結論:令和8年度から口述試験は廃止。筆記合格がそのまま最終合格です
中小企業診断士2次試験の口述試験が、令和8年度から廃止されました。根拠は令和7年6月25日付けで改正された「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則」で、令和8年度第1次試験案内の冒頭に明記されています。
あわせて受験手数料も改定されました。改正の内容は次のとおりです。
| 項目 | 令和7年度まで | 令和8年度から |
|---|---|---|
| 第2次試験 口述試験 | あり(筆記合格者が受験) | 廃止 |
| 第1次試験 受験手数料 | 14,500円 | 17,200円 |
| 第2次試験 受験手数料 | 17,800円 | 15,100円 |
| 受験手数料 合計 | 32,300円 | 32,300円(同額) |
手数料の総額は32,300円で変わりません。1次が2,700円上がり、2次が2,700円下がった形です。ただし1次の申込には別途、決済手数料590円がかかります。
協会連合会は改正の理由を「試験を安定的に実施するため、また、受験者の試験への負担軽減、当連合会における経費削減及び試験プロセスの効率化等の観点から行われます」と説明しています。
私は令和6年度に2次を受験し、口述試験を経て令和7年4月に登録しました。口述試験がまだ存在した最後の世代にあたります。この記事では、公式資料と自分の受験経験の両方から、この廃止が受験生にとって何を意味するのかを整理します。
そもそも口述試験とは何だったのか
口述試験は、筆記試験の合格者だけが受ける面接形式の試験でした。試験官2名に対して受験者1名、10分程度で、その年の筆記試験で出題された事例企業について口頭で問われる形式です。
受験者にとっての実質的な位置づけは、「筆記に受かったことを確認するための最終手続き」に近いものでした。その根拠が公表統計にあります。
データ:口述で落ちる人は、ほぼいませんでした

出典: 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移」
協会連合会が公表する推移表には、「口述試験を受験する資格を得た者」(=筆記合格者)と「試験合格者数」(=口述を経た最終合格者)が別々の列で載っています。この2つの差が、口述試験で不合格になった人数にあたります。
| 年度 | 筆記合格者 | 最終合格者 | 差 |
|---|---|---|---|
| 平成30年度 | 906人 | 905人 | 1人 |
| 令和元年度 | 1,091人 | 1,088人 | 3人 |
| 令和2年度 | 1,175人 | 1,174人 | 1人 |
| 令和3年度 | 1,605人 | 1,600人 | 5人 |
| 令和4年度 | 1,632人 | 1,625人 | 7人 |
| 令和5年度 | 1,557人 | 1,555人 | 2人 |
| 令和6年度 | 1,517人 | 1,516人 | 1人 |
| 令和7年度 | 1,241人 | 1,240人 | 1人 |
差は毎年0〜7人です。平成24年度・平成27年度・平成28年度に至っては差がゼロ、つまり筆記合格者全員が最終合格しています。直近8年の合計でも、筆記合格10,724人に対して最終合格10,703人。差は21人、率にして0.2%です。
この差の大半は、口述試験で落とされたというより欠席・辞退と考えるのが自然です。実際、口述試験は日程が固定で、当日欠席すれば不合格になります。
つまり口述試験は、選抜としてはほとんど機能していませんでした。廃止の理由に「試験プロセスの効率化」が挙げられているのは、この実態を踏まえたものと読めます。
受験生にとって何が変わるか
| 観点 | 令和7年度まで | 令和8年度から |
|---|---|---|
| 合格の確定時期 | 筆記合格発表(1月中旬)→ 口述(1月下旬)→ 最終合格発表(2月上旬) | 筆記合格発表の時点で最終合格が確定 |
| 年末年始の過ごし方 | 筆記合格の可能性を考えて口述対策が必要 | 結果を待つだけ |
| 試験会場への移動 | 指定日に指定会場へ出向く必要あり | 不要 |
| 受験手数料 | 2次17,800円 | 2次15,100円(1次は17,200円に増額) |
| 実務補習・実務従事の準備 | 最終合格発表後に本格化 | 筆記合格発表後すぐ動ける |
実務上いちばん効くのは、合格が確定するタイミングが2〜3週間早まることです。実務補習は2月開始のコースが人気で枠が埋まりやすく、申込のスタート位置が早くなるのは実利があります。
もうひとつは地方在住者の負担軽減です。口述試験は指定された会場に出向く必要があり、1月下旬という時期を考えると前泊が必要な人もいました。10分の面接のために往復の移動と宿泊費が発生する構造がなくなります。
