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講座比較 更新日 2026.07.27 文・コンパス管理人

中小企業診断士と行政書士|保有率6.4%と独占業務の差から考える取得順

中小企業診断士と行政書士|保有率6.4%と独占業務の差から考える取得順

結論:独立して稼ぐなら行政書士が先、企業内で評価を得たいなら診断士が先

中小企業診断士と行政書士は、士業の組み合わせとしては実務接点が明確にある部類です。補助金申請、創業支援、許認可が生命線の業種の経営支援。この3つで役割分担が成立します。ただし、順番と目的を間違えると片方が完全に眠る組み合わせでもあります。

先に結論を書きます。独立して食べていくことが目的なら行政書士が先です。行政書士には独占業務があり、資格そのものが売上に直結するからです。一方、会社員として企業内で評価されたいなら診断士が先で、この場合の行政書士は登録費用25万円以上を払っても使い道がなく、宝の持ち腐れになりやすいという現実があります。

そして、他サイトがあまり書かない事実を先に一つ。中小企業診断士のうち行政書士を持っている人は6.4%しかいません(日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」令和8年5月公表、回答1,847名)。15人に1人もいないのです。「ダブルライセンスの定番」という紹介のされ方と、実態の数字はかなり離れています。

中小企業診断士が保有する他資格の割合(協会連合会アンケート調査)
診断士1,847名の保有資格(複数回答)。行政書士は6.4%で7位出典: 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」(令和8年5月)(2026年7月26日取得)

診断士のうち行政書士保有は6.4%。定番と呼ぶには少なすぎる

協会連合会の公式アンケートで、診断士が併有している資格の内訳を見ると、順位はこうなっています。行政書士は上位ではあるものの、決して多数派ではありません

併有資格 割合(n=1,847・複数回答)
なし 23.7%
ファイナンシャルプランナー 20.5%
情報処理技術者 16.0%
宅地建物取引士 11.0%
MBA 10.3%
販売士 8.4%
ITコーディネータ 7.6%
行政書士 6.4%
社会保険労務士 6.1%
税理士 1.3%

この数字の読み方は2つあります。1つは「相性が良いと言われる割に、実際に両方取り切っている人は少ない」という素直な読み方。もう1つは、「両方持てば希少性が出る」という前向きな読み方です。回答者のうち行政書士を併有するのは6.4%にとどまります。

ただし、希少だから儲かるとは限りません。同じアンケートで診断士の58.9%が独立(プロコン経営)、37.4%が企業内診断士です。企業内で働き続ける4割弱の層にとって、行政書士は登録しなければ何の効力もない資格です。6.4%という数字の低さは、需要がないというより「使える人が限られる」ことの反映だと私は見ています。

最大の構造的な違いは「独占業務があるかないか」

この2資格を比べるとき、合格率でも勉強時間でもなく、ここが決定的です

中小企業診断士には独占業務が一切ありません。あるのは名称独占だけで、登録者だけが「中小企業診断士」と名乗れる、それだけです。経営コンサルティング自体は無資格でもできます。一方、行政書士には行政書士法第1条の2に基づく独占業務があり、第19条で無資格者が報酬を得て行うことを禁じています

比較軸 中小企業診断士 行政書士
独占業務 なし(名称独占のみ) あり(官公署提出書類・権利義務・事実証明の各書類作成)
根拠法 中小企業支援法 行政書士法(第1条の2、第1条の3、第19条)
収益の源泉 信用・ネットワーク・公的支援制度へのアクセス 法律で守られた申請代行業務
代表的な仕事 経営診断、補助金の事業計画策定、専門家派遣、研修・執筆 建設業許可、産廃・運送業許可、飲食・風営法許可、在留資格、定款作成、遺産分割協議書
案件の性質 顧問契約になりやすい(継続) 単発・スポットになりやすい
登録後の更新 5年ごとの更新要件があるとされる(詳細は公式で確認が必要) 更新試験・更新要件なし。会費のみ

行政書士が扱える許認可に関わる書類は1万種類を超えるとされます(日本行政書士会連合会)。さらに、特定行政書士法定研修を修了し考査に合格すれば、自分が作成した官公署提出書類に関する不服申立ての代理までできます

ここで誇張してはいけない点を1つ。行政書士は登記は扱えません(司法書士)、税務書類も扱えません(税理士)、社会保険・就業規則も扱えません(社労士)、訴訟も扱えません(弁護士)「行政書士+診断士で創業ワンストップ」と謳うサイトは多いですが、会社設立の登記も税務も労務も完結しません。実際には他士業との提携が前提です。

