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勉強法 更新日 2026.07.28 文・コンパス管理人

中小企業診断士 経済学の勉強法|グラフを描けるかで決まる。60点台で十分な科目

中小企業診断士 経済学の勉強法|グラフを描けるかで決まる。60点台で十分な科目

結論:経済学は「暗記科目」ではなく「グラフを描く科目」

中小企業診断士1次試験の経済学・経済政策で60点を超える最短ルートは、頻出グラフ12枚を白紙に30秒で描けるようにすることです。テキストの太字を塗って何周しても点は伸びません。逆に、グラフの軸・切片・シフトの向きが手で再現できるようになると、選択肢の正誤は読むだけで切れるようになります。

私は1次試験を2回受験し、2回とも合格しています。3年目は、2年目に2次筆記で不合格になって1次合格の効力が切れたため、1次から受け直しました。その年の直前期の模試で、経済学は64点。7科目のうち下から2番目です。

科目 模試の得点 位置づけ
企業経営理論 82点 最高点
経営情報システム 72点
運営管理 70点
財務・会計 68点
経営法務 68点
経済学・経済政策 64点 下から2番目
中小企業経営・政策 63点 最下位

合計487点。1次模試の実績であり、本試験の得点開示ではありません。

この凸凹のまま模試の合計は487点になりました。経済学は60〜65点を淡々と取りに行く科目であって、80点を狙う科目ではありません。上の表で分かるとおり、7科目は平均点で通るのではなく合計点で通ります。経済学の64点は、企業経営理論の82点に支えられて初めて意味を持つ数字です。

もう一つ、他のサイトがあまり書かない事実を先に置きます。経済学は2次試験に一切出ません。事例I〜IVのどこにもIS-LM曲線は出てきません。それなのに「経済学が面白くなってきた」と深追いして、財務・会計や企業経営理論の時間を削る人がいます。経済学にかけてよい時間の上限は120時間で、それを超えた分は他科目に回したほうが7科目合計は伸びやすくなります。

まず数字を押さえる:60分・25問前後・1問4点・電卓なし

運営者の1次模試 科目別成績(合計487点)
3年目の1次模試。経済学は64点で7科目中6番目。ここを割り切っても合計487点は積める
出典: 運営者提供(氏名・受験番号等はマスキング済み)

経済学・経済政策は1次試験1日目の1科目め、60分です。2日間7科目のうち、いちばん最初に解く60分がこの科目になります。設計を間違えると、開始30分で頭が真っ白になったまま午後まで引きずります。

項目 内容 受験生にとっての意味
試験時間 60分 25問なら1問あたり2分24秒。迷う時間はほぼない
出題数・配点 25問前後・1問4点が基本 15問正解で60点。10問落としてよい
実施順 1日目の1科目め 7科目の先頭。前日の睡眠が直接効く
電卓 1次は持ち込み不可 計算問題は分数と暗算で終わる数字に作られている
合格ライン 60点/足切りは40点未満 7科目700点満点・総点420点との合わせ技で考える
2次試験との関係 出題なし 深追いの費用対効果が7科目で最も低い

設問数と各問の配点は年度により変動します。配点は当日の問題用紙に記載されるので、開始直後に必ず確認してください。

「1問4点・15問で60点」という感覚は最後まで持ち続けてください。25問のうち10問は捨ててよいという前提に立てると、後述する「優先度を下げる論点」の判断が一気に楽になります。制度の全体像は1次試験ガイド試験科目一覧で確認できます。試験日は試験日程のページにまとめています。

電卓については誤解が多いので繰り返します。1次試験に電卓は持ち込めません。電卓が使えるのは2次試験の事例IVだけです。1次の経済学・財務会計は、すべて手計算で終わる数字に作られています。この前提を知っていると、計算の途中で汚い小数が出た時点で「どこかで間違えた」と気づけます。

令和8年度の制度変更:経済学の位置づけはさらに軽くなる

令和8年度から、試験制度にいくつか変更があります。経済学の学習配分に直接効くものだけ挙げます。

変更点 内容 経済学の学習への影響
2次口述試験の廃止 令和8年度から口述試験が廃止され、2次筆記の合格がそのまま最終合格になる 2次は筆記一本勝負。1次のうちから2次へ時間を寄せる価値が上がった
受験手数料の改定 1次17,200円、2次15,100円 受け直しのコストが上がる。1次は一発で通す前提で組む
1次合格の効力 2年間(従来どおり) 2年以内に2次を通せないと1次からやり直しになる

