結論:2次試験で落ちる人は「知識不足型」と「設問解釈型」に分かれる
中小企業診断士の2次試験で落ちる人には共通点があります。ただし共通点は1つではなく、知識と処理量が足りずに落ちる「知識不足型」と、知識はあるのに設問の要求とずれた答案を書いて落ちる「設問解釈型」の2つに分かれます。この2つは処方箋が正反対で、型を取り違えると1年まるごと無駄になります。
私は2次筆記を3回受けて2回落ちています。1年目が213点、2年目が226点。総点では13点差ですが、崩れた場所はまったくの別物でした。1年目は事例IVで36点という足切り、2年目は事例IIIの44点です。前者は計算処理力の不足、後者は40点未満ではないのに合格点に届かなかったケースでした。同じ「あと一歩で落ちた人」でも、翌年にやるべきことは真逆だったということです。
この記事では、私の得点開示3年分を分解して、自分がどちらの型かを30分で判定する方法と、型別の手順を書きます。あわせて、模試でA判定を取った年に226点で落ちたという事実、そして足切りを1つも作らなかった年に不合格だったという事実も扱います。「意識する」で終わる話は書きません。
私の得点開示3年分:213点と226点で崩れた場所は違う

出典: 運営者提供(氏名・受験番号等はマスキング済み)
まず実データを出します。以下はすべて得点開示で確認した数字で、推定や記憶による補正は一切含みません。2次試験は事例I〜IVの4事例、各80分・各100点満点の合計400点。合格基準は総点240点以上、かつ1事例も40点未満がないことです。この2条件を頭に置いて表を見てください。
| 受験年 | 総点 | 事例I | 事例II | 事例III | 事例IV | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 213点 | 48 | 61 | 68 | 36 | 不合格 |
| 2年目 | 226点 | 58 | 55 | 44 | 69 | 不合格 |
| 3年目 | 244点 | 66 | 51 | 68 | 59 | 合格 |
見るべきは総点ではなく崩れた事例の位置です。1年目は事例I〜IIIで177点を取りながら事例IVの36点で沈み、2年目は事例IVを69点まで戻したのに事例IIIが44点まで落ちました。穴が移動しただけで2年連続の不合格です。総点が213点から226点へ13点伸びたことに、ほとんど意味はありませんでした。
もう1つ、内訳を年ごとに追うと分かることがあります。4事例のうち、3年間きれいに右肩上がりだったのは事例Iだけ(48→58→66)です。事例IIは61→55→51と下がり続け、事例IIIは68→44→68と往復し、事例IVは36→69→59と乱高下しました。4事例すべてを毎年積み上げて合格した、という筋書きではありません。
1年目213点・事例IVの36点は知識不足型の典型
1年目は独学にスタディングを併用して1次を通した年です。事例IVの36点は40点未満なので、他の3事例の合計にかかわらずその時点で不合格が確定します。原因が明快なぶん、対処も明快でした。処理できる論点を増やす以外に道はありません。
知識不足型の見分け方はシンプルです。答案が最後まで埋まらない、計算の途中で詰まって戻れない、解説を読むと「知らなかった」と分かる。この3つが揃っていたら知識不足型です。ここで答案の書き方や与件文の読み方を研究しても点は動きにくいと考えています。順番が違うからです。
2年目226点は「足切りゼロなのに不合格」だった
ここがこの記事で最も伝えたい事実です。2年目の内訳は58/55/44/69。40点未満は1つもありません。それでも総点226点で、240点に14点届かず不合格でした。
「足切りさえ作らなければ受かる」は成り立ちません。40点未満を作らないことは合格の必要条件であって、十分条件ではないからです。総点240点は別途クリアしなければならず、私の2年目はここで落ちています。足切り回避だけを目標に置くと、この226点の位置で止まります。
2年目はTAC名古屋に通学し、1年間まるごと2次に専念しました。事例IVは36点から69点へ改善しています。ところが1年目に68点だった事例IIIが44点まで落ちました。2次に専念して1年勉強した人間の生産管理の知識が、1年で24点分も減るとは考えにくい。とすると、知識量以外の要因、たとえば設問の要求の取り違えや時間配分の崩れを疑うのが自然です。