私が受けた口述試験の実際
令和6年度が私の3年目で、244点で筆記に合格しました。2次試験の全体像に書いたとおり、1年目213点・2年目226点からの合格です。
口述対策としてやったのは、その年の4事例の与件文を読み直し、各事例の企業概要と課題を口頭で説明できる状態にしておくことだけでした。受験校が無料で配布する想定問答集に目を通した程度で、期間にして数日です。
当日は、事例企業についての質問に答える形式でした。正解を言い当てる試験というより、事例企業を理解しているかを確認される場という印象で、詰まっても言い直せば問題ない雰囲気でした。
正直に書くと、この10分のために年末年始を落ち着かずに過ごしたという記憶のほうが強く残っています。合格発表から口述までは2週間ほどしかなく、そこに正月が挟まります。この期間がなくなるのは、率直に言って受験生にとって良い改正だと考えています。
「口述がなくなって楽になった」と言えるか
結論から言えば、難易度そのものは変わりません。理由は単純で、口述の実質的な不合格率が0.2%だったからです。合否を決めていたのは最初から筆記だけでした。
むしろ注意すべきは逆方向の効果です。筆記合格がそのまま最終合格になるということは、筆記の1点に対する重みが名実ともに100%になるということです。
2次筆記の合格率は直近8年で17.6〜18.9%という狭いレンジに固定されています。ここを突破する以外の道はなくなりました——といっても、実質的には以前からそうだったわけですが、制度上の表現がそれに追いついた形です。
1次の手数料が上がったことをどう見るか
総額は変わらないものの、1次だけ受ける人は実質的な値上げになります。
| 受験パターン | 令和7年度まで | 令和8年度から | 差 |
|---|---|---|---|
| 1次のみ受験 | 14,500円 | 17,200円 | +2,700円 |
| 1次・2次とも受験 | 32,300円 | 32,300円 | ±0 |
| 2次のみ受験(1次免除期間中) | 17,800円 | 15,100円 | −2,700円 |
影響が大きいのは科目合格を積み上げて複数年で1次を突破する人です。科目免除で書いたとおり、令和7年度の科目合格者は13,146人と過去最多で、1次合格者の3倍を超えています。この層は毎年17,200円を払い続けることになります。
2年計画なら1次を2回受けて34,400円。従来の29,000円から5,400円の増加です。金額としては大きくありませんが、複数年前提で計画を立てるなら把握しておく数字です。
令和8年度の日程で確認しておくこと
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 4月23日〜5月27日 | 1次試験の申込受付(Web申込システムのみ) |
| 8月1日(土)・2日(日) | 1次試験(7科目) |
| 9月1日(火) | 1次試験の合格発表 |
| 9月1日〜9月18日 | 2次試験の申込受付 |
| 10月25日(日) | 2次筆記試験(事例I〜IV) |
| 翌年1月頃 | 筆記の合格発表=最終合格 |
詳しい日程は令和8年度の試験日程にまとめています。紙の試験案内は配布されず、申込はWebのみという点もあわせて確認してください。
まとめ
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 何が変わったか | 令和8年度から2次口述試験が廃止。筆記合格=最終合格 |
| 難易度への影響 | 実質なし。口述の不合格率は直近8年で0.2%だった |
| 受験生のメリット | 合格確定が2〜3週間早まる。会場移動と年末年始の口述対策が不要に |
| 手数料 | 総額32,300円は不変。1次のみ受験する人は+2,700円 |
| 注意点 | 合否は完全に筆記だけで決まる。2次筆記の17〜19%を突破する以外に道はない |
制度が変わっても、やるべきことは変わりません。10月25日の80分×4事例に、すべてが集約されたというだけです。対策の組み立ては2次試験の全体像から確認してください。
関連記事: 令和8年度の試験日程/合格率の推移/科目免除/2次試験の全体像/実務補習/登録までの流れ/中小企業診断士とは
出典:一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度中小企業診断士第1次試験案内」(重要なお知らせ/受験手数料の改定および第2次試験口述試験の廃止)、同「中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移」(筆記合格者・最終合格者の実数)。口述試験の受験経験は令和6年度受験時のものです。