中小企業診断士の登録に必要な15日は、実務補習だけでなく実務従事でも積むことができます。費用をかけずに、自分のスケジュールで進められるのが最大の利点です。
ただし「案件を自分で見つけられるか」という壁があります。この記事では、実務従事の要件と、現実的なポイントの集め方を整理します。
実務従事とは
公式の要件はシンプルです。2次試験合格後3年以内に、「実務補習を受講した日数」または「実務に従事した日数」の合計が15日以上あれば、登録申請ができます。
実務従事は「中小企業に対する経営の診断助言業務」に従事した日数を積み上げる方式です。実務補習と違って費用は原則かからず、日程も自分で組めますが、案件と証明書を自分で確保する必要があります。
| 実務補習 | 実務従事 | |
|---|---|---|
| 費用 | 15日で約18万円 | 原則なし(案件による) |
| 日程 | 決められた日程(平日含む) | 自分で調整できる |
| 案件 | 用意される | 自分で探す |
| 指導 | ベテラン診断士がつく | 基本的につかない |
| 証明 | 協会が発行 | 支援先企業に証明書を書いてもらう |

ポイントの集め方(現実的な5ルート)
1. 県協会・支援団体が主催する診断実務従事に参加する
最も確実なルートです。各都道府県協会は、登録を目指す人向けに実務従事の機会を用意していることがあります。協会の調査でも、実務従事ポイントの取得方法として「県協会が主催する診断実務従事への参加」10.5%、「県協会の研究会が主催するグループ診断への参加」8.9%が挙がっています。
費用が数万円かかる場合もありますが、実務補習より安く、案件探しの手間がないのが利点です。
2. 本業のコンサルティング業務でカウントする
協会の調査では、実務従事ポイントの取得方法として「本業(コンサルティング業務等)で取得可能」が62.4%と6割以上を占めています。
コンサル会社、金融機関の融資・経営支援部門、事業会社の経営企画などに在籍している場合、本業の一部がそのまま要件を満たす可能性があります。まず自分の仕事が該当しないかを確認してください。
3. 勤務先の休日を使って支援案件に参加する
同調査で「休日等を活用して、コンサルティング業務への参加」18.1%。勤務先で副業が認められている診断士は79.1%(前回2021年調査は47.0%)まで増えており、この選択肢は取りやすくなっています。
4. 取引先・知人企業への支援
取引先や知人が経営する中小企業に対して、診断・助言を行う方法です。同調査でも「取引先を中小企業とした診断活動(下請指導、リテールサポート等の提案活動等)への従事」7.9%が挙がっています。
ただし「知り合いだから」と形だけ証明書をもらうのは要件を満たしません。実際に診断・助言を行い、その内容を説明できる状態にしておく必要があります。
5. 外部の有料実務従事プログラムを使う
ここが、知り合いのいない人にとって現実的な第3の選択肢です。実務補習でも「知人の会社」でもなく、民間事業者が主催する実務従事プログラムに参加してポイントを積む方法があります。

代表的なものがアクセルパートナーズの実務従事です。公式サイトで確認できる内容を整理します(2026年7月27日時点)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料金 | 88,000円(税込)・後払い。キャンセル料は不要 |
| 取得ポイント | 最大15ポイント(5・7・8・10・15から選択可) |
| 拘束日程 | 土日の4日間(10〜18時)。平日の必須参加なし |
| 残りの日数 | 11日分は各自の課題(事業計画書の作成)。提出期限なし |
| 会場 | 東京・大阪・名古屋・福岡・Zoom(全国から参加可) |
| 内容 | 実在企業へのヒアリング → グループ討議 → 事業計画書作成 → 経営者の前でプレゼン。補助金の事業計画書作成まで |
| その他 | 更新ポイントにも対応。合格前・口述待ちでも申込可 |
注目すべきは費用対効果です。
| 実務補習(協会) | 外部プログラムの例 | |
|---|---|---|
| 15日分の費用 | 約180,000円 | 88,000円 |
| 平日の拘束 | あり | なし(土日4日) |
| オンライン参加 | 不可 | 可 |
| 知り合いの必要性 | 不要 | 不要 |
15日分をおよそ半額で、しかも平日を1日も使わずに積める——これは、平日に休めない会社員にとって大きな意味があります。
ただしいくつか注意点があります。
- 4日間は10〜18時のフル参加が必須(途中参加・途中抜けは不可)
- ポイントの発行は課題提出と入金の確認後。無断欠席・課題未提出では発行されない
- 5ポイントだけの取得でも料金の値引きはない
- 定員に達し次第締め切り。日程は限られる
同種のプログラムは他の事業者も提供しています(例: 清水トラストコンサルティングなど)。「何ポイントが確実に取れるのか」「どこまでが必須参加か」を申込前に必ず確認してください。ここが事業者によって最も差が出る部分です。
※当サイトは特定の事業者と提携していません。上記は公式サイトで確認できた内容を整理したものです。料金・日程は変わるため、最新情報は各事業者の公式サイトでご確認ください。
【実例】私は実務補習を受けず、実務従事だけで登録しました
ここからは一般論ではなく、私自身がどうしたかを書きます。
私は実務補習を1日も受けていません。15日すべてを実務従事で積んで、そのまま登録まで済ませました。
案件はどこから来たか
結論から言うと、受験期に知り合った先輩診断士です。
その方が法人の社長をされていたので、その方のもとで実務従事をやらせてもらいました。最終的には先輩診断士でもあり社長でもある方2名のところで、15日分の実務従事を行っています。