口述試験の廃止は、日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」(https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html)で公表されています。当サイトで公式ページを直接確認しました。

ここが経済学の話とつながります。2次が筆記だけで完結するということは、2次筆記の800分(4事例×80分)がそのまま最終関門になるということです。私は2次筆記を3回受けています。1次合格の効力が2年しかない以上、1次で経済学に150時間かけて70点を取るより、120時間で62点に着地させて浮いた30時間を2次に前倒しするほうが、合格までの総所要は短くなります。私自身の総勉強時間は約1,800時間でしたが、そのうち経済学に投じた時間は全体の1割にも届きません。

不都合な事実:難易度のブレが7科目で最大級

経済学は年度による難易度の振れ幅が非常に大きい科目です。科目合格率が一桁台に沈む年もあれば、20%台に乗る年もあります。同じ勉強量でも、当たった年度によって50点にも75点にもなる。ここを直視せずに「経済学で70点取る」という計画を立てると、崩れたときに立て直せません。

だから目標は二段構えにします。本命は60〜65点、最低ラインは45点(足切り回避)。難化年に45点で耐え、企業経営理論や運営管理で貯金を作る。先に挙げた模試の内訳がまさにその形で、経済学64点・企業経営理論82点という凸凹のまま合計487点になりました。

この「凸凹でよい」という考え方は、実は2次試験でも同じです。参考までに私の2次の得点開示を並べておきます。

総点 事例I 事例II 事例III 事例IV 結果
1年目 213点 48 61 68 36 不合格
2年目 226点 58 55 44 69 不合格
3年目 244点 66 51 68 59 合格

合格年の244点は、66点と68点という60点超が2つあって、51点と59点の2事例を支えている構造です。全事例を均等に60点へ揃えて通ったわけではありません。1次の7科目もまったく同じで、全科目を60点に揃える計画は、たいてい全科目が中途半端になって崩れます。伸びる科目に伸びてもらい、経済学のような科目は落とさない位置で止める。これが配分の基本です。

もし前年に経済学で60点以上を取っているなら、科目合格制度で免除するかどうかは慎重に考えてください。免除すると総点の分母が減るので、得意科目の貯金で他科目を支える戦略が使えなくなります。経済学が「そこそこ取れる」状態なら、あえて受け直して分母を確保するほうが有利な場合があります。

学習時間は100〜120時間。1日90分×週5で約12週

当サイトの勉強時間の相場では経済学は100〜120時間としています。1日90分×週5日で12週(約3か月)が標準形です。独学でもこの枠に収まります。私自身、3年目は暗記3科目(経営情報システム・経営法務・中小企業経営・政策)だけ通信講座を併用し、経済学は市販テキストによる独学で通しました。この科目は講義を聞く時間より、自分の手を動かす時間のほうが点に直結します。

フェーズ 時間 やること 1日の中身
①インプット(ミクロ) 25時間 テキスト通読+図の書き写し 読む45分/グラフ模写30分/問題15分
②インプット(マクロ) 25時間 同上 読む45分/グラフ模写30分/問題15分
③グラフ白紙復元 15時間 12枚を毎日3枚ずつ描く 1日15分。ここが最大の得点源
④過去問演習 30時間 直近10年を2周 25問60分+解説40分
⑤計算パターン固め 10時間 5パターンを手で反復 1日20分
⑥直前(経済政策・時事) 10時間 統計・政策の暗記 試験2週間前に集中

①〜⑥の合計は115時間。相場の100〜120時間に収まります。③は1日15分×週5日×12週=15時間、⑤は1日20分×10日を3周して10時間という計算です。

注意点が一つ。①②のインプットに50時間以上かけてはいけません。経済学は「わかった気になる」までの時間が長く、テキストを丁寧に読むほど沼にはまります。1周目は理解度6割で先へ進むのが正解で、理解は③④の演習で後追いします。

逆に、削ってはいけないのは③と④です。③のグラフ白紙復元15時間と④の過去問30時間、この45時間が経済学の得点の本体で、①②のインプット50時間はその準備にすぎません。準備に時間を使い切って本体に入れないまま本番を迎える、というのがこの科目で最も多い崩れ方です。