試験制度:3時間の一発勝負か、2段階の長期戦か

試験の形も、要求される能力もかなり違います。

項目 中小企業診断士 行政書士
試験構成 1次(7科目・2日間)+2次筆記 筆記のみ・1日3時間の一発試験
令和8年度の試験日 1次:8月1日・2日/2次筆記:10月25日 11月8日(日)13:00〜16:00
受験資格 なし なし(年齢・学歴・国籍を問わない)
評価方式 実質的に相対評価(2次は答案の相対順位) 絶対評価(300点中180点で合格。定員なし)
出題 1次はマークシート7科目、2次は事例4問の記述 全60問300点。法令等46題244点+基礎知識14題56点
合格基準 1次は総点60%かつ40%未満科目なし 法令等50%以上・基礎知識40%以上・全体60%以上の3要件すべて
受験手数料(令和8年度) 1次17,200円+2次15,100円=32,300円(別途、1次の決済手数料590円) 10,400円
合格の効力 1次合格は2年間有効。科目合格制あり 合格に有効期限なし

行政書士は絶対評価の一発試験です。180点取れば全員合格で、他人の出来は関係ありません。しかも合格基準の3要件は科目ごとの足切りを含むため、基礎知識科目で24点を割ると法令が満点でも落ちます。

対する診断士は1次で7科目を通し、さらに2次筆記という別種の試験を突破する必要があります。令和8年度からは口述試験が廃止され、2次筆記の合格がそのまま最終合格になりました。1月の拘束が消えたのは、他資格と並行する人にとって地味に大きい変更です。

難易度は「ほぼ同等」と言われるが、詰まる場所が違う

行政書士試験の合格率は、行政書士試験研究センターが年度別に公表しています。直近の推移は次のとおりです。

年度 受験者数 合格者数 合格率
令和7年度(2025) 50,163 7,292 14.54%
令和6年度(2024) 47,785 6,165 12.90%
令和5年度(2023) 46,991 6,571 13.98%
令和4年度(2022) 47,850 5,802 12.13%
令和3年度(2021) 47,870 5,353 11.18%
令和2年度(2020) 41,681 4,470 10.72%
令和元年度(2019) 39,821 4,571 11.48%
平成28年度(2016) 41,053 4,084 9.95%

令和元年度以降のレンジは9.95%〜15.72%、平均はおおむね12%台です。注目すべきは令和3年度以降の上昇基調で、11.18%→12.13%→13.98%→12.90%→14.54%と推移し、令和7年度の合格者7,292人は10年で最多でした。絶対評価の試験なので、合格率はその年の問題の難易でぶれます。「毎年10%固定の難関」という説明は正確ではありません。

診断士側は1次と2次を同一年に通すストレート合格率が4〜5%程度と言われていますが、これは予備校各社の集計値で、協会連合会が公表する統計ではありません。単年の合格率だけを並べて「診断士のほうが3倍難しい」と結論づけるのは乱暴です。診断士は1次に科目合格制があり、複数年で崩していくのが標準だからです。

勉強時間の目安は行政書士600〜1,000時間、診断士1,000〜1,300時間とされます。ただしこれらはすべて予備校・通信講座が公表する目安であり、公的統計ではありません。講座を売る側の数字なので低めに出るバイアスがあると割り引いて読むべきです。参考までに、私自身は1次2回・2次3回受験して、通算で約1,800時間かかりました。目安の1,000〜1,300時間で終わる人ばかりではありません。

詰まる場所は明確に違います。行政書士は行政法(配点が最大で約112点)と民法(約76点)の条文・判例の記憶精度で決まり、診断士2次は与件文から答案を組み立てる型の訓練で決まります。使う脳が違う、これが後述する「同年受験を勧めない」理由に直結します。

費用:受験料は3分の1、しかし登録費用で逆転する

ここは他サイトが軽く流しがちなポイントです。行政書士は受験は安いが、登録が高い

費目 中小企業診断士 行政書士
受験手数料 1次17,200円(+決済手数料590円)ほか2次分 10,400円
登録時の初期費用 実務補習を受ける場合は数十万円規模/実務従事のみなら大幅に圧縮可能 登録免許税30,000円+登録手数料25,000円+都道府県会の入会金
登録の要件 2次合格後3年以内に実務補習+実務従事で合計15日 試験合格後、行政書士会に登録・入会
維持コスト 更新要件があるとされる(詳細は公式で確認が必要) 年会費のみ。更新試験なし