ただし、2次試験は模範解答も配点も公表されません。返ってくるのは事例ごとの得点だけで、どの設問で何点落としたかは分かりません。ですから私も「事例IIIが44点だった理由」を確定させることはできませんでした。ここは断定を避けます。言えるのは、44点という結果と、その年に自分が何をしていたかだけです。
設問解釈型の怖さもここにあります。手応えがある、時間内に書き切れる、字数も埋まる。それでも点が来ない。試験直後の自己評価では気づけません。だから型判定は、感触ではなく後述の手順で機械的に行う必要があります。
事例IIは3年連続で下がり続けた
もう1つ、あまり書かれない事実を出します。私の事例IIは61→55→51と3年連続で下がっています。合格した年でさえ51点です。最後まで伸ばせないまま終わった事例が1つある状態で合格しています。全事例を伸ばして合格したわけではありません。ではどう成立したのかは、記事の後半でもう一度扱います。
模試でA判定でも落ちる:順位を正確に書きます
2年目、私は2つの2次模試を受けています。成績はどちらもA判定でしたが、母集団内の位置はかなり違いました。ここをまとめて「上位◯%」と丸めると話が変わってしまうので、個別に書きます。
| 模試 | 判定 | 順位 | 母集団内の位置 |
|---|---|---|---|
| 2次実力チェック模試 | A判定 | 161位/1,043人 | 上位約15% |
| 2次公開模試 | A判定 | 52位/1,708人 | 上位約3% |
| 同じ年の本試験 | — | — | 226点で不合格 |
実力チェック模試が上位約15%、公開模試が上位約3%。同じ年、同じ人間の答案でも、模試が違えば位置は5倍近くぶれます。そして直近の模試で上位約3%だったその年の本試験が226点で不合格でした。模試の判定は、合格の証明にはなりませんでした。
理由の1つは、模試と本試験で採点の性質が違うことにあります。模試には作成者が用意した解答例と採点基準があり、答案はその基準に沿って加点されます。一方、本試験の模範解答も配点も公表されません。基準に寄せる技術が上手い人ほど模試では上位に来ますが、本試験では基準が見えないため、設問の要求からずれた瞬間に丸ごと外します。
| 項目 | 模試 | 本試験 | 受験生への影響 |
|---|---|---|---|
| 解答例 | 返却される | 公表されない | ずれに気づけない |
| 配点・採点基準 | 設問別に示される | 非公表 | 再現性が読めない |
| 順位・判定 | 相対評価で出る | 絶対基準(240点/40点未満なし) | A判定でも足切りで落ちる |
| 受験者層 | 直前期に模試を受ける層 | 2次受験資格のある人全員 | 母集団が違う |
| フィードバック | 設問別の得点が返る | 事例別の得点のみ | 設問単位の分析は模試でしかできない |
だから模試の使い方を変えるべきです。判定と順位は見なくて構いません。見るべきはどの設問で、何点を、なぜ落としたかの3点だけです。返却答案から設問ごとの得点を書き出し、失点を「知らなかった」「読み違えた」「時間切れ」の3つに仕分けます。この仕分けがそのまま型判定になります。詳しくは2次模試の使い方にまとめています。
30分でできる型判定:時間無制限で解き直す
自分がどちらの型かを判定する最短の方法は時間無制限リテストです。模試の返却を待つ必要はありません。過去問1事例と、80分+30分の時間があれば今週末にできます。予備校の添削も不要です。手順は次の4つだけです。
- 過去問を1事例、80分厳守で解いて答案を確定させ、コピーを取る。
- そのまま時間無制限で同じ事例をもう一度書き直す。参考書は開かない。
- 両方をふぞろいな合格答案のキーワード採点で採点する。
- 2つの点差と、答案の方向性が変わったかどうかを見る。
私が使っている判定の目安はこうです。時間無制限にしても点が伸びない(+5点未満)なら知識不足型。大きく伸びる(+15点以上)なら時間配分か設問解釈のどちらか。後者のうち、書き直した答案の方向性が最初と変わったなら設問解釈型、方向性は同じで分量だけ増えたなら時間配分型です。時間配分型は設問解釈型の軽症版だと考えてください。ふぞろいの採点は目安であって本試験の配点ではないので、点差の絶対値ではなく伸びたか伸びなかったかの方向で読んでください。
| 演習中に起きること | あてはまる型 | 明日やること |
|---|---|---|
| 最後の設問が白紙で終わる | 知識不足型/時間配分型 | 設問ごとの持ち時間を先に決める |