順序はミクロが先。マクロ先行は事故る

市販テキストの多くはミクロ経済学から始まりますが、「マクロのほうが新聞で見る話だから先に」と順番を入れ替える人がいます。これは事故のもとです。マクロのIS曲線は投資が利子率の関数であること、LM曲線は貨幣需要が所得と利子率の関数であることを前提にしています。ミクロの「限界」概念と最適化の発想を通っていないと、IS-LMは丸暗記に化けます

領域 主な論点 到達目標
1〜2週 ミクロ・消費者理論 無差別曲線、予算制約線、代替効果と所得効果 スルツキー分解を図で説明できる
3週 ミクロ・生産者理論 費用曲線、限界費用、損益分岐点・操業停止点 MC・AC・AVCの位置関係を描ける
4週 ミクロ・市場均衡と余剰分析 消費者余剰・生産者余剰・死荷重、課税・関税 三角形の面積を指で示せる
5週 ミクロ・不完全競争と市場の失敗 独占、外部性、公共財、ゲーム理論の基礎 独占の価格・数量決定を描ける
6週 マクロ・国民経済計算 GDPの定義、三面等価、名目と実質 GDPに入る/入らないを即答
7週 マクロ・45度線と乗数 有効需要、乗数効果、デフレギャップ 乗数を式なしで説明できる
8〜9週 マクロ・IS-LM/AD-AS 財政政策・金融政策の効果、クラウディングアウト 政策→どちらの曲線がどちらへ動くかを即答
10週 国際経済 比較優位、マンデル=フレミング・モデル 変動相場と固定相場の効果を言える
11〜12週 過去問と経済政策 直近10年を2周、白書・統計 60分で25問を解き切る

4週目の余剰分析だけは飛ばさないでください。課税、補助金、関税、価格規制、独占——出題の見た目が変わっても、聞かれているのは「どの三角形が消えたか」です。年度によって出題数は動きますが、ここ一枚が複数問に絡む年が珍しくありません。

もう一点、順序について。ミクロを終えてからマクロに入るまでに間を空けないでください。ミクロの限界概念が生きているうちにIS-LMへ入ると、「投資は利子率が下がると増える」という接続が自然に入ります。間が空くと、また限界費用の定義から思い出す作業が発生します。

頻出グラフ12枚を「手が覚える」まで描く

この科目の中心作業はこれです。A4のコピー用紙(無地)に、1枚30秒で描く。定規は使いません。フリーハンドで軸を引き、軸のラベルを書き、曲線を入れ、交点に印を打ち、シフトの向きを矢印で書く。この5動作を体に入れます。

グラフ 縦軸/横軸 必ず言えるようにすること 描く頻度
需要曲線・供給曲線と余剰 価格/数量 課税・関税・価格規制で消える三角形 S
無差別曲線と予算制約線 財Y/財X 最適消費点、価格変化時の回転 S
代替効果・所得効果の分解 財Y/財X 補助線の引き方、ギッフェン財 A
費用曲線(MC・AC・AVC) 費用/生産量 MCがACの最低点を通る、操業停止点 S
完全競争企業の利潤最大化 価格/数量 P=MC、利潤の長方形 S
独占市場 価格/数量 MR=MCで数量、需要曲線で価格 S
外部不経済と最適生産量 費用/数量 私的限界費用と社会的限界費用のズレ A
45度線分析 総需要/国民所得 デフレギャップの位置 A
IS-LM曲線 利子率/国民所得 財政政策はIS、金融政策はLM。動く向き S
AD-AS曲線 物価/国民所得 供給ショックと需要ショックの違い A
労働市場とフィリップス曲線 賃金・物価上昇率/失業率 短期と長期で形が変わる理由 B
マンデル=フレミング 利子率/国民所得 変動相場では財政政策が無効 A

この欄は「描く回転数」の目安です。論点としての重要度とは別に扱ってください。AD-ASやマンデル=フレミングは描く頻度こそAですが、論点としては落とせません。

Sの6枚は毎朝、順番を変えて3枚ずつ描くので2日で一巡します。Aの5枚は週3回。Bの1枚は直前2週間だけ。12枚全部を毎日描く必要はありません。回転数を稼ぐために、その日に描く3枚をトランプのように引いて選ぶ方式にします。順番を固定すると、前の図を思い出す手がかりで描けてしまい、単独で再現する力がつきません。