行政書士の登録免許税30,000円と日本行政書士会連合会への登録手数料25,000円は全国一律ですが、都道府県会の入会金は単位会ごとに大きく異なります。東京や大阪では入会金だけで20万円台という情報があり、初期費用の合計は概ね25万〜31万円規模になります。金額は単位会ごとに違うため、所属予定の都道府県会の公式資料で必ず確認してください

私自身の経験で言うと、診断士の登録は実務補習を一切受けず、実務従事のみ15日で完了しました実務補習に数十万円を払うルートが唯一の道ではありません。逆に行政書士は登録しない限り独占業務を一切使えないので、費用構造としては「診断士は登録を安くできる/行政書士は登録に必ずまとまった金が要る」という非対称があります。

ただし維持は行政書士のほうが圧倒的に楽です。更新試験も研修義務も課されず、会費を払い続ければ資格は失効しません「取ったら消えない資格」を先に確保するという発想は、順序を考えるうえで一つの合理性があります。

実務接点は3つ。補助金・創業・許認可が生命線の業種

1. 補助金・助成金の申請支援

ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金などの申請支援には、事業計画の説得力様式・要件を外さない事務処理の精度の両方が要ります。前者は診断士、後者は行政書士の得意領域です。診断士は認定経営革新等支援機関の要件を満たしやすく、確認書が必要な補助金で看板が効きます

ただしここは正確に書きます。補助金申請支援そのものは行政書士の独占業務ではありません。民間コンサルも普通に参入している領域です。独占が効くのは、その事業に付随する許認可申請や官公署提出書類がある場合だけです。「行政書士だから補助金を独占できる」という説明を見たら、それは誤りです。

2. 創業・会社設立の入口

定款作成や許認可申請は行政書士の独占業務事業計画・資金計画・マーケティング戦略は診断士の領域です。相談者は「会社を作りたい」ではなく「事業を始めたい」と来ますから、経営面の設計から法的手続まで自分で受けられるのは実務上強い外注コストと引き継ぎロスが消えます。ただし前述のとおり登記と税務は別士業です。

3. 許認可が事業の生命線である業種の顧問

建設業、運送業、産廃、飲食、宿泊、介護、酒販。これらは許認可なしに事業が成立しません。経営改善を提案する前提として、許認可の維持・変更・更新の設計が必要になります。特に建設業許可は経営事項審査(経審)と結びつき、公共工事の受注可能性そのものが経営戦略になるため、接点が濃い領域です。

収益モデル上の相乗効果もあります。行政書士業務は「許可を取ったら終わり」の単発案件になりやすいのが構造的な弱点で、診断士の経営支援は継続顧問になりやすい許認可で確実に入口を取り、経営顧問で継続収益に変えるという導線が組めます。逆から見れば、経営相談で入った顧客の手続ニーズを他士業に流さず自分で処理でき、単価を積み上げられるということです。

なお、資格を2つ持てば自動的に仕事が増えるわけではありません。診断士の主戦場である公的支援業務と行政書士業務は、顧客層は重なっても営業チャネルが別物です。

どちらを先に取るか。判断軸は「開業するかどうか」だけ

難易度でも合格率でも決まりません。目的で分岐します

あなたの状況 推奨する順序 理由
独立志向/法律知識ゼロ/早く収入を立てたい 行政書士 → 診断士 独占業務で早期に収益化でき、民法・会社法が診断士の経営法務に順方向で効く
会社員のまま経営職を目指す 診断士 → 行政書士(または行政書士は取らない) 企業内診断士として社内評価・異動・資格手当に直結する
法学部出身・法務経験がある 診断士 → 行政書士 行政書士の民法・商法パートを短縮できるため、重いほうを先に片付けても不利が小さい
時間的余裕が今しかない 診断士 → 行政書士 開業後に1,000時間超の学習時間を確保するのは急速に難しくなる

行政書士を先にする最大の根拠は、知識の再利用効率です。行政書士の民法(約76点)と商法・会社法(約20点)は、診断士1次の「経営法務」に直接効きます。経営法務は診断士1次で難化しやすく足切りリスクが高い科目なので、ここを既習で迎えられる意味は大きい。逆順だと、行政書士の最大配点である行政法は診断士に一切登場しないため、ゼロからの積み上げになります。