| 字数は埋まるのに点が来ない | 設問解釈型 | 設問解釈ドリルを1日10分 |
| 解説を読むと「初見の論点」が多い | 知識不足型 | 論点別の正答率表を作る |
| 事例IVだけ点が安定しない | 知識不足型 | 計算問題集を毎日30分 |
| 模試は良いのに過去問だと崩れる | 設問解釈型 | ずれの4類型を記録する |
| 解答の書き出しに5分以上迷う | 設問解釈型 | 文末の型を先に決める |
| 同じ根拠を複数の設問に使っている | 設問解釈型 | 与件の余白に設問番号を振る |
| 事例I〜IIIが50点台で横並び | 設問解釈型 | レイヤー判定を毎回書く |
両方に心当たりがあって迷う場合は、知識不足型として扱ってください。知識は積めば点に変わりやすい一方、設問解釈の訓練は土台の知識がない状態でやると空回りします。知識不足型の対策は設問解釈型にも効きますが、逆は効きにくい。順番を間違えないことが、この記事で最も実務的な部分です。
知識不足型の処方箋:事例IVを最優先で潰す
知識不足型が最初に手をつけるべきは事例IVだと考えています。理由は2つ。努力量が点に反映されやすい事例だから、そして40点未満が起きやすい事例だからです。私自身、1年目の事例IVは36点、翌年は69点でした。1年で大きく動かせる余地はあります。
ただし、ここは正直に書きます。その69点を取った年は不合格で、合格した3年目の事例IVは59点まで下がっています。36→69→59。事例IVは伸ばしやすい一方で、一度上げた点が翌年そのまま残るとは限らない事例でもあります。「事例IVを完成させて合格した」という物語は、少なくとも私の得点開示には存在しません。事例IVの強化は40点未満を消すための投資であって、そこで稼いで逃げ切る設計ではない、というのが3年分を並べた結論です。
私が使った教材は30日完成 事例IV計算問題集、TAC事例IVの解き方、事例IVの全知識&全ノウハウの3冊です。増やす必要はありません。3冊を4周する方が、10冊を1周するより点になりやすいと考えています。教材を買い足したくなったら、それは弱点論点が特定できていないサインです。次の6手順で回します。
- 1周目は答えを見ながら解く。考える時間を作らない。1問5分で切る。
- 2周目からは1日30分、2〜3問。同じ問題集を合計4周する。
- 論点別の正答率表を作る。経営分析/CVP/NPV/キャッシュフロー/原価計算などの区分で、周回ごとに正誤を記録する。
- 3周目でも間違える論点だけを全知識で理論から埋める。全論点を読み直さない。
- 経営分析は毎日1問。収益性・効率性・安全性から1つずつ選ぶ形に固定し、迷う時間をゼロにする。
- 直前2か月は80分通しを週1回入れ、部分点の取り方を確認する。
| 曜日 | 内容 | 時間 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 月・水・金 | 計算問題集(弱点論点) | 30分 | 処理速度を上げる |
| 火・木 | 経営分析+記述1問 | 20分 | 第1問を固定作業にする |
| 土 | 事例IVを80分通しで1本 | 80分+復習40分 | 時間切れの発生位置を特定 |
| 日 | 正答率表の更新と論点補充 | 40分 | 翌週の弱点を確定させる |
なお、電卓を使えるのは2次の事例IVだけです。1次試験には電卓を持ち込めません。1次から受け直す年は、財務・会計を手計算で処理する練習と、事例IVの電卓前提の練習を分けて設計しておく必要があります。
知識不足型が最もやりがちな失敗は、先にふぞろいで答案の書き方を研究し始めることです。書き方を磨いても、処理できない計算問題は解けません。ふぞろいの使い方で書いた通り、ふぞろいは書けるのに点が来ない人の道具です。全体像は事例IV対策の全体像にまとめています。
設問解釈型の処方箋:80分の先頭10分を作り替える
設問解釈型は演習量を増やしても直りにくいと考えています。同じずれ方を100事例繰り返すだけになりかねないからです。私は2年目に2次だけに1年を使いましたが、事例IIIは44点でした。演習量そのものが答えではなかった、ということです。直すべきは80分の最初の10分の使い方と、自分のずれの型を自覚することの2点で、それ以外はほぼ触らなくて構いません。
私が自分の答案を分類していた「ずれ」の4類型