「体で覚える」の中身:1日15分の白紙復元法

抽象的な精神論にしないために、手順を固定します。タイマーを15分にセットして、次の順で進めてください。

  1. 0〜1分:無地のA4を3等分に折り、枠を3つ作る(グラフ3枚分)
  2. 1〜3分:テキストを閉じたまま、1枚30秒で3枚描く。軸のラベルを先に書くのがコツ
  3. 3〜6分:テキストを開いて赤ペンで自己採点。間違えたのは「曲線の形」か「軸」か「シフトの向き」かを1語で書き込む
  4. 6〜12分:そのグラフが使われている過去問を3問解く(問題集の該当ページ)
  5. 12〜15分間違えた1枚だけをもう一度描く。描けたら終了

この15分を週5日×12週続けると合計約15時間です。学習時間表のフェーズ③がこれにあたります。私の実感では、経済学の得点のかなりの部分がこの15時間で作られます。逆に、この時間を確保できないなら経済学は50点台で妥協して、財務・会計に時間を移したほうが総合点は上がります。

描き順を固定すると再現率が上がる

グラフが描けないのは、たいてい「どこから描き始めるか」が決まっていないからです。次の順に固定してください。

  1. 軸を2本引き、先に軸のラベルを書く。ここを飛ばすと、IS-LMの縦軸を国民所得にしてしまう事故が起きます
  2. 交点を先に打つ。均衡点の位置を紙の中央付近に決めてから曲線を通します
  3. 曲線を2本入れる。傾きの向きだけ合っていれば、フリーハンドの歪みは気にしない
  4. シフト後の曲線を点線で入れ、矢印を書く。「何が起きたら、どちらに、どれだけ動くか」を矢印に語らせる
  5. 変化した面積や区間に斜線を引く。余剰分析はここが答えそのものになります

採点のときは、正解の図と見比べて「合っている/違う」で終わらせないでください。違った理由を「軸」「形」「向き」の3語のどれかに分類して余白に書く。この分類を2週間続けると、自分がどこで転ぶかが1語で見えるようになります。軸を間違える人はずっと軸を間違え、向きを間違える人はずっと向きを間違えます。

もう一つ実務的なコツ。本番の問題用紙の余白に、必ず自分でグラフを描き直してください。問題に印刷されたグラフをそのまま眺めて考えると、選択肢の巧妙な言い換えに引っかかります。自分の手で描いた図と照合する——この一手間が数問分の差になります。

計算問題は5パターンだけ。電卓なしで解ける形に落とす

1次試験に電卓は持ち込めません。つまり、出題される計算は必ず暗算か手計算で終わる数字に作られています。ここを知っていると「割り切れない=どこかで計算を間違えた」というチェックが効きます。

パターン 覚える式 出題頻度 練習量
需要の価格弾力性 (数量の変化率)÷(価格の変化率)の絶対値 10問
利潤最大化の生産量 MR=MC を解く(1次式の連立) 10問
GDPの計算 三面等価、名目÷デフレーター×100 8問
乗数の計算 1÷(1−限界消費性向)、租税乗数との差 中〜高 8問
IS-LM均衡国民所得 2本の1次式を連立して解く 6問

この5パターンで合計42問1日20分×10日で1周し、それを3周して約10時間です。学習時間表のフェーズ⑤がこれにあたります。これ以上の計算練習は不要です。ラグランジュ未定乗数法や偏微分を使う解法を紹介する動画がありますが、診断士1次でその手順を要求する出題は見かけません。数式に強い人ほど深入りしがちなので注意してください。

弾力性の表記が煩雑になるのを避けるため、本番では「量の変化率が上、価格の変化率が下」と口の中で唱えてから式を書く癖をつけます。上下を逆にする取り違えは、この論点で起きやすい失点です。

3周の中身も分けます。1周目は解法を見ながら手順をなぞる、2周目は自力で解いて時間を測る、3周目は間違えた問題だけ。3周目は10問前後しか残らないはずで、そこが本番で落とす候補です。

優先度を下げてよい論点:ここは切ってよい

25問中10問は落としてよい科目です。最初から手を出さないと決めておけば、本番でその問題に時間を吸われません。優先度を下げてよい論点を挙げます。

優先度を下げてよい論点 理由 本番での対応
ゲーム理論の応用(混合戦略・繰り返しゲーム) 出ても少数問。習得コストが重い ナッシュ均衡の定義だけ覚えて即マーク
成長理論の数式展開(ソロー・モデルの定常状態導出) 数式が重く出題は散発 「資本蓄積が止まる点」の言葉だけ
消費関数論争の細部(ライフサイクル仮説の式) 言葉の識別で足りる 提唱者と主張を1行で対応づけ
経済学説史・学派の系譜 範囲が広く際限がない ケインズと古典派の対立軸のみ
国際金融の高度論点(購買力平価の応用計算) 頻度が低い 定義だけ押さえる
寡占の各種モデル(クールノー、シュタッケルベルク) 計算が複雑 屈折需要曲線の形だけ覚える