一方で、診断士を先にすべき最大の根拠は「案件の入口を作るのは診断士側」という点です。実務では経営の相談が先にあり、その解決手段として許認可手続が出てくる上流から入れる看板を先に持つほうが価格決定権を握りやすいのは事実です。また認定支援機関、専門家派遣、よろず支援拠点など公的機関経由の仕事は、診断士の名称が実質的な参加要件として機能する場面が多く、行政書士単独では代替しにくい領域です。

そして繰り返しますが、開業しないなら行政書士は宝の持ち腐れになりやすい25万円以上の登録費用と年会費を払って独占業務を使わないなら、その資金と時間を別のことに使ったほうがいいというのが、私の率直な見方です。

同じ年に両方受けるのは勧めない。日程は衝突しないが直前期が競合する

試験 申込期間(令和8年度) 試験日
診断士 1次 4月23日〜5月27日 8月1日・2日
行政書士 インターネット申込 7月21日〜8月24日 11月8日
診断士 2次筆記 9月1日〜9月18日 10月25日(行政書士まで中2週間)

試験日そのものは衝突しません。それどころか行政書士の申込は診断士1次より前の7月21日に始まりますが、締切が8月24日と1次(8月1日・2日)の後にあるため、1次の手応えを見てから出願できます。この順番は都合が良い。

それでも同年ダブル受験を勧めない理由は3つです。第一に、診断士2次筆記(10/25)と行政書士(11/8)はわずか14日差行政書士は記述式3問と行政法の精度が合否を分けるため、直前2週間の追い込みが決定的ですが、そこが診断士2次の再現答案作成・自己採点・翌年戦略の検討期間と丸ごと重なります。第二に、答案作成の型を体に入れる訓練と、条文・判例の記憶維持は学習法が別物で、切り替えコストが高い。第三に、診断士受験年は5月から10月末までまるごと繁忙期で、行政書士に必要な600〜1,000時間を同じ期間に確保するのは専業受験生でない限り非現実的です。

唯一成立するのが「保険としての行政書士受験」です。診断士1次の不合格が9月1日に判明した場合に限り、9月から11月を丸ごと行政書士に振り向ける。これは日程上可能ですが、行政書士の申込期限8月24日は1次合格発表9月1日より前なので、出願だけ先に済ませておく必要があります10,400円の受験料は、この保険料としては安いと考えることもできます。

上記は令和8年度の日程です。診断士は概ね1次8月上旬・2次10月下旬、行政書士は11月第2日曜で固定されているため毎年ほぼ同じ構図になりますが、年度ごとの正式日程は各実施機関の公表で確認してください。

まとめ:この組み合わせは「独立する人にとってだけ」強い

中小企業診断士と行政書士は、補助金・創業・許認可という接点で確かに噛み合います行政書士の独占業務で確実に入口を取り、診断士の経営支援で顧問に転換するという導線は、単独資格より受注単価でも成約率でも有利になりやすい。

ただしそれは開業することが前提の話です。診断士の6.4%しか行政書士を持っていないという数字は、この組み合わせが誰にでも効くものではないことを示しています。企業内診断士として働くつもりなら、行政書士より情報処理技術者(16.0%)やFP(20.5%)のほうが実態としては選ばれています自分が独立するのかしないのか。決めるべきはそこだけです。

関連記事: 中小企業診断士のダブルライセンス一覧診断士として独立する診断士の副業診断士試験の難易度と合格率試験科目一覧登録の流れ勉強時間の相場講座比較

出典:日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」(令和8年5月公表・調査時点令和7年11月・回答1,847名)https://www.jf-cmca.jp/attach/enquete/kekka_r8.pdf /同「令和8年度の試験日程について」/一般財団法人行政書士試験研究センター「試験概要」https://gyosei-shiken.or.jp/doc/abstract/abstract.html および「最近10年間における行政書士試験結果の推移」https://gyosei-shiken.or.jp/pdf/trans.pdf /日本行政書士会連合会「行政書士の業務」https://www.gyosei.or.jp/info/service /東京都行政書士会「登録・入会のご案内」。勉強時間の目安、診断士のストレート合格率、行政書士の登録費用の詳細額は予備校・各団体の公表値や検索結果に基づく参考値であり、公的統計ではありません。金額と日程は各実施機関・各単位会の公式資料でご確認ください。