ここで振り返っておきたいのは、受験期に作った人とのつながりが、合格後の登録ルートを決めたということです。勉強していた当時は、この縦のつながりが登録手続きに効いてくるとは考えていませんでした。受験期の人脈は、試験が終わってから価値が出ます。
結果論としての正直な感想
お金を払って実務補習を受けるくらいであれば、先輩診断士のもとで実務従事を行う形でもまったく問題ない——これが実際にやってみた私の結論です。
もちろん協会主催の実務補習を否定するつもりはありません。ただ、15日コースで約18万円というのはそれなりの金額です。知り合いに社長がいるのであれば、実務従事一本で登録してしまうのも十分にアリだと考えています。
それでも実務補習にしかない価値は3つある
受けなかった立場だからこそ、フェアに書いておきます。実務補習の最大のメリットは、日数を埋めることではなく人と型です。
- 協会の指導員(先生)と仲良くなれる——登録後の仕事の入口として、この人脈は効きます
- 受講者どうしで仲間意識が芽生える——同期のような関係ができる
- 診断実務の「型」が学べる——報告書の構成や進め方を、指導つきで一度通せる
実際、協会の調査でもコンサルティング業務の依頼を受けたきっかけは「中小企業支援機関・商工団体からの紹介」20.1%、「県協会からの紹介」15.9%が上位です。人的ネットワークが仕事に直結する世界なので、ここを軽視すべきではありません。
それでも私が実務補習を選ばなかった理由
診断士の仕事は千差万別で、型にはまった仕事が求められるものではないと考えているからです。
報告書の書き方を1つの型で習っても、実際の現場では相手の業種・規模・経営者の性格によって、求められるものがまったく変わります。私にとっては、型を習うことの優先度がそこまで高くなかった——それが選ばなかった理由です。
逆に言えば、「まず1本、指導つきで診断報告書を完成させる経験がほしい」という人には、実務補習は十分に払う価値があると思います。ここは目的次第です。
ただし前提条件があります
誤解のないように書いておくと、この選択ができたのは「やらせてもらえる知り合いがいた」からです。
ただし、知り合いがいなければ詰む、という話ではありません。前述した外部の有料実務従事プログラムを使えば、知り合いゼロでも、実務補習の半額程度・土日だけで15ポイントを積めます。選択肢は「実務補習か、知人のツテか」の二択ではなく、三択です。
そのうえで、受験期のうちに人とつながっておくことは、登録後の仕事の入口という意味でもやはり効いてきます。予備校でも、勉強会でも、県協会のイベントでも構いません。
つまずくのは「機会がない」という一点
協会の調査は、この制度の急所をはっきり示しています。実務従事ポイントの取得に阻害要因があると答えた22.0%の人の理由は、上位から次のとおりです。
- 実務従事の機会そのものがない:53.7%
- 会社の業務が忙しく、実務従事を行う時間が取れない:45.3%
- 勤務先の仕事内容が実務従事と関連しない:36.5%
- 実務従事の要件確認が厳しい:31.8%
費用ではなく「案件」と「時間」がボトルネックです。逆に言えば、本業が支援業務に近い人や、県協会のネットワークに入れる人にとっては、実務従事のほうが合理的だという判断になります。
登録後も実務従事は続く(5年更新)
見落とされがちですが、実務従事は登録するときだけの話ではありません。診断士の登録は5年更新で、更新のためにも実務従事の実績が必要になります。
つまり「15日を集めて終わり」ではなく、資格を維持し続ける限り付き合う仕組みです。だからこそ、最初の15日を集める段階で、その後も続けられるルートを選んでおくと後が楽になります。
この視点で見ると、県協会に入って研究会やグループ診断のネットワークを作っておくことは、更新まで含めた合理的な投資だと考えています。
よくある質問
Q. 実務補習と実務従事は混ぜられますか?
A. 混ぜられます。「8日間コースの実務補習+実務従事7日」といった組み合わせで15日を満たせます。
Q. 自分の勤務先を診断してもカウントされますか?
A. 要件は「中小企業に対する経営の診断助言業務」です。勤務先が中小企業に該当するか、業務内容が診断助言にあたるかで判断が変わります。該当するか微妙な場合は、事前に協会へ確認するのが確実です。
Q. 期限を過ぎたらどうなりますか?
A. 2次合格後3年以内という期限を過ぎると、登録するには2次試験から受け直しになります。合格したら早めに動いてください。
Q. 実務従事のほうが安いなら、実務補習を受ける意味は?
A. 案件・指導・人脈がセットで手に入る点です。特に企業内診断士で支援業務の経験がない人にとっては、指導員がついた状態で診断報告書を1本書き切る経験そのものに価値があります。
まとめ
- 登録要件は実務補習+実務従事で合計15日(2次合格後3年以内)
- 実務従事は費用がかからず日程も自由だが、案件と証明書を自分で確保する必要がある
- 62.4%が「本業で取得可能」。まず自分の仕事が該当しないか確認する
- つまずく理由の1位は「機会がない」53.7%。案件を確保できるかがすべて
- 5年更新でも実務従事が必要。続けられるルートを最初に選んでおく
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※制度は2026年7月時点の公表内容にもとづきます。パーセンテージは日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」(令和8年5月公表/回答1,847名)より。要件の個別判断は協会・登録機関にご確認ください。