逆に捨ててはいけないのは、余剰分析・IS-LM・AD-AS・比較優位・費用曲線・独占の6論点です。この6つは形を変えて毎年顔を出します。優先度を下げる判断は「難しいから」ではなく「頻度が低いから」で決める——この基準を間違えると、余剰分析を捨てて学説史を覚えるという最悪の配分になります。

捨てると決めた論点は、テキストのページに「×」と書き込んでおいてください。書き込みがないと、直前期に不安になって手を出します。直前期の1時間を、切ると決めた論点に使うのが最も損です。

経済政策・時事のパートは直前2週間で足りる

科目名の後半「経済政策」は、日本経済の統計や政策の動向を問う形で出ます。GDP成長率の推移、物価、雇用、金融政策の枠組みなど。この数問のために年間を通じて新聞を読む必要はありません

対策は試験2週間前に10時間。使う素材は、直近1年の主要指標の方向(上がったか下がったか)と、政府・日銀の政策名です。数値そのものを暗記するより、「増えた/減った」の向きと転換点を押さえるほうが当たります。ここで満点を狙わないこと。1問取れれば十分という位置づけです。

この10時間の使い道はこう分けます。前半5時間で主要指標の方向を一覧にして表にまとめ、後半5時間はその表を音読するだけ。統計の原典を読みに行かないでください。読み始めると10時間では終わりません。

教材:テキスト1冊+問題集1冊+過去問10年で足りる

私が3年目の1次で使った経済学の教材は、TACスピードテキスト、TACスピード問題集、直前期の総ざらいに一発合格まとめシートの3点です。これに過去問を足せば足ります。

教材 役割 使い方 所要
TACスピードテキスト 経済学・経済政策 インプットの軸 1周目は理解度6割で通す。図はすべて模写 30時間
TACスピード問題集 論点別のドリル テキストの章を読んだ当日に該当章を解く 20時間
過去問(直近10年) 合否を決める本体 2周。1周目は論点別、2周目は年度通し60分 30時間
一発合格まとめシート 直前の総ざらい 試験前日にグラフ部分だけ見る 3時間
無料の解説動画・まとめサイト つまずいた論点の解きほぐし IS-LMとAD-ASでつまずいた日だけ視聴 5時間
TBC速修テキストなど他社テキスト TACが合わない場合の代替 併用はしない。どちらか1冊

所要時間は学習時間表の①〜⑥と重なります。合計を単純に足し上げないでください。

過去問は市販の年度別・論点別の問題集でも、公表されている本試験問題でもかまいません。重要なのは冊子の選び方ではなく2周する時間を確保できるかです。1周目で論点別に潰し、2周目は年度単位で60分計って解く。この2周目をやらないまま本番に行くと、時間配分が作れません。

テキストを2冊買うのは失敗パターンです。経済学は説明の流儀が著者によって異なり、2冊並行すると用語のズレで混乱します。1冊を決めたら最後までその1冊。過去問の年数の考え方は過去問は何年分やるかにまとめています。

無料の解説動画やまとめサイトは、つまずいた論点をピンポイントで見るときだけ使ってください。順番に視聴し始めると、テキストを読むより時間がかかります。IS-LMやAD-ASのように「文章では入らないが動画だと入る」論点に限定するのが費用対効果の高い使い方です。

本番60分の解き方:3周して埋める

60分で25問前後。頭から順に解くと、途中の重い計算問題で時間を溶かして後半の易しい問題を落とします。次の3周方式に固定してください。

時間 対象 1問あたり
1周目 12分 知識・語句問題(約8問) 1問90秒。迷ったら飛ばして番号に印
2周目 25分 グラフ問題(約10問) 1問2分30秒。必ず余白に自分で描く
3周目 18分 計算問題(約7問) 1問2分30秒。割り切れなければ一度離れる
予備 5分 飛ばした問題とマーク確認

12分+25分+18分+5分=60分、8問+10問+7問=25問で計算しています。

設問数は年度によって変わります。25問でない年に備えて、配分は時間ではなく比率で覚えてください。運用ルールにするとこうなります。

設問数 1問あたりの平均 グラフ問題に振る目安 予備
22問 約2分30秒 約27分 5分
25問 約2分24秒 約25分 5分
28問 約2分8秒 約22分 5分