以下は私が自分の答案を見直すときに使っていた分類で、全受験生の失点構造を説明するものではありません。本試験の採点基準は公表されないので、どれが何点分の失点だったかは誰にも分かりません。あくまで、自分の答案を仕分けるためのチェック軸として使ってください。
| ずれの種類 | 起きること | 答案に出る症状 | 明日からの対処 |
|---|---|---|---|
| レイヤーずれ | 現場改善を聞かれて経営戦略を書く | 内容は正しいが要求とずれる | 設問横に「全社/事業/機能」を明記 |
| 時制ずれ | 過去の経緯を聞かれて今後の施策を書く | 助言ばかりになる | 設問の動詞と時制に丸をつける |
| 主語ずれ | 誰が実行するかが入れ替わる | 主語のない文になる | 文頭に主語を必ず書く |
| 範囲ずれ | 「〜以外」「〜を除き」といった制約を落とす | 制約違反の解答になる | 制約語に印をつけてから読む |
この4つのうち、私の再現答案で最も多かったのはレイヤーずれでした。現場のオペレーションを問われている設問に、事業戦略のレベルで答えてしまうパターンです。聞かれている層と違う層のことを書けば、内容が一般論として正しくても要求には答えていません。正しいことを書くのと、聞かれたことに答えるのは別で、ここが設問解釈型のつまずきどころです。
80分の配分を数字で固定する
まず全体の枠を固定します。合計が80分ぴったりになるよう区切ります。
| 時間帯 | 長さ | やること | この時間帯の禁止事項 |
|---|---|---|---|
| 0〜10分 | 10分 | 設問文だけを読み、要求・制約・文末の型・レイヤーを書き出す | 与件文を読まない |
| 10〜25分 | 15分 | 与件文を読み、段落ごとに設問番号を余白へ振る | 解答を書き始めない |
| 25〜35分 | 10分 | 設問ごとに使う根拠を確定し、重複を外す | 同じ根拠を2設問に使わない |
| 35〜72分 | 37分 | 解答を書く(配分は下表) | 1設問に居座らない |
| 72〜80分 | 8分 | 空欄の穴埋めと誤字修正 | 書き直しを始めない |
10+15+10+37+8=80分。
問題は記述の37分をどう割るかです。設問数は事例と年度で変わるので、1問◯分と固定してはいけません。運用ルールは「記述に使える37分 ÷ その事例の設問数」で1問あたりを決め、端数は最後の見直しに足す。当日、設問文を読んだ直後に計算して問題用紙の端に書きます。目安は次のとおりです。
| 設問数 | 1問あたり | 記述に使う合計 | 余りの扱い |
|---|---|---|---|
| 4問 | 9分 | 9×4=36分 | 余り1分を見直しへ |
| 5問 | 7分 | 7×5=35分 | 余り2分を見直しへ |
| 6問 | 6分 | 6×6=36分 | 余り1分を見直しへ |
要点は与件文より先に設問文を読むこと、そして解答の文末を設問解釈の段階で決めてしまうことです。「要因は〜である。」「〜することで〜を図る。」のように文末を先に固定すると、聞かれていることから外れにくくなります。書き出しで迷う時間も消えます。
設問解釈ドリル:1日10分、過去問を消費しない
- 過去問1事例分の設問文だけを印刷する。与件文は読まない。
- 10分で、設問ごとに①何を聞かれているか ②制約条件 ③解答の文末 ④レイヤーの4つを紙に書く。
- ふぞろいの合格答案を見て、①〜④が合っているかだけを確認する。内容の一致は見ない。
- ずれた設問を4類型のどれかに分類してノートに記録する。
この訓練の利点は、80分を使わないので過去問の在庫が減らないことです。過去問は何年分やるべきかで書いた通り、過去問は有限の資源です。設問解釈ドリルなら同じ事例を3回使っても効果が落ちません。2週間続けて記録が特定の1類型に偏っていたら、それがあなたの癖です。癖が特定できれば、本試験ではその1点だけを確認すればよくなります。
両方の型に共通する、落ちる人の5つの行動
ここまでは型別の話でしたが、型に関係なく落ちる人が共通してやっている行動が5つあります。いずれも心構えではなく行動なので、判定も対処も今日中にできます。当てはまるものがあれば、新しい教材を買う前に、今週の学習計画からその行動を外してください。やることを足すより、外す方が先です。
- 過去問を「解く」ばかりで「採点」していない。解いた事例のうち、キーワード採点まで済んでいるものが半分未満なら危険です。解いた数ではなく採点した数を記録してください。
