、周囲で見聞きしたことを中心にまとめます。
1. 試験直前にSNSやニュースを見る
他人の「余裕そうな投稿」も「不安な投稿」も、自分の得点には1点も寄与しません。スマホは会場到着後の最終確認だけにして、あとは鞄の奥へ。
2. 1問目から順番どおりに解く
1問目が難問だったときに、そこで固まると残り全部が崩れます。ざっと全体を見て解ける問題から手をつけ、まず「解けている」という感覚を作るほうが安全です。
3. わからない問題に固執する
1次はマークシートで、1問あたりの配点は概ね同じです。難問に5分使うより、標準問題の見直しに5分使うほうが期待値が高い。迷ったら印をつけて飛ばすを徹底してください。
4. マークのズレを確認しない
1マスずれると全滅します。設問を飛ばしたときが特に危険です。大問が変わるたびに、問題番号とマーク番号を目視で照合する習慣をつけてください。数秒のコストで最大のリスクを消せます。
5. 昼食を食べすぎる
午後は企業経営理論90分+運営管理90分という長丁場です。満腹になると確実に眠くなります。腹七分目に抑えて、足りなければ休憩中に糖分を足すほうが機能します。
6. 終わった科目を引きずる
1次は科目ごとに独立した勝負です。手応えが悪かった科目のことを考えながら次を受けるのは、二重に失点する行為です。休憩時間に手応えを反芻しない。
7. 途中で諦めてマークを空欄のまま出す
マークシートである以上、空欄の期待値はゼロ、塗れば5分の1です。「総点60%以上かつ1科目でも40%未満なし」という合格基準を考えると、足切り回避のために最後の1マークが効く場面は現実にあります。
8. 1日目の夜に解答速報を見て一喜一憂する
ここは意見が分かれるところですが、私は1日目の夜に自己採点することをおすすめしません。
理由は単純で、1日目の点数が悪くても2日目を受けない理由にはならないからです。逆に良くても油断が生まれます。自己採点は2日目が終わってからで十分です。
9. 1日目の出来が悪いからと2日目を欠席する
これが最ももったいない行動です。診断士試験には科目合格制度があります。総点で届かなくても、60%以上取れた科目は科目合格として翌年度・翌々年度の受験が免除されます。
つまり1日目が壊滅でも、2日目の3科目で科目合格を取れば、来年の負担が確実に軽くなります。私自身、3年目は1次から受け直しましたが、そのとき残っていた科目が少なければどれだけ楽だったかと何度も思いました。会場に行くだけで来年の自分を助けられます(詳しくは科目合格制度の使い方)。
緊張は「してもいい」と決めておく
最後に精神面の話を少しだけ。
本番で緊張しない人はいません。私も3回受験して、毎回手が震えました。緊張を「消そう」とすると、消えないこと自体が新しい不安になります。
おすすめは、あらかじめ「緊張する前提」で手順を決めておくことです。たとえば——
- 頭が真っ白になったらペンを置いて目を閉じ、10秒だけ何も考えない
- 手が震えたら解ける問題を1問解く(できる感覚が戻ると落ち着きます)
- 時計を見て焦ったら残り問題数を数える(漠然とした焦りが具体的な作業に変わります)
「緊張したときにやること」を事前に決めておくと、緊張そのものが手順の一部になります。これは模試のうちから練習しておいてください(模試の使い方)。
よくある質問
Q. 1次試験に電卓は持ち込めますか?
A. 持ち込めません。1次試験では電卓の使用が認められていないため、財務・会計も含めてすべて手計算です。2次試験の事例IVでは使用できます(機能制限あり)。
Q. スマートウォッチは使えますか?
A. 通信機能・計算機能のある時計は使えません。アナログまたはシンプルなデジタルの腕時計を用意してください。会場に時計がない場合に備えて、時計は必ず持参します。
Q. 途中退出はできますか?
A. 会場・年度ごとの指示に従うことになりますが、そもそも早く退出するメリットはありません。見直しに使ったほうが期待値が高いので、時間いっぱい使う前提で臨んでください。
Q. 1日目が終わった時点で明らかに厳しいです。2日目は受けるべきですか?
A. 必ず受けてください。科目合格制度があるため、2日目の3科目で60%以上を取れれば翌年度・翌々年度の受験が免除されます。1日目の結果に関係なく、2日目は「来年の自分への投資」です。
まとめ
- 令和8年度から1次手数料17,200円・2次口述試験は廃止。申込はWebのみ
- 1次試験に電卓は持ち込めない。2次事例IVは可
- 腕時計は通信・計算機能なしのものを必ず持参
- 消しゴムと筆記具は予備を持つ
- 1日目は9:50〜17:10で4科目。昼食は腹七分目
- 大問ごとにマークのズレを確認。空欄は作らない
- 1日目の出来にかかわらず2日目は必ず受ける(科目合格制度)
当日の運用は、知識と違って前日からでも改善できる領域です。ここで落とす1点は、1年分の学習に匹敵します。
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※制度・日程は2026年7月26日時点で日本中小企業診断士協会連合会が公表している令和8年度試験案内にもとづきます。持ち物の可否は年度・会場の指示が優先されます。