いずれの場合も計算は同じです。予備の5分を先に取り置き、残り55分を設問数で割る。そのうえで、グラフ問題には平均の1.1倍、知識問題は平均の0.6倍を目安にする。開始直後に問題数を数え、この割り算を余白に書いてから解き始めてください。

そして最重要のルール。1問に4分以上かけない。経済学は難問も易問も同じ配点です。当日の全体の立ち回りは1次試験当日の注意点にまとめました。

やりがちな失敗5つ

  • 失敗1:テキストを3周読んで演習に入らない。経済学は読んで理解した気になりやすい科目です。1周目が終わったら必ず問題を解く
  • 失敗2:マクロから始める。ニュースで馴染みがあるぶん入りやすく見えますが、限界概念を通っていないとIS-LMが丸暗記になります。
  • 失敗3:グラフを「見て理解」で済ませる。見て分かることと描けることは別です。描けないグラフは本番でも描けません
  • 失敗4:数学が得意な人が深追いする。微分や最適化の一般論に踏み込んでも、この試験で問われる範囲は増えません。診断士の経済学は数学の試験ではありません
  • 失敗5:苦手意識から120時間を超えて投入する。経済学は2次に出ない科目です。150時間かけて70点を取るより、120時間で62点を取り、残り30時間を企業経営理論や財務・会計へ回すほうが合計点は伸びやすくなります。

失敗5について補足します。経済学に時間を吸われる人は、たいてい真面目です。分からない箇所を放置できず、テキストに戻り、動画を見て、また戻る。この科目は「分からないまま先に進む」耐性が試されます。1周目で分からなかった論点の半分は、過去問を解いているうちに勝手に分かります。残りの半分は、優先度を下げてよい論点であることが多い。止まらないことが最大の対策です。

私の3年目:模試64点でも1次は通った

冒頭に書いたとおり、3年目の1次模試は経済学64点、7科目合計487点でした。決して得意ではありません。それでも1次は2回受験して2回とも合格しています。経済学は「得意にする科目」ではなく「足を引っ張らせない科目」という位置づけで扱った結果です。

やったことは単純です。優先度Sのグラフを毎朝3枚描く。計算5パターンを3周する。優先度を下げると決めた論点は、問題を読んだ時点で長考せず次に進む。60分の中で「考えれば解けるかもしれない問題」に粘らない——この判断だけで、後半の取れる問題を落とさずに済みます。

そして浮いた時間を2次に回しました。私の2次は3回受けてようやく244点で合格しています。1年目213点、2年目226点。2年目は40点未満が1つもなく(58/55/44/69)、それでも226点で不合格でした。足切りを避けるだけでは足りず、60点超の事例を作らないと240点には届かない。この構造を早く知っていれば、1年目からの配分は違ったはずです。1次の経済学に150時間かける余裕があるなら、その30時間は2次に前倒ししてください

学習全体の設計は勉強法まとめ、独学で進める場合は独学ガイドを参照してください。通信・通学の選択で迷う場合は講座比較にまとめています。

明日からやること(チェックリスト)

  1. A4無地のコピー用紙を50枚、机の右に置く
  2. 優先度Sの6枚(需要供給と余剰/無差別曲線/費用曲線/完全競争/独占/IS-LM)をテキストから抜き出し、付箋を貼る
  3. 明朝、テキストを見ながら6枚を模写する(所要15分)
  4. 翌日から毎朝15分の白紙復元を開始。3枚ずつローテーションで2日一巡
  5. 週末に過去問を年度単位で1回分、60分計って解く。開始前に「予備5分を引いて設問数で割る」計算を余白に書く
  6. 優先度を下げる6論点をテキストにマーカーで「×」と書き込む

この6つを12週続ければ、経済学は60点台に届きます。やることは12枚のグラフと5つの計算パターン、それだけです。残った時間は財務・会計と2次に回してください。

関連記事: 中小企業診断士の試験科目一覧勉強時間の相場は本当に1,000時間か財務・会計の勉強法過去問は何年分やるべきかTACスピードテキストのレビュー事例IV対策

出典: 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士第1次試験」実施案内および試験統計資料。令和8年度からの2次口述試験の廃止および受験手数料の改定は、日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」(https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html)による。1次模試の得点および2次試験の得点開示は運営者本人の受験実績。