- 80分を守っていない。90分かけて書いた答案の出来には意味がありません。タイマーを80分で切り、未完のまま採点するのが正しい運用です。
- 事例IVを後回しにしている。事例I〜IIIの方が勉強した気分になるからです。事例IVは毎日、事例I〜IIIは週2〜3事例の比率を勧めます。
- 模試の判定を実力の証明に使っている。私は公開模試で52位/1,708人(上位約3%)のA判定でしたが、その年の本試験は226点で不合格でした。判定ではなく設問別の失点理由だけを見てください。
- 足切り回避だけを目標にしている。40点未満を作らないのは必要条件にすぎません。私の2年目は58/55/44/69で40点未満ゼロでも226点で不合格です。最低点と総点の両方を同時に設計してください。
合格年の244点は「足切り回避+60点超が2事例」でできている
合格した年の内訳は事例I 66点、事例II 51点、事例III 68点、事例IV 59点でした。この244点がどう作られているかを、不合格だった2年目と並べて見ます。
| 事例 | 2年目(226点・不合格) | 3年目(244点・合格) | 差 |
|---|---|---|---|
| 事例I | 58 | 66 | +8 |
| 事例II | 55 | 51 | −4 |
| 事例III | 44 | 68 | +24 |
| 事例IV | 69 | 59 | −10 |
| 合計 | 226 | 244 | +18 |
差の中心ははっきりしています。+18点のうち、事例IIIを44点から68点へ戻した+24点が主因で、事例IVの−10点と事例IIの−4点をそこで吸収しています。1年で全事例を底上げしたのではなく、崩れていた1事例を元の水準に戻したことで240点を超えたという構造です。
そして合格年の244点は、60点を超えた事例が2つ(事例I 66点・事例III 68点)あり、それが50点台の2事例(事例II 51点・事例IV 59点)を支える形になっています。40点未満がないことは前提として、それだけでは240点に届きません。2年目がその証拠です。「穴を作らない」と「稼ぐ事例を2つ持つ」の両方が同時に必要でした。
ここから導ける設計はこうです。全事例で65点を狙うのは現実的ではありません。狙うべきは全事例50点台を確保したうえで、得意な2事例を65点前後まで持ち上げること。実際、私の合格年は51+59+66+68=244点で、この形そのものです。
| 設計の考え方 | 目標の置き方 | 優先する行動 | 危険度 |
|---|---|---|---|
| 総点狙い | 得意事例で70点以上 | 得意事例をさらに伸ばす | 高い(40点未満が1つ出れば終了) |
| 足切り回避だけ | 全事例40点超 | 苦手事例だけを底上げ | 高い(226点で止まる) |
| 最低点+2事例設計 | 全事例50点台+得意2事例で65点前後 | 崩れた事例を戻し、稼ぐ2事例を決める | 低い |
| 事例IV依存 | 事例IVで80点 | 計算だけを回す | 中(私の場合69→59と落ちた) |
この設計にすると優先順位が自動的に決まります。すでに60点台の事例を70点にする労力より、40点台に落ちた事例を60点台へ戻す労力の方が、総点への効き方が大きいからです。合格基準は総点240点以上、かつ1事例も40点未満がないこと。私の1年目の36点は、他の3事例で177点を取っていても覆せませんでした。下限を守り、そのうえで240点を作る。この順番です。
2回落ちると1次からやり直しになる
正面から書いておきます。1次合格の効力は2年間で、その間に2次を受けられるのは2回です。私は1年目と2年目に落ちたため、3年目は1次試験から受け直しました。この年は診断士ゼミナールを暗記3科目(経営情報システム・経営法務・中小企業経営政策)に絞って併用し、1次を通してから2次に戻っています。参考までに、3年目の1次模試は経済64/財務68/企業経営理論82/運営管理70/経営法務68/情報システム72/中小63の合計487点でした。
2回目を保険と考えるのは危険です。2回落ちた時点で、翌年は7科目の1次と2次を同じ年に抱えます。私の総勉強時間は約1,800時間ですが、その相当部分はこの1次の受け直しに消えました。しかも1次に時間を取られる分、2次の演習量は2年目より落ちます。それでも合格できたのは、2年目までに積んだ2次の土台が残っていたからで、設計としては1年目で仕上げる前提を置くべきです。目安は勉強時間の相場にまとめています。
令和8年度の2次筆記試験は10月25日です。令和8年度から2次口述試験は廃止され、筆記の合格がそのまま最終合格になります(出典:日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html)。同じ改正で受験手数料も改定され、1次17,200円、2次15,100円になります。日程は試験日程を参照してください。
10月25日から逆算した、型別の残り期間の使い方
| 時期 | 知識不足型 | 設問解釈型 | 共通 |
|---|---|---|---|
| 〜7月末 | 計算問題集を2周終える | 設問解釈ドリルを毎日10分 | 型判定を1回やり直す |
| 8月 | 論点別正答率表で弱点を10個以内に絞る | ずれの4類型の記録を集計し癖を1つ特定 | 週2事例を80分厳守で解く |
| 9月 | 計算問題集4周目+80分通しを週1 | 記述時間÷設問数の運用を全事例で統一 | 模試は判定を見ず失点理由だけ分析 |
| 10月前半 | 経営分析と頻出論点だけを毎日回す | 設問解釈ドリルを1日2事例へ増やす | 過去問の解き直しを本番と同じ時刻で |
| 10月20日〜 | 新しい論点に手を出さない | 4類型のチェック手順を紙1枚にまとめる | 睡眠と当日の持ち物を固定 |
この表で意図的に書いていないのは「全事例を均等に伸ばす」という項目です。私の3年分の得点開示は、1年でできるのは、崩れた事例を戻すことと、稼ぐ事例を1〜2個作ることまでだと示しています。事例IIは3年かけて下がり続けたまま終わりました。全部を直そうとしないことが、残り3か月の設計では効きます。
よくある質問
予備校に通えば設問解釈のずれは直りますか
直る保証はありません。私は2次に専念してTACに通った年に、事例IIIで44点を取っています。予備校の演習は「解く→解説を聞く→次の事例」というサイクルになりがちで、自分のずれを類型として記録する作業は誰も代わりにやってくれません。通学の価値は演習量と締切にありますが、癖の特定は自分でやる必要があります。2次は独学で受かるかも参考にしてください。
知識不足型はどの教材から始めればいいですか
事例IVは計算問題集から、事例I〜IIIは全知識・全ノウハウから始めてください。ふぞろいは3番目です。知識が入る前にふぞろいを読むと、キーワードだけを覚えて設問と結びつかない状態になりやすいと感じました。教材の選び方はふぞろいの選び方にまとめています。
模試でA判定なら安心していいですか
いいえ。52位/1,708人(上位約3%)のA判定を取った年に、本試験は226点で不合格でした。同じ年に受けたもう1つの模試は161位/1,043人で上位約15%です。模試ごとに位置がぶれる時点で、判定は実力の証明になりません。A判定が出たら、判定ではなく最も点の低かった事例を見てください。そこが本試験で40点台になる候補です。
事例IVを鍛えれば合格できますか
事例IVだけでは足りません。私の事例IVは36→69→59です。69点を取った年は不合格で、合格した年は59点でした。事例IVは40点未満を消すために優先度が高い事例ですが、そこで稼いで逃げ切る設計は、少なくとも私の得点開示では成立していません。合格年に240点を超えさせたのは、事例IIIを68点に戻したことでした。
2回目の受験で総点が上がったのに落ちました。伸びていますか
総点の伸びだけでは判断できません。私は213点から226点へ13点伸びましたが、中身は事例IVが+33点、事例Iが+10点、事例IIが−6点、事例IIIが−24点という入れ替わりの結果です。見るべきは総点ではなく、最も低い事例の点と、その事例が去年と同じかどうかです。毎年違う事例が崩れているなら、原因は知識よりも80分の運用側にある可能性が高くなります。
関連記事: 2次試験対策の全体像/事例IV対策の全体像/ふぞろいの使い方/診断士講座の比較
出典: 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会が公表する試験案内・実施要領、および日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」(https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html)。本文中の得点はすべて筆者の2次試験得点開示(3年分)、模試の順位・判定は筆者が受験した2次模試の成績表に基づく